外遊びの達人が行き着いたのは“フツー”の車。ホンダ フィットを選んだ理由とは?
2022/03/30
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
四駆を乗り回す“オフロード夫婦”だった
車というのは趣味的なものであると同時に、社会的なツールだ。
だから地位や家族構成、経済状況などの変化に応じて愛車選びの基準も変わる。時に車歴はオーナーの人生を映し出す鏡なのである。
現在、ホンダ フィット(3代目)に乗る丹羽孝之さんもそんな一人である。ここに至るまでに様々な車を買っては手放してきた。
外資系の大手ITメーカーに勤務していた丹羽さんは、若い頃から車好きだった。名機2T-Gエンジンを搭載したとトヨタ カリーナをはじめ、トヨタ ソアラ、日産 スカイラインなどを乗り継いだという。
そして現在の奥さまと出会って結婚。奥さまが結婚前に所有していたスバル レオーネによって新たな世界を知る。4WDのレオーネにラリー用タイヤを装着し、林道などのオフロードを走る楽しみを覚えたのだ。
「ちょうどその頃に長野県松本市に転勤になったんですよ。自然豊かな場所だったので4WD車を走らせるには絶好の環境でした」
いすゞ ビッグホーンを買って地元の四駆乗りのクラブに所属、林道走行やクロスカントリーの練習などにいそしんだという。
「ユンボで“バケツ”を掘ってそこを走ったりね。多いときは1年で約3万kmも走るので、車がすぐにガタガタになってました(笑)」
すっかりオフロード走行にハマってしまった丹羽さんはビッグホーンの次に三菱 パジェロ、三菱 ジープと乗り継いだ。当時は奥さまも幌仕様のJA11型 スズキ ジムニーをアシにしていたそうで、夫婦揃ってホロ車に乗っていましたと丹羽さんは笑う。
スーツ姿で三菱 ジープに乗り込んで、銀行回りの業務をこなしたこともあったという。
家族のために趣味の優先順位をつける
そして丹羽さんに大きな転機が訪れる。
「3人の娘の成長に伴って仲間とオフロード遊びをするのが難しくなってしまったんですよね。それで趣味に優先順位をつけようと思ったんです。オートバイやキャンプ、DIYといった趣味はこれまでどおりできるよう優先し、車は妥協しようと」
家族全員でゆったりと移動するためにトヨタ ハイエースレジアスに乗り替えたところで丹羽さんは車趣味にひとつの区切りをつけた。
「ハイエースレジアスを買いに中古車店へ行く道すがら、当時乗っていたビッグホーン(2台目)のエンジンルームから「ボンッ!」という音とともに白煙が上がったんですよ。そのまま動かなくなったのでレッカー車でお店に行きました(笑)」
愛する四駆との別れはじつに劇的だった。
愛車は文句なしの道具
その後、お子さんたちがさらに成長して家族全員で出かける機会が減ると、丹羽さんの愛車はダイハツ タントに。これを10年ほど乗って現在のフィットにバトンタッチしたという。
「いまは使い勝手の良さを重視して車選びをしていますね。その基準で言うなら、このフィットは文句なしの1台だと思います。車体の大きさの割に車内のスペースは広いし、装備はひと通り揃ってるし、もちろん燃費もいい」
しばらく軽自動車に乗っていたため、コンパクトカーのめざましい進化に驚いているそうだ。
「家内は『高級車』だって言ってます」
過去の車歴と比較すると車自体の趣味性は薄くなったかもしれないが、それを使って楽しむというスタンスはいまも昔も変わらない。
丹羽さんはキャンプ歴40年。おまけに採取が難しいとされる自然薯掘りの名人というアウトドアマンである。
すでに子供たちは独立しているが、現在も一緒にキャンプや自然薯掘りに出かけることもあるという。
キャンプといっても近年流行の至れり尽くせりな贅沢キャンプとは異なる。長年使い込んだ愛用のギアを厳選して持っていくシンプルなスタイルなので、ラゲージスペースにはまだまだ余裕があるという。
アウトドア遊び=四駆がマスト、何となくそう思いがちだが、限界や対策を熟知していれば、FFでも林道や雪道を安全に走れると丹羽さん。
車はドライバー次第。なんとも説得力のあるご意見である。
丹羽孝之さんのマイカーレビュー
ホンダ フィット(3代目)
●走行距離/28,500km
●マイカーの好きなところ/コンパクトのボディと高い積載性をあわせ持つところ
●マイカーの愛すべきダメなところ/特になし!
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/車に高い実用性を求める人
ライター
佐藤旅宇
オートバイ専門誌『MOTO NAVI』 、自転車専門誌『BICYCLE NAVI』の編集記者を経て2010年よりフリーライターとして独立。様々なジャンルの広告&メディアで節操なく活動中。現在の愛車はボルボ C30と日産 ラルゴの他、バイク2台とたくさんの自転車。