▲ホンダが生み出したピュアスポーツモデルの新型「CIVIC TYPE R(シビック タイプアール)」 ▲ホンダが生み出したピュアスポーツモデルの新型「CIVIC TYPE R(シビック タイプアール)」

歴代タイプRに乗ってきたからこその期待

昨年12月に750台限定で販売されたホンダ シビック タイプR。私は、この車に乗るのがとても楽しみであった。というのも、歴代のホンダ タイプRがすべて素晴らしいモデルであったからだ。

過去のタイプRはハッチバック、セダン、クーペ、そしてNSXまで試乗してきたが、エンジンからサスペンション、シフトフィールにシャシー剛性、それに見合ったハンドリングまで、どれも“操るおもしろさ”を理解せずにいられない仕様だった。欧州スポーツカーを知っている方ならば、一層分かっていただけるはずだ。

果たして、今回のタイプRはいかがなものか。試乗した感想をお伝えしたい。

▲初代から歴史を創り上げてきたシビック タイプR。今回の新型は4代目にあたる ▲初代から歴史を創り上げてきたシビック タイプR。今回の新型は4代目にあたる

洗練された内外装と走り

まずデザインだが、最高速度270km/hを誇ることもあり、空力に特化したボディが個性を際立たせている。内装は、今までのシビックと比べるとより高級なダッシュパネルを使っており、質感の向上に努めているのが分かった。国内で販売しているホンダでは採用されていない質感だ。バケットシートの作りも上々で大きなバックレストでしっかりと背中を支えてくれる。全体的に、高級感が増した印象だ。

▲空力に特化したデザインパーツ ▲空力に特化したデザインパーツ
▲黒を基調に赤を配色したコックピット ▲黒を基調に赤を配色したコックピット

スタートボタンを押すと、すぐにエンジンが目を覚ました。始動時の振動は今までのタイプRと比べると減少しており静粛性が向上していた。気になるのは、最高出力310馬力というハイパワーのターボユニット。タイプRとしては初めての搭載だ。

このようにチューニング度合が高いとドライバビリティはいかがだろうか。試しにシフトノブをコクッと1速に入れて、少々重めのクラッチをミートポイントでスッと合わせアクセルを軽く当ててみた。

……極めてスムーズに発進する。普通に走っても挙動を乱すトルクの山と谷は感じない。ターボハイパワー車とは思えないほど滑らかなドライビングだ。シフトフィールも横置きトランスミッションとしてはかなり良い。チューニングが誠に上手だ。

▲アルミ製のシフトノブ ▲アルミ製のシフトノブ

エンジンの完成度も高い。ホンダはエンジンメーカーとしても生きていけるのではないか? と思うほどだ。 高回転でもストレスを感じない。トルクの高まりといいサウンドといいドラマチックだ。搭載位置と車軸の関係も最適にしてあり、FFとしてはかなりきちんとしたトラクションを得ることができる。

サスペンションは、伸び縮みともにストロークを抑制しているが、路面からの細かい動きに対応したセットアップが専用のバケットシートと相まって、普段の街乗りでも不愉快な乗り心地ではない。

高速走行でのステアリングも安定している。ニュートラル時の重さが十分あった。カーブでも路面からのインフォメーションをしっかり受け止め、適度な重さがキレイなコーナリングを可能にしてくれた。

そして、これほどのポテンシャルを持ちながら、今回の試乗では11km弱/Lの燃費。ここまで燃費の良いハイパフォーマンスモデルも希有である。

▲直噴2.0L VTEC TURBOエンジン ▲直噴2.0L VTEC TURBOエンジン

今回は、高速とワインディングを合わせて300km程度の試乗であったが、シビックタイプRからは“大人の雰囲気”のようなものを感じた。というのも、今までのタイプRはどちらかというと「技量のあるドライバーがより運転を楽しむための車」という印象だったが、今回は「大きな器で乗り手を上手く運転させてくれる車」といった面も垣間見えたのだ。内外装の高級感も相まって、まさに“大人の雰囲気”がある1台だ。

【SPECIFICATIONS】
■グレード:2.0 ■乗車定員:4名
■エンジン種類:直列4気筒DOHC ■総排気量:1995cc
■最高出力:228(310)/6500[ kW(ps)/rpm]
■最大トルク:400(40.8)/4500[N・m(kg・m)/rpm]
■駆動方式:FF ■トランスミッション:6MT
■全長x全幅x全高:4390 x 1880 x 1460(mm) ■ホイールベース:2600mm
■車両重量:1380(kg)
■車両本体価格:428万円(税込)

text/松本英雄
photo/ホンダ