ピィー・コレクション▲一見、普通の中古車ショップだが、よく見てみるとラインナップに違和感が……。人気のZ33系フェアレディZにトヨタ ヴェロッサ、横にルノー ウインド。なにやらかぐわしい感じがしてくる。数々の中古車ショップをまわってきた取材班のセンサーに引っかかるラインナップなのである
 

自動車、中古車の世界で疑問に感じることを、自動車評論家の小沢コージが検証するコーナー「小沢コージの自動車暴論」。今回のテーマはパっと見、普通のお店に見えるけど、ラインアップがかなり異様なお店。実は探すとこの手の素敵なお店、たまーに遭遇するのである。さて、こちらはどんなお宝が眠っているのか、どんなビジネスが展開されているのか……その秘密を探ってみた。
 

どんなタマでも相場より安く入れりゃビジネスになる!

「特別キワモノを狙って入れてるつもりじゃないんですけどね(笑)」と仕入担当の森本 輝さん。

久々にかなりヘンテコ品揃えの店を見つけてしまった。それも都心部から外れた場所、東京町田市で創業30年を迎える老舗「ピィー・コレクション」だ。おかしさは現ラインナップを見ればわかる。

2001年式トヨタ ヴェロッサ2.5 TEIN車高調入り(54万円)に、2000年式ダイハツ ストーリア(68万円)、2008年式アウディ TTクーペ(123万円)。さらに2000年式トヨタ マークⅡグランデ(298万円)や、1996年式マツダ ロードスター(249万円)、2005年式スズキ ツイン(49万円)に2011年式トヨタ タコマ アクセスキャブ(198万円)などそうそうたるメンツが揃っていた(※取材時)。


メインは、2000年前後の微妙に懐かしいレア系国産スポーツカー。ソイツを100万円以下で売る場合が多いが、それ以外にも少し高めの変わり種や輸入車も取り扱っている。また、カーセンサーへの掲載物件は39台にすぎないが、裏には保管駐車場がドカンとあり、ヘンテコ国産系が列を成している。例えば、変態2人乗り軽自動車のツインが2台もあるとか。

確かに、100万円以下で程度のいいロードスターや懐かしのマークⅡを並べれば、食いつく人もいるかもしれない。一応、巨大ベッドタウン町田周辺だし。とはいえ、正直バカ売れするとは思えない。コンスタントに中古車ビジネスをするなら、ド定番ミニバンや高年式ドイツプレミアムを扱う方が確実。

ところが、社長は言う。

「そんなのつまんないじゃないですか。やっぱり自分が面白いと思ったモノを売らないと。特別、自分の車趣味がヘンだとは思ってはないですが(笑)」
 

ピィー・コレクション▲店内をのぞき込んで、ここが不思議系ショップであることを編集部は確信した。明らかにスタッフか社長の趣味であろう王道のバイクたちが並べられ、その奥にはキレイなクラシック、ネオクラシック系の車が「僕たちは売り物ではありません」というオーラーを放ちながら鎮座している
ピィー・コレクション▲カーセンサーにほとんど流通することがないレアモデル、ルノー 5 ターボ2。内外装はキレイだが、なにやら作業中の様子。社長いわく「それはいま作業中で、個人所有の車なんですよね」とのこと。どうやら日本車、輸入車問わずになんでも扱うお店のようだ
ピィー・コレクション▲店内を歩いていると、足元を巨大な陸ガメが普通に散歩していた。かわいい……。ちなみに寒さや日によって居る場所が変わるので、訪れたときにお出迎えしてくれるかどうかは運次第だそうだ
 

ちょっと変わった中古車のセレクトショップ

聞けばそもそも創業の地は横浜。ただし、時代が過ぎるにつれ、町田市に移り今の品揃えになってきたという。

「当初は売れ線の車も扱ってたんですよ。でも、それじゃ面白くない。町田なら都心のお店と違って在庫リスクも少ないし」

聞けば聞くほど、半無自覚的にレア車を売るための体制を整えてきたことがわかる。大都市周辺の借地だと長期在庫にカネがかかるが、土地の安い町田の外れなら固定費はそれほどかからないし、寝かせておくことで相場が上がるモデルも多い。実際、一部モデルは時間の経過とともに価値が高まることがある。まるでマニアックな漬物のようだ。

一方、ロードスター、MR-Sのような王道に加えて、ウイングロード、ADバンといったものでも装備やグレードよってはコアなファンもつく。例えば、並べてあったマークⅡグランデ、アルト、インプレッサ、キャミ、ツイン、プロボックス、ストーリア、デュエット、ウイングロードは、かなりの確率でレアなMT車。営業車でもMTなら楽しめるし、意外に元気のいいエンジンを積んでいたりする。仕入担当の森本さんいわく「ちゃんと自分で味の想像がつく、面白そうな車を選んでますから。ご心配要りませんよ(笑)」とのこと。

なにより最大のキモは仕入“価格”だ。「どんなレア物でも、相場より安く仕入れればリスクは少ないじゃないですか。それ以上の価格で売れればいいわけですから」と森本さん。

大切なのは価格感。どの車のどの仕様が“相場より安い”か。誰もが認める大人気モデルをガンガン仕入れて売るだけが中古車ビジネスじゃない。自分が好きになれるキワモノを安く入れて、適性価格で売ればビジネスは見事に成り立つわけで、ちょっとヘンな郊外の車版セレクトショップはやっていけるのだ。結局は、己の中古車選球眼が一番大切なんですってば!
 

ピィー・コレクション▲お店の裏手から異質な気配を感じて回り込んでみると、はい、やっぱりありました。アウディTTや日産 サニーのMTモデル……。これってひょっとして、マニアにとってはお宝ばかりなのでは……。このお店には一環したコンセプトがあるように思えた
ピィー・コレクション▲極め付きがこちらのストックヤード。こちらは、基本的に商品化される前の車が保管されている場所。なんでも今は、熟成しておきたい「金の卵」予備軍が孵化を待っている場所でもあるそうだ。詳細は、企業秘密もあるのであまり語れませんが……

■取材協力:ピィー・コレクション
■住所:東京都町田市小山町3144
■営業時間:10:00~19:00
■定休日:水曜日
■TEL:042-774-6621

文/小沢コージ、写真/編集部