アマからプロまで玉石混交! 日本唯一の24時間耐久は市販車や開発車両が一堂に会すフェスティバルだ!【EDGE Motorsports】
2022/07/11
コンパクトカーからスポーツカー、メーカーの開発車両までもが鎬を削る
富士24時間は、2018年にスーパー耐久シリーズの一戦として復活した、日本で開催される唯一の24時間レースだ。今年で5回目となるスーパー耐久第2戦「NAPAC富士SUPER TEC 24時間レース」が、6月4日~5日に富士スピードウェイで開催された。
今年のレースは、最上位となるST-Xクラスをはじめ、性能別に車両を9つのクラスに分類。計56台が参加した。各チームは4~6人のドライバーを用意して交替で24時間後のゴールを目指すというわけだ。
バリエーション豊富な車が混走するのは、ドイツで開催されているニュルブルクリンク24時間レースなどのパッケージを模したもの。観客も楽しめる一方で、クラスごとに表彰台を用意するので、下位クラスのチームにもクラス優勝のチャンスがあり、モチベーション高く楽しめる。
トップクラスの「ST-X」はFIA GT3マシンによるもので、日産 GT-R、レクサス RC F、メルセデスAMG GTといったマシンが参戦。一つ下の「ST-Z」は、最近人気が高まっているFIA GT4マシンのクラスで、ポルシェ 718ケイマンやアウディ R8、トヨタ GRスープラと顔ぶれも多彩だ。
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日産 GT-R × 全国▼検索条件
トヨタ スープラ × 全国実はこのレースの注目度は昨年から一気に高まった。そのきっかけが、トヨタがカーボンニュートラルへの取り組みの一つとして、水素エンジンを搭載したカローラで参戦を開始したことにある。カーボンニュートラル実現への答えはBEV(バッテリーEV)だけではないという強い意志を表明している豊田章男社長率いるプロジェクトにより、車両開発の一環として24時間レースへの参戦を開始。昨年も無事に完走を果たしていた。
その際に、メーカーの開発車両が参戦できるST-Qクラスを新設。今年は水素エンジンを搭載したカローラに加えて、ガソリンエンジンに適合するバイオマス由来のカーボンニュートラル燃料を使用するトヨタ GR86とスバル BRZ、そしてバイオディーゼル燃料を使用するマツダ2などが参戦。さらに、今後に向けた開発テストの一環として、日産からエントリーした2台の新型Zが完走を果たすなど、日本のメーカーが積極的にこのレースを活用するようになってきた。
総合優勝はST-Xクラスの62号車、日産 GT-Rで、24時間で760ラップを走行。総走行距離は、約3468kmに及んだ。ちなみに最もエントリー台数の多い下位クラスのST-5では、トヨタ ヤリスやホンダ フィット、マツダ ロードスター、デミオといった身近な車が走っている(クラス優勝はデミオで627周を完走)。6人のドライバーでシェアをすれば、参加費用も抑えられるし、単純計算でも1人あたり4時間もの走行時間があるので練習としてもぴったりと、アマチュアドライバーにも人気のクラスとなっている。
一方で、観客にとっての24時間レースは、いわばフェスのようなものだ。欧米では24時間レースのスタートをみんなで見届けると、コースサイドに用意されたキャンピングカーやテントエリアでBBQを楽しむなどして、疲れたら眠る。ニュルブルクリンク24時間やル・マン24時間などもまさに飲めや歌えやのお祭りのように過ごす。
日本のレース観戦はというと、ルールだらけで楽しめないものが多かった。また、なぜ日本で24時間レースの開催が難しいかといえば、交通渋滞や騒音など自治体をはじめ地域住民の理解が不可欠な点がある。
さらに大変なのが、運営スタッフやコースマーシャルの確保だ。車がコース外に飛び出せば危険を知らせる旗を振り、動けなくなればレッカー移動するなど、それを24時間体制で行うのだから、大変さは想像に難くない。チームスタッフやメカニックも同様だ。レースといえばとかくドライバーが注目されがちだが、24時間レースで最も大切なのは、それを支える人たちの存在だ。
富士24時間は地元の協力のもと、サーキットのテントコーナーを拡充したり、火を使用しての調理を許可するなど、従来からの規制を大幅に緩和。それによって家族連れの顔がたくさん見られるようになった。
キャンプやアウトドアを楽しみながら、家族や仲間と思い思いのスタイルでゆったりとレースを観戦できる、欧米のようなスタイルが着実に日本にも定着しつつある。それがまたカーボンニュートラルなモビリティ社会の実現に向けた挑戦の場としても活用されていうところもなんとも今っぽくていい。
見ても参加しても楽しめる、そんな日本の新しいモータースポーツ文化として根づいていくことを期待する。