11月20日、悪質運転による死傷事故の罰則を強化する新法「自動車運転死傷行為処罰法」(正式名称:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)が参院本会議で全会一致により可決、成立した。酒や薬物などは無論、発作を伴う特定の病気の影響による事故も対象とされ、罰則が強化された。最高刑は懲役15年となる。

今回の罰則強化にあたっては、栃木県鹿沼市で登校児童の列にクレーン車が突っ込んだ事故や、京都府亀岡市で無免許、居眠り運転の車が登校児童と引率の保護者をはねた事故などが念頭に置かれていると考えられる。

自動車の運転における罰則で、現行法での最高刑は懲役20年である「危険運転致死傷罪」。しかし、これは、成立要件である“正常な運転が困難な状態”を立証するハードルが高い。そのため、悲惨な事故でも最高刑が懲役7年となる「自動車運転過失致死傷罪」が適用されることがあり、被害者や国民感情との解離が指摘されていた。

新法は、危険運転致死傷罪と自動車運転過失致死罪の中間にあたり、死亡事故で15年以下、負傷事故で12年以下の懲役となる。

加えて、近ごろ問題になっている、飲酒運転で人身事故を起こした際に一旦逃走し、事故後に飲酒することで飲酒運転の事実をごまかす行為に対しても12年以下の懲役とする「発覚免脱罪」が新設された。また、無免許での人身事故には重い罰則を科す内容も盛り込まれている。

「危険運転致死傷罪」が立法される契機となったのは、14年前に東名高速道路で発生した飲酒運転のトラックによる乗用車への追突事故。1歳と3歳の姉妹が死亡している。また、7年前には、福岡市で飲酒運転の乗用車による追突で前車が海に落ちる事故が発生。世論を大きく動かし、飲酒運転の厳罰化へつながった。

悲惨な事故が起こるたびに厳罰化される法律。ハンドルを握るドライバーは、法案成立をただのニュースとしてみるのではなく、決して事故を起こさないための注意喚起として捉えたい。

新法を嘆願していた被害者遺族は、無免許運転に関し「危険運転致死傷罪」の適用対象とするよう求めていたが、認定が困難として見送られた

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「特定の病気」は、てんかんや統合失調症などが想定されているが具体的な病名は政令で別途定められる。これには偏見を助長すると反対を表明する学会も

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