スバル レガシィアウトバック▲2021年10月にデビューしたスバル レガシィアウトバック(4代目・現行型)。自動車テクノロジーライターの松本英雄氏によるインプレッションをお届けします!

2022年、アウトバックでの雪国走行

スバルというと花形は、WRXやレヴォーグになるだろうか。ラリーやサーキットで培われたスポーティなモデルも見逃せないし、個性が際立つ。

しかし、ここ最近のスバル車のサスペンションのセッティングは、ラリーやレースでのノウハウが粗削りになっている印象である。なぜか?

最低地上高を高めたモデルはストローク時のタイヤと路面とのコンタクトを大切にすることから、乗用車ベースのパーツを使うと、突っ張った足回りになりやすいからだ。

以前試乗したアウトバックやXVはどうも「しなやかさ」に欠けていた。2020年に登場した1.8リッターターボもしなやかさに欠けていて、まとまりのつかないセッティングだった。

そんな流れの中、昨年、新型アウトバックを試乗した。

スバル レガシィアウトバック▲本記事のメイン「東京→越後湯沢のグランドツーリング」よりも前に、松本氏は一度アウトバックに試乗していました。そこでも「総合雪国性能」を含め、アウトバックの良さを感じていたそうで……

走り出して感じるのは、CVTがスムーズで意図的なトルク増大を狙わないセッティングが自然で良いということ。これならば滑りやすい路面でも、コントロールしやすそうだ。

そして何よりも、乗り心地がよい。おそらく、歴代のスバル車の中でもおおらかで、路面をよく捉えるセッティングではないかと感じられる。

当日は高速を使って片道200kmをノンストップで走り雪深い林道も走ったが、「これぞスバル」というようなセッティングで雪の硬さに追従しながら確実に路面を捉えていたのである。

2023年3月、アウトバックでの東京⇔越後湯沢のツーリング

そしてまた、アウトバックによるロングツーリングの試乗機会が訪れた。昨年試乗したモデルと同様、グレードは上級のLimited EXだ。

スバル レガシィアウトバック▲当日試乗した、レガシィアウトバック(4代目・現行型)
スバル レガシィアウトバック
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スバル レガシィアウトバック
スバル レガシィアウトバック

すでに走行距離1万kmを超えていた。ちょうど馴染みがついた頃合いだろうか。

様々な人が試乗したモデルだが、シートに癖もなく北米で鍛えられた品質が感じられる。

スバル レガシィアウトバック▲レガシィアウトバック(4代目・現行型)の前席

スバル レガシィアウトバックは国産唯一といっていいほど、乗用車ワゴン形状のSUVであるが、SUVらしくない「オールラウンドの上品さ」がある。

アウディやメルセデスはこの仕様にうまみを感じたからこそ、現在に至っているのだ。

スバル レガシィアウトバック▲ステーションワゴンをリフトアップし、SUVとする手法は、スバルが得意とするもの
スバル レガシィアウトバック▲バックランプはLEDではなくフィラメント。これは「雪が積もってしまったときに、熱で溶けるようにしたい」という背景があるからとのこと。スバルの「総合雪国性能」はこういった細かいところにも表現されています
スバル レガシィアウトバック

今回の試乗は、新潟・越後湯沢までのドライブだ。事前情報によると、10日ほど前まで大変な積雪があった。

我々クルー3名はシートに身をおさめ、カメラ機材をラゲージエリアに入れ、エビススバルビルを出発した。私が運転するので編集者は助手席、必然的にカメラマンが後部席に乗る。

スバル レガシィアウトバック▲レガシィアウトバック(4代目・現行型)の荷室
スバル レガシィアウトバック▲荷室側からレバーを引くだけで、後席がワンアクションで倒せます。ウインタースポーツで荷物が多いときなどで、かなり活躍してくれるはず

こういったモデルで、しかも長距離を、後部席に座ってもらうのはとても忍びない。大抵の横置きユニットのSUVは後席がおろそかな仕様が多く、走行中に何度も腰を上げて位置をずらしたり戻したりする様子を見る。

アウトバックはどうなのだろうか?ミラーで後席を観察しながら、首都高から関越に向かう。

スバル レガシィアウトバック▲レガシィアウトバック(4代目・現行型)の後席

車内のアメニティーは、エアコンのコンプレッサーを変更してからとても良くなった。全体的にいいあんばいの快適な温度だ。

寛容なサスペンションセッティングは、機材と3人乗車してもますます乗り心地がよい。

スバル レガシィアウトバック

1.8リッターターボは、過給機を感じさせないトルク特性とその特性に合わせたCVTのセッティングで静粛性に富んだ穏やかな仕様だ。

加速したいときはぐっと踏み込めば、素早く法定速度を突破してしまいそうな勢いだ。ハンドリングも穏やかで急激な揺れを誘発させない工夫がある。関越の標高が高く風が強い橋のところでも、車体の安定性は抜群だ。

スバル レガシィアウトバック

しばらくすると、後席のカメラマンがひと言「この車、いいね!」。彼は様々な取材で仕事上後席に乗る機会が多いだけに、お世辞は言わない。

思わず、「そうでしょ! このシリーズになってからグッと良くなったんですよ」と思わず本音を話してしまった。程良いホールドとストロークあるシートは疲れ知らずだ。

ちょっとしたことを誇大な能書きで表現するよりも無言で食べさせる料理人は本物の在り方を完成品で表現するのだ。スバルの真骨頂であるエンジニアリングを感じさせるひとつである。

スバル レガシィアウトバック

関越トンネルの手前の谷川岳パーキングエリアで休憩。もうしばらく来ていなかったが、素敵なパーキングエリアに変わっていた。

湧き出るピュアな水もスッキリしていておいしい。おいしい水を飲める日本を感じる一幕がある。

関越トンネルは長く単調だ。ADASの恩恵で疲れを軽減させる。乏しい表現だが、トンネルを抜けるとまさに雪国である。

越後湯沢のバブルの遺産であるマンション群が立ち並ぶ。遠くに来たのに妙にシティらしさも感じるのは違和感があるが、片道の終着地点だ。

スバル レガシィアウトバック▲越後湯沢駅でお土産も購入しました!

名物へぎそばをすすり、街を走り雪解けが始まった山道を走る。

重い雪でも走破性は万全だ。負荷をかけておけばステアリングの方へ積極的に進み力強さを感じさせる。

スバル レガシィアウトバック

日が暮れる前に越後湯沢を出発して東京へ向かう。

片道210km程度の距離であるのだが、疲れを感じさせない乗り心地と遠くを見させる目線の位置のポジションは大陸で鍛えられた感がある。

前後の快適性があるからこそ、「平等」な楽しさを演出できる。たわいのない会話が出れば、皆がリラックスしている証拠だ。行きよりも帰路があっという間に感じた。

安心で疲れにくいモデルこそ、グランドツーリングにふさわしいのである。

スバル レガシィアウトバック

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スバル レガシィアウトバック(4代目・現行型) × 全国
文/松本英雄、写真/篠原晃一
松本英雄(まつもとひでお)

自動車テクノロジーライター

松本英雄

自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。