シトロエン C5エアクロスSUV▲100年以上快適さを追い求めてきたというシトロエンが、2019年に日本へ導入したのがC5エアクロスSUV。独自のプログレッシブ・ハイドローリック・クッションを搭載し、シトロエンならではの上質な乗り心地を実現している

中古車に限らず、お買い得感があり、他車にはない魅力を備えた1台を見つけるのは、なかなか難しい。そこで本企画「賢者の選択」では、自動車のプロが今注目しているモデルを紹介する。

今回は、モータージャーナリストの岡崎五朗氏が注目しているモデルを紹介してもらった。ぜひ、中古車選びの参考にしてほしい。
 

唯一無二の優れたコンフォート性能

かつてフランス車(とイタリア車)は、ごく一部のマニアのための車だった。多少壊れようがそんなこたぁ関係ない、大事なのは個性なんだよ個性! という人たちが、時に故障自慢しながら愛でるのがフランス車だったのだ。

けれど時代は変わった。トヨタ車並みに壊れないと言えばきっと嘘になるが、プジョー2台、シトロエン2台を乗り継いだ経験から言えば、最近のフランス車は拍子抜けするほど壊れない。たまたま運が良かっただけという可能性もゼロではないけれど、4台乗り継いで故障ゼロというのは「運」だけでは説明がつかないだろう。

となると、がぜん持ち前の個性が光ってくるわけだ。実際、車購入の相談を持ちかけられたとき、その人が無難さや図抜けたハイパフォーマンスを求めているのでなければ、「こんなのどう?」と言ってフランス車をオススメするケースが増えた。中でも「次はSUVに乗りたいんだけど…」と言う知人にプッシュしているのがシトロエン C5エアクロスSUVだ。

肩に力が入っていないのに没個性ではないデザインは、日本にもドイツにもできない芸当。他にも、手頃なサイズ感、使い勝手のいいパッケージング、用途に合わせて選べるパワートレインなど、魅力はたくさんある。けれど、何にも増してC5エアクロスSUVを他に代わるもののない孤高の存在にしているのが図抜けた快適性だ。

こいつに乗れば「乗り心地がいい」とはこういうものなのか、ということをはっきりと体感できるはず。良路でのゆったり感、荒れた路面でのマイルドさ、高速域でのフラット感……どれもお見事! このレベルの乗り心地を求めるならメルセデス・ベンツ Sクラスを買うしかない。言い換えれば、コストパフォーマンスならぬ、コストコンフォートで世界最高の1台ということだ。
 

シトロエン C5エアクロスSUV▲シトロエンのロゴであるダブルシェブロンを組み込んだフロントグリルなど、個性的なデザインをもつC5エアクロスSUV
シトロエン C5エアクロスSUV▲テールライト形状やサイドスカートの飾りなど、各所に角の丸い四角形が使用されている
シトロエン C5エアクロスSUV▲ラゲージ容量は580L。3分割式の後席を一番前までスライドさせれば670Lとなる。

知人だけでなく、日本の自動車メーカーのエンジニアにも「C5エアクロスSUVの乗り心地はちょっとスゴいので研究してみる価値ありますよ」とアドバイスをしたが、皆さん「五朗さんの言うとおりでした!」と。数年後にはこいつに近づく乗り心地の日本車が出てくるかもしれないが、現状では間違いなく孤高の存在だ。

2022年4月の執筆時点における、カーセンサーEDGE.net上の在庫は40台。ガソリンターボで436万円、ディーゼルで456万円の新車時価格に対し、2年落ちかつ走行1万km以下のディーゼルエンジン搭載車で300万円切りの物件も出てきている。半導体不足やコロナの影響で新車の納期が遅れる中、即納の良質車がこの価格で手に入り、なおかつそれが空飛ぶ魔法の絨毯のような素晴らしい乗り心地を提供してくれるのだから、これはもう文句なしに買いだと思うのである。
 

シトロエン C5エアクロスSUV▲デジタルメーターは、かつてのシトロエンを思わせるボビンメーター風のスピード表示が採用されている。水平基調のダッシュボードと高いシートポジションで、視界の良さに優れている
シトロエン C5エアクロスSUV▲シート素材はハーフレザーが標準で、ナッパレザーはオプション。後席の3分割シートはすべて同じサイズで、リクライニング機構と150mmの前後スライド機能が備わっている

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シトロエン C5エアクロスSUV × 全国
文/岡崎五朗、写真/河野敦樹、尾形和美