【試乗】日産 新型エクストレイル&アリア|同じ「e-4ORCE」でも氷上では明確な差が!
2023/03/19
氷上で試乗する価値とは
今年も日産の女神湖氷上試乗会に参加した。凍った湖の上で日産車に乗り、性能を試す機会で、毎年恒例となっている。
車に限らず、どのような乗り物でも大切なのは路面とのコンタクトだ。これが希薄であるとスタビリティは確保されない。併せて、動力が最適に伝わっているかも重要だ。
路面としっかりコンタクトが取れている状態、かつ、4つのタイヤに最適な動力が伝わって初めて安定性と安心感が生まれる。そして、これは普通の路面のみが万全であっても不十分である。
車のAWD(四輪駆動)制御は、どんな状況においても安定性・安心感を「十分」に近づけてくれる発明だ。どちらのステアリングも握ったことがある人は違いを感じるだろう。
二輪駆動だとウエットな路面(水たまりや、ぬかるみがある路面)では滑り、スノー(凍結や積雪がある路面)ではさらにふらつく。しかしAWDは、状況に応じて動力の伝え方や制御を調整してくれるため、ウエットやスノーな路面であってもきちんとコンタクトし、安定性・安心感を感じられる。そこそこ古いAWDであっても、乗り比べれば、この圧倒的な違いを感じるはずだ。
そして、そのAWDの性能差をしっかり見ることができるのが、雪上や氷上なのである。
日産の最新AWD「e-4ORCE」を乗り比べ!
前置きが長くなったが、今年の女神湖氷上試乗会の話に戻ろう。今年の目玉は、日産の最新AWDである「e-4ORCE」を採用したモデルだ。具体的には、新型エクストレイルとアリアである。
AWDはそこそこ古くても基本的には悪路走破性に長けていると先述したが、「内燃機関のみ」の動力か「電動モーター」による動力か、では性能に大きく差が出る。
「内燃機関のみ」の動力では、細かなトルクの特性を安定して車輪に伝えることが難しく少々アバウトな制御になるし、「電動モーター」による動力では、初動から大きなトルクを得ることができ細かく制御も可能な一方で、レスポンスが良好すぎて滑りやすい路面の加速や発進ではあだになる可能性もある。
今回、日産の「e-4ORCE」は電動化した新しいAWDであるが、滑りやすい氷の上ではどのような制御、安定性を見せてくれるのだろうか。ここに着目してレポートしていこう。
なお、日産にはe-POWERの4WD車もある。昨年はこのe-POWERモデルに試乗し、電動モーターの動力×電子デバイスによる細かな制御で「進む」「曲がる」という意志を路面に伝えやすくなっていると評価した。今回乗る「e-4ORCE」モデルは、より重量級の2台だ。制御技術はもちろん、車両全体のバランスも違う点も考慮しながら試乗した。
エクストレイル(新型・4代目)
初めに試乗したのがエクストレイル。VCターボという非常に凝ったパワーユニットを備え、素早く確実で、静粛性にも優れた発電プラントが魅力のひとつである。
走行モードはAUTOを選択。天候は快晴で雪は降っていないが、厚く張った湖の氷の上を走る。ツルツルに磨かれ、スタッドレスタイヤでも非常に厳しい路面状況。どのような車でも、正直言って真っ直ぐは走らないような道だ。
発進から緩やかに制御が始まる。初めはなかなか前に進まないが、徐々に速度が上がっていく。路面とコンタクトをとりながら加速しているのだ。とはいえ、やはり真っ直ぐは走らないため、ステアリング&ブレーキで細かく修正しながら中速コーナーのコースへ。
「やはり、ここまでの路面だと制御はほぼ利かないか……」と思っていたが、“ねっとり”とした制御が入り始め、前に進もうとした。意図的にドリフト走行をしてみる。ステアリングの舵角を最小限にとどめてみると、動力への電気的な指令が伝わりやすいのか、とても細かい単位で制御が干渉しようとしてくるのが分かった。1880kgの車重であるが、滑った際のコントロール性にそれほどの重みは感じられない。“ヒラヒラ”とした感覚である。
正直、氷上ではあまりに滑りすぎて、e-4ORCE真価については分かりづらかったが、減速時の安定感はすこぶる良好であった。ブレーキフィールが良いのだ。これは予想外だった。氷上でも細かくコントロールでき、モーターの制動と相まって「止まる」動きに不安がなかった。
アリア(現行型・初代)
もう1台の「e-4ORCE」モデル、アリアはどうだろう。仕組みとしてはエクストレイルと同様で、前後モーターの動力をディファレンシャルを介し左右に振り分けるといったものだが、こちらはピュアEVであるので、同じ「e-4ORCE」といえど性能の差が楽しみだった。
スタートすると、やはり出だしは悪い。エクストレイルのときより、なかなか前に進まない。少し速度がのってくるとリアが左に流れた。
ドライバーがステアリング&ブレーキ操作で制御しようとするが、アングルがきつめになってしまう。どうしても“カニ歩き”のような状態になり、左中速コーナーのアプローチが特に難しい。オーバーアングルになりながら何とか進んだところで、車両の動きが唐突に変わった。試乗車の車重は2230kgだ。エクストレイルより350kgも重い。さらに、サスペンションのセッティングがエクストレイルよりリバンド側がハードで、路面とのコンタクトが難しいと感じた。
エクストレイルは、ツルツルの氷上でもゼロカウンターからドリフトでS字を走らせることができた。しかしアリアは難しかった。重さによるサスペンションのセッティングの差だろうか。
ただ、アリアは、インテリア・エクステリアともに質感が良好で、高級志向なモデルだ。インテリアはとくにラグジュアリーな雰囲気がする。その高級感も踏まえれば「こんな走りして良いのか」と思わせるタフな走破性であったことは補足しておこう。
以上が2モデル試乗した感想である。
正直、滑りすぎる氷上ではe-4ORCEの真価を十分に体感することはできなかった。ただ一つ言えるのは、絶えず路面とコンタクトをとり続け、ドライバーに理解させようとする動きは2モデルとも感じられた。これだけでも、e-4ORCEの性能が高いことは分かった。
次は、もっと分かりやすい雪上で試乗をし、評価したい。
【試乗車 諸元・スペック表】
●エクストレイル 1.5 G e-4ORCE 4WD
型式 | 6AA-SNT33 | 最小回転半径 | 5.4m |
---|---|---|---|
駆動方式 | 4WD | 全長×全幅×全高 | 4.66m×1.84m×1.72m |
ドア数 | 5 | ホイールベース | 2.71m |
ミッション | その他AT | 前トレッド/後トレッド | 1.59m/1.59m |
AI-SHIFT | - | 室内(全長×全幅×全高) | 1.99m×1.54m×1.26m |
4WS | - | 車両重量 | 1880kg |
シート列数 | 2 | 最大積載量 | -kg |
乗車定員 | 5名 | 車両総重量 | 2155kg |
ミッション位置 | 不明 | 最低地上高 | 0.19m |
マニュアルモード | - | ||
標準色 |
ブリリアントシルバーメタリック、ダークメタルグレーメタリック |
||
オプション色 |
ブリリアントホワイトP/スーパーブラック、カスピアンブルーM/スーパーブラック、シェルブロンドM/スーパーブラック、ブリリアントホワイトパール3コートパール、ダイヤモンドブラックパール、カスピアンブルーメタリック、ステルスグレーパール |
||
掲載コメント |
- |
エンジン型式 | KR15DDT | 環境対策エンジン | H30年基準 ☆☆☆☆☆ |
---|---|---|---|
種類 | 直列3気筒DOHC | 使用燃料 | レギュラー |
過給器 | ターボ | 燃料タンク容量 | 55リットル |
可変気筒装置 | - | 燃費(10.15モード) | -km/L |
総排気量 | 1497cc | 燃費(WLTCモード) |
18.4km/L
└市街地:16.1km/L └郊外:20.5km/L └高速:18.3km/L |
燃費基準達成 | R12年度燃費基準 85%達成車 |
||
最高出力 | 144ps | 最大トルク/回転数 n・m(kg・m)/rpm |
250(25.5)/4000 |
型式 | 6AA-SNT33 |
---|---|
駆動方式 | 4WD |
ドア数 | 5 |
ミッション | その他AT |
AI-SHIFT | - |
4WS | - |
標準色 | ブリリアントシルバーメタリック、ダークメタルグレーメタリック |
オプション色 | ブリリアントホワイトP/スーパーブラック、カスピアンブルーM/スーパーブラック、シェルブロンドM/スーパーブラック、ブリリアントホワイトパール3コートパール、ダイヤモンドブラックパール、カスピアンブルーメタリック、ステルスグレーパール |
シート列数 | 2 |
乗車定員 | 5名 |
ミッション 位置 |
不明 |
マニュアル モード |
- |
最小回転半径 | 5.4m |
全長×全幅× 全高 |
4.66m×1.84m×1.72m |
ホイール ベース |
2.71m |
前トレッド/ 後トレッド |
1.59m/1.59m |
室内(全長×全幅×全高) | 1.99m×1.54m×1.26m |
車両重量 | 1880kg |
最大積載量 | -kg |
車両総重量 | 2155kg |
最低地上高 | 0.19m |
掲載用コメント | - |
エンジン型式 | KR15DDT |
---|---|
種類 | 直列3気筒DOHC |
過給器 | ターボ |
可変気筒装置 | - |
総排気量 | 1497cc |
最高出力 | 144ps |
最大トルク/ 回転数n・m(kg・m)/rpm |
250(25.5)/4000 |
環境対策エンジン | H30年基準 ☆☆☆☆☆ |
使用燃料 | レギュラー |
燃料タンク容量 | 55リットル |
燃費(10.15モード) | -km/L |
燃費(WLTCモード) | 18.4km/L
└市街地:16.1km/L └郊外: 20.5km/L └高速: 18.3km/L |
燃費基準達成 | R12年度燃費基準 85%達成車 |
自動車テクノロジーライター
松本英雄
自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。