ニュル24時間▲世界最大級の草レース「ニュルブルクリンク24時間耐久レース(2022 ADAC TOTAL ENERGIES 24h NÜRBURGRING)」。今年は5月28日~29日で開催され、ワークスからアマチュアまで世界中から多くのチームがニュルブルクリンクに集結した

F1などとは異なる市販スポーツカーの争いに見応えあり

5月28日~29日、「ニュルブルクリンク24時間耐久レース(2022 ADAC TOTAL ENERGIES 24h NÜRBURGRING)」が開催された。1970年の第1回大会を皮切りに、今年は50回目の節目となる記念大会であり、世界中から約23万人もの観衆が訪れた。

このビッグイベントは年に一度、ドイツの北西部にあるニュルブルクリンクで24時間でどれだけ長い距離を走れるかを競う世界最大級の草レースだ。草レースとはいっても、近年のトップチームは完全にワークス化しており、ドライバーはメーカー系のプロドライバーが中心。他を見渡しても腕ききのジェントルマンドライバーが多く参加している。
 

ニュル24時間▲世界中から130台以上のレーシングカーが集まり、それを見るために23万人以上もの人々が集まった。昨年はコロナ渦のため入場制限していたこともあって、今年は例年以上の盛り上がりをみせた

舞台となるニュルブルクリンクは、F1なども開催される一周約5kmのグランプリコースと、隣接する北コース(ノルトシュライフェ)を組み合わせた約25kmの特設コースだ。この北コースは、1920年代にドイツが自動車産業の発展と地元地域の活性化を目指してつくったもので、全長約20.8km、170以上のコーナーが連なり、高低差300mと起伏が激しく、アスファルトやコンクリートなど様々な路面が出現する。

ここを走破できれば走れない道はない“世界一過酷なコース”として、いまや世界中の自動車メーカーが開発拠点として使用し、スポーツカーはこぞってラップタイムを競い合っている。

日本では知る人ぞ知るコースだったが、近年はトヨタや日産がここでの車両開発ストーリーを喧伝していることもあって、“ニュル”という言葉を耳にする機会も増えてきた。
 

ポルシェ 911 GT2▲24時間レースの舞台となるニュルブルクリンクは自動車の聖地としても有名。とくに北コースは、自動車メーカーが市販車の最速タイムを競い合うステージでもある。ちなみに現在のトップタイムは、ポルシェが911 GT2 RS(マンタイパフォーマンスキット装着車)で記録した6分43秒300

今年のニュルブルクリンク24時間耐久レースには50チーム、138台が参加。22ものクラス分けがなされており、そのトップカテゴリーがFIA GT3マシンによって争われるSP9だ。エントリー数も33台と最も多く、ポルシェ 911、メルセデス AMG GT、BMW M4、アウディ R8、ランボルギーニ ウラカン、フェラーリ 488、アストンマーティン ヴァンテージ、のワークス系GT3マシンが群雄割拠する。今年はBMW M GmbHが50周年、AMGが55周年を迎えることもあって、より一層の盛り上がりをみせた。

ちなみに、このSP9クラスに長年日本メーカーとして参戦しているのが、タイヤメーカーのファルケンタイヤ。今年もポルシェ 911の2台体制で臨み、1台が9位完走を果たしている。このGT3マシンがひしめきあうSP9の下位カテゴリーである、GT4マシンが争うのがSP10 クラス。このクラスにはトーヨータイヤが2台のトヨタ GRスープラで参戦し、総合43位と93位に。

代替燃料を使うATクラスには、トヨタガズーレーシングヨーロッパがGRスープラGT4で参戦し、総合65位。排気量2L以下のターボ車が集まるSP3Tクラスにはスバル WRX STIが参戦。スバルは過去6度のクラス優勝を果たしており、7度目の勝利を目指したが、車両トラブルに起因するクラッシュにより、リタイヤしている。
 

ポルシェ 911 GT3▲1999年から長年にわたって参戦を続ける日本勢のひとつがファルケンタイヤ。今年はお馴染みのカラーリングをまとったポルシェ 911 GT3Rの2台で参戦。写真の33号車が総合9位で完走を果たした

▼検索条件

ポルシェ 911 × 全国
アウディ R8▲SP9クラスに参戦し、総合優勝を果たしたアウディのR8 LMSエボII。史上最多周回数に並ぶ159周を記録し、その総走行距離は約4035kmにも及ぶ

▼検索条件

アウディ R8 × 全国
メルセデスAMG GT▲アウディのR8と同じSP9クラスに参戦したメルセデスAMG GT。写真のTeam GetSpeedの3号車が総合2位となった。なお、上位8位までをアウディとメルセデスが独占し、総合9位にファルケンタイヤのポルシェ 911 GT3Rが入った

▼検索条件

メルセデスAMG GT × 全国
BMW M4▲BMW M GmbH 50周年という記念の年だったが、残念ながら成績はふるわなかったBMW勢。写真のFK Performance MotorsportのBMW M4がBMW勢としては最高順位の19位に入った

▼検索条件

BMW M4 × 全国

総合優勝は、SP9クラスのアウディスポーツ・チーム・フェニックス『アウディ R8 LMSエボII(ケルビン・ファン・デル・リンデ/ドリス・ファントール/フレデリック・バービシュ/ロビン・フラインス)』。史上最多周回数に並ぶ159周を走破して、アウディに6度目の栄冠をもたらした。なお、GT4マシンのSP10クラスのトップ周回数は144周だった。

総合の2位と3位は、同SP9クラスのメルセデスAMG GTが続く。今回優勝したアウディ R8の総走行距離は約4035km、平均時速は167km/hとニュルを知る人にとっては信じられないほど驚異的な、まるでスプリントレースの様相を呈している。

“道が車を作る”という言葉があるが、このレースを完走するだけで人も車も相当に鍛えられることは間違いない。

文/藤野太一、写真/Nürburgring、Porsche AG、AUDI AG.、Mercedes-Benz Group AG.、BMW AG