日産 フェアレディZ NISMO▲様々なNISMO専用チューニングが施され、よりパフォーマンスがアップした日産 フェアレディZ NISMO。自動車テクノロジーライターの松本英雄氏による試乗インプレッションをお届けする

NISMOモデルが追加された

フェアレディZは日産を象徴するスポーツカーである。だからこそ、人々をあっと言わせるデザインが必要だ。

最新型であるRZ34型は、初代フェアレディZ S30をオマージュしたデザインで2022年に登場したのはご存じのとおり。

しかし、発売からわずかで一時発売停止になったこともあり、街中ではそうそうお目にかかれないモデルである。

そして、このRZ34型、基本的にはフレームは先代・Z34型からのキャリーオーバーである。このフレームは、おそらく日産では最後のFRシャシーとなるだろう。

20年前のものをリファインしているため、どうしても古さを感じずにはいられなかった。特にリアのねじり剛性が低いこともあって、コンタクトが外れてテストコースでは急激なオーバーステアを感じたこともあった。
 

 

さて、そんなRZ34型フェアレディZだが、NISMOモデルがあるのをご存じであろうか。昨年8月の商品改良時に追加されたモデルだ。

レトロフィットされた空力パーツなどが装着され、ノーマルよりもおおよそ60~100kgも重量がかさんでいる。

そして、スペシャルなモデルということもあるが、価格はエントリーモデルよりも280万円も高い920万円である。

正直、この二点は大きなマイナスポイントだと感じるのだが、果たしてそれだけの価値はあるのだろうか。早速見ていこう。
 

日産 フェアレディZ NISMO▲NISMO専用バンパーが装着され、空力性能が向上している
日産 フェアレディZ NISMO▲リアLEDフォグランプが特徴的

走りは申し分なしだが……やはりMT仕様が望まれる

まずは、エクステリアをチェックしてみよう。

NISMO専用のエアロパーツはスマートな雰囲気というよりも、ゴツイ感じが否めない。これが重量増の原因のひとつであろう。

赤のラインはデザイナーからすれば NISMO GT-Rの雰囲気を醸し出したかもしれないが、それほど目を見張るワンポイントではない。
 

日産 フェアレディZ NISMO▲他のNISMOモデル同様、随所に赤のラインが入っている

続いてインテリアだ。まず目を引くのはNISMO専用レカロシートだが、座り心地は上々だ。

このNISMOには9速AT仕様しかラインナップされていないのだが、ATのセレクターからはお世辞にもNISMOの雰囲気が全く伝わってこない。

パドルなどに仕掛けがあればまた印象は違ってくるが、内装にコストをかけることができなかったということだろう。

しかし、ATしかないというのは残念だ。おそらくこの価格で購入する方々は、AT仕様を望んでいると決めつけている部分があるのではなかろうか?

個人的には、MTもセレクトできるプログラムもあっても良かったのではないかと思う。でなければスペシャルではないと強く感じる。
 

日産 フェアレディZ NISMO▲レカロシートはホールド性が良好なだけでなく、座り心地も上々だ
日産 フェアレディZ NISMO▲スポーツ色の強いモデルだけに、このATセレクターの形状はいただけない

ではエンジンを始動してみよう。おとなしい音でジェントルな感じだ。メーターパネルからTVCMやTVゲームのような演出のウエルカムディプレイが表示される。

ステアリングホイールは今の時代にしたら大きめだ。これは評価できる。なぜなら、視認性と操作性という観点では径が大きい方が断然いいのだから。

ドライブセレクターを「STANDARD」に設定して発進する。標準モデルよりも断然滑らかな特性だ。

段差を越えるときは、いかにも締め上げられたサスペンションという感じだ。一般道では少々硬めであるが、9速ATの心地よいステップアップやエンジンの制御と相まって質の高さを感じる。
 

日産 フェアレディZ NISMO

一般道から首都高速に入り、セレクターを「SPORT」にセット。合流の際にしっかりと負荷をかける。

バランスの取れた燃焼の音は単に馬力アップだけではなく、ハーモニックさも感じる。これは標準モデルでは得られない快音だ。

中速コーナでは、ステアリングの重みがスタビリティの高さを感じさせてくれる。専用ブレーキのタッチもコントロール性が良い。

19インチの鍛造ホイールとダンロップSP SPORTの組み合わせからは、本気をうかがえる様相が感じられる。
 

日産 フェアレディZ NISMO▲NISMOのエンジンは最高出力309kW(420ps)、最大トルク520N・m(53.0kgf・m)にまで向上
日産 フェアレディZ NISMO▲19インチ鍛造ホイールにハイグリップタイヤが装着されてる

前述のとおり、標準モデルには剛性不足、特にリアサスペンションの取り付け剛性が低いと感じていたが、NISMOではしっかりとそれらが改善されており、不安は皆無である。

特に高速道路での路面との追従性に重きを置いているのがよくわかる。

中間加速も反応が迅速なATによって、瞬時に背中から押されるような加速を得ることができる。

そして、なんといっても高速時のスタビリティが随分と向上した。簡単にエアロパーツを組み付ければ安定性が向上するものではない。サスペンションとタイヤのマッチングもある。

このあたりのセッティングは非常に評価できる。

気になったのは、タイヤの性能が高すぎて、ロードノイズが非常に大きいということ。

繰り返しにはなるが、この車にはATしか設定されていないが、そういった点でも「GT」のような雰囲気で高速をクルージングできるかというと話は別だ。

920万円という金額が値頃感を感じさせないのは残念であるが、NISMOのZは今後出てくるかわからない。それゆえご祝儀価格的な部分もあるかもしれない。

後にも先にも日産はFRのプラットフォームを作る余力はなく、新型のフェアレディZが世に出るだけでも奇跡的だと以前に聞いたことがある。そう考えればプレミアムプライスなのかもしれない。

今後どのくらいの台数まで製造できるのか。それによってフェアレディ Z NISMOの価値も変わることだろう。

とはいえ、走りに偽りはないモデルであることは申し添えておく。
 

▼検索条件

日産 フェアレディZ(現行型・RZ34型)×NISMO×全国
文/松本英雄、写真/篠原晃一

【試乗車 諸元・スペック表】
●3.0 NISMO

型式 5BA-RZ34 最小回転半径 5.2m
駆動方式 FR 全長×全幅×全高 4.41m×1.87m×1.32m
ドア数 3 ホイールベース 2.55m
ミッション 9AT 前トレッド/後トレッド 1.57m/1.58m
AI-SHIFT - 室内(全長×全幅×全高) 0.95m×1.5m×1.07m
4WS - 車両重量 1680kg
シート列数 1 最大積載量 -kg
乗車定員 2名 車両総重量 1790kg
ミッション位置 フロア 最低地上高 0.13m
マニュアルモード    
標準色

-

オプション色

カーマインレッド/スーパーブラック2トーン、ブリリアントシルバー/Sブラック2トーン、プリズムホワイト/スーパーブラック2トーン、ミッドナイトブラックパール、NISMOステルスグレー/Sブラック2トーン

掲載コメント

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型式 5BA-RZ34
駆動方式 FR
ドア数 3
ミッション 9AT
AI-SHIFT -
4WS -
標準色 -
オプション色 カーマインレッド/スーパーブラック2トーン、ブリリアントシルバー/Sブラック2トーン、プリズムホワイト/スーパーブラック2トーン、ミッドナイトブラックパール、NISMOステルスグレー/Sブラック2トーン
シート列数 1
乗車定員 2名
ミッション
位置
フロア
マニュアル
モード
最小回転半径 5.2m
全長×全幅×
全高
4.41m×1.87m×1.32m
ホイール
ベース
2.55m
前トレッド/
後トレッド
1.57m/1.58m
室内(全長×全幅×全高) 0.95m×1.5m×1.07m
車両重量 1680kg
最大積載量 -kg
車両総重量 1790kg
最低地上高 0.13m
掲載用コメント -
エンジン型式 VR30DDTT 環境対策エンジン -
種類 V型6気筒DOHC 使用燃料 ハイオク
過給器 ターボ 燃料タンク容量 62リットル
可変気筒装置 - 燃費(10.15モード) -km/L
総排気量 2997cc 燃費(WLTCモード) 9.2km/L
└市街地:6km/L
└郊外:9.6km/L
└高速:11.5km/L
燃費基準達成 -
最高出力 420ps 最大トルク/回転数
n・m(kg・m)/rpm
520(53)/5200
エンジン型式 VR30DDTT
種類 V型6気筒DOHC
過給器 ターボ
可変気筒装置 -
総排気量 2997cc
最高出力 420ps
最大トルク/
回転数n・m(kg・m)/rpm
520(53)/5200
環境対策エンジン -
使用燃料 ハイオク
燃料タンク容量 62リットル
燃費(10.15モード) -km/L
燃費(WLTCモード) 9.2km/L
└市街地:6km/L
└郊外: 9.6km/L
└高速: 11.5km/L
燃費基準達成 -
松本英雄(まつもとひでお)

自動車テクノロジーライター

松本英雄

自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。