【試乗】日産 フェアレディZ NISMO|走りに偽りのないモデルだけに、やはりMT仕様を熱望する
2024/08/29
NISMOモデルが追加された
フェアレディZは日産を象徴するスポーツカーである。だからこそ、人々をあっと言わせるデザインが必要だ。
最新型であるRZ34型は、初代フェアレディZ S30をオマージュしたデザインで2022年に登場したのはご存じのとおり。
しかし、発売からわずかで一時発売停止になったこともあり、街中ではそうそうお目にかかれないモデルである。
そして、このRZ34型、基本的にはフレームは先代・Z34型からのキャリーオーバーである。このフレームは、おそらく日産では最後のFRシャシーとなるだろう。
20年前のものをリファインしているため、どうしても古さを感じずにはいられなかった。特にリアのねじり剛性が低いこともあって、コンタクトが外れてテストコースでは急激なオーバーステアを感じたこともあった。
さて、そんなRZ34型フェアレディZだが、NISMOモデルがあるのをご存じであろうか。昨年8月の商品改良時に追加されたモデルだ。
レトロフィットされた空力パーツなどが装着され、ノーマルよりもおおよそ60~100kgも重量がかさんでいる。
そして、スペシャルなモデルということもあるが、価格はエントリーモデルよりも280万円も高い920万円である。
正直、この二点は大きなマイナスポイントだと感じるのだが、果たしてそれだけの価値はあるのだろうか。早速見ていこう。
走りは申し分なしだが……やはりMT仕様が望まれる
まずは、エクステリアをチェックしてみよう。
NISMO専用のエアロパーツはスマートな雰囲気というよりも、ゴツイ感じが否めない。これが重量増の原因のひとつであろう。
赤のラインはデザイナーからすれば NISMO GT-Rの雰囲気を醸し出したかもしれないが、それほど目を見張るワンポイントではない。
続いてインテリアだ。まず目を引くのはNISMO専用レカロシートだが、座り心地は上々だ。
このNISMOには9速AT仕様しかラインナップされていないのだが、ATのセレクターからはお世辞にもNISMOの雰囲気が全く伝わってこない。
パドルなどに仕掛けがあればまた印象は違ってくるが、内装にコストをかけることができなかったということだろう。
しかし、ATしかないというのは残念だ。おそらくこの価格で購入する方々は、AT仕様を望んでいると決めつけている部分があるのではなかろうか?
個人的には、MTもセレクトできるプログラムもあっても良かったのではないかと思う。でなければスペシャルではないと強く感じる。
ではエンジンを始動してみよう。おとなしい音でジェントルな感じだ。メーターパネルからTVCMやTVゲームのような演出のウエルカムディプレイが表示される。
ステアリングホイールは今の時代にしたら大きめだ。これは評価できる。なぜなら、視認性と操作性という観点では径が大きい方が断然いいのだから。
ドライブセレクターを「STANDARD」に設定して発進する。標準モデルよりも断然滑らかな特性だ。
段差を越えるときは、いかにも締め上げられたサスペンションという感じだ。一般道では少々硬めであるが、9速ATの心地よいステップアップやエンジンの制御と相まって質の高さを感じる。
一般道から首都高速に入り、セレクターを「SPORT」にセット。合流の際にしっかりと負荷をかける。
バランスの取れた燃焼の音は単に馬力アップだけではなく、ハーモニックさも感じる。これは標準モデルでは得られない快音だ。
中速コーナでは、ステアリングの重みがスタビリティの高さを感じさせてくれる。専用ブレーキのタッチもコントロール性が良い。
19インチの鍛造ホイールとダンロップSP SPORTの組み合わせからは、本気をうかがえる様相が感じられる。
前述のとおり、標準モデルには剛性不足、特にリアサスペンションの取り付け剛性が低いと感じていたが、NISMOではしっかりとそれらが改善されており、不安は皆無である。
特に高速道路での路面との追従性に重きを置いているのがよくわかる。
中間加速も反応が迅速なATによって、瞬時に背中から押されるような加速を得ることができる。
そして、なんといっても高速時のスタビリティが随分と向上した。簡単にエアロパーツを組み付ければ安定性が向上するものではない。サスペンションとタイヤのマッチングもある。
このあたりのセッティングは非常に評価できる。
気になったのは、タイヤの性能が高すぎて、ロードノイズが非常に大きいということ。
繰り返しにはなるが、この車にはATしか設定されていないが、そういった点でも「GT」のような雰囲気で高速をクルージングできるかというと話は別だ。
920万円という金額が値頃感を感じさせないのは残念であるが、NISMOのZは今後出てくるかわからない。それゆえご祝儀価格的な部分もあるかもしれない。
後にも先にも日産はFRのプラットフォームを作る余力はなく、新型のフェアレディZが世に出るだけでも奇跡的だと以前に聞いたことがある。そう考えればプレミアムプライスなのかもしれない。
今後どのくらいの台数まで製造できるのか。それによってフェアレディ Z NISMOの価値も変わることだろう。
とはいえ、走りに偽りはないモデルであることは申し添えておく。
▼検索条件
日産 フェアレディZ(現行型・RZ34型)×NISMO×全国【試乗車 諸元・スペック表】
●3.0 NISMO
型式 | 5BA-RZ34 | 最小回転半径 | 5.2m |
---|---|---|---|
駆動方式 | FR | 全長×全幅×全高 | 4.41m×1.87m×1.32m |
ドア数 | 3 | ホイールベース | 2.55m |
ミッション | 9AT | 前トレッド/後トレッド | 1.57m/1.58m |
AI-SHIFT | - | 室内(全長×全幅×全高) | 0.95m×1.5m×1.07m |
4WS | - | 車両重量 | 1680kg |
シート列数 | 1 | 最大積載量 | -kg |
乗車定員 | 2名 | 車両総重量 | 1790kg |
ミッション位置 | フロア | 最低地上高 | 0.13m |
マニュアルモード | ◯ | ||
標準色 |
- |
||
オプション色 |
カーマインレッド/スーパーブラック2トーン、ブリリアントシルバー/Sブラック2トーン、プリズムホワイト/スーパーブラック2トーン、ミッドナイトブラックパール、NISMOステルスグレー/Sブラック2トーン |
||
掲載コメント |
- |
型式 | 5BA-RZ34 |
---|---|
駆動方式 | FR |
ドア数 | 3 |
ミッション | 9AT |
AI-SHIFT | - |
4WS | - |
標準色 | - |
オプション色 | カーマインレッド/スーパーブラック2トーン、ブリリアントシルバー/Sブラック2トーン、プリズムホワイト/スーパーブラック2トーン、ミッドナイトブラックパール、NISMOステルスグレー/Sブラック2トーン |
シート列数 | 1 |
乗車定員 | 2名 |
ミッション 位置 |
フロア |
マニュアル モード |
◯ |
最小回転半径 | 5.2m |
全長×全幅× 全高 |
4.41m×1.87m×1.32m |
ホイール ベース |
2.55m |
前トレッド/ 後トレッド |
1.57m/1.58m |
室内(全長×全幅×全高) | 0.95m×1.5m×1.07m |
車両重量 | 1680kg |
最大積載量 | -kg |
車両総重量 | 1790kg |
最低地上高 | 0.13m |
掲載用コメント | - |
エンジン型式 | VR30DDTT | 環境対策エンジン | - |
---|---|---|---|
種類 | V型6気筒DOHC | 使用燃料 | ハイオク |
過給器 | ターボ | 燃料タンク容量 | 62リットル |
可変気筒装置 | - | 燃費(10.15モード) | -km/L |
総排気量 | 2997cc | 燃費(WLTCモード) | 9.2km/L └市街地:6km/L └郊外:9.6km/L └高速:11.5km/L |
燃費基準達成 | - | ||
最高出力 | 420ps | 最大トルク/回転数 n・m(kg・m)/rpm |
520(53)/5200 |
エンジン型式 | VR30DDTT |
---|---|
種類 | V型6気筒DOHC |
過給器 | ターボ |
可変気筒装置 | - |
総排気量 | 2997cc |
最高出力 | 420ps |
最大トルク/ 回転数n・m(kg・m)/rpm |
520(53)/5200 |
環境対策エンジン | - |
使用燃料 | ハイオク |
燃料タンク容量 | 62リットル |
燃費(10.15モード) | -km/L |
燃費(WLTCモード) | 9.2km/L └市街地:6km/L └郊外: 9.6km/L └高速: 11.5km/L |
燃費基準達成 | - |
自動車テクノロジーライター
松本英雄
自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。