日産 ノートオーラ▲2021年8月に発表され、今秋より発売が予定されている新型 日産 ノートオーラ NISMO。今回は一足早くテストコースにて試乗する機会を得た。自動車テクノロジーライターの松本英雄氏による試乗の様子をお届けしよう

吟味されたパーツを装着したNISMOモデルに期待が高まる

日産 ノートオーラは、ノートに比べて上質な乗り味だったということは、すでに試乗レポートを通しお伝えしている。

今回は、そのスポーティバージョンであるノートオーラ NISMOに、神奈川県横須賀市の追浜にあるテストコース「GRANDRIVE」(グランドライブ)で試乗したので、その際のインプレッションをお伝えしたい。


今回のノートオーラ NISMOを含むNISMOモデルは、オーテックジャパンの手で品質管理およびチューニングをされる。

NISMO専用の加飾を受けたエクステリアに目が行きがちだが、走行性も大きく向上しているモデルが多い。

ノートオーラが高いポテンシャルをもっていることに加え、NISMOモデルではサスペンションなど、オーテックがさらに吟味して最適なパーツを装着し、セッティングを行っている。

だからこそ、今から試乗するノートオーラ NISMOは本当に楽しみだ。

日産 ノートオーラ▲NISMO専用のエアロパーツは、レースで培った空力技術をベースにしている(写真はオプション装着車)
日産 ノートオーラ▲リアフォグランプは、フォーミュラEからインスパイアされた7灯のユニークなドット状のデザインを採用(写真はオプション装着車)

オプションのレカロ製の専用スポーツシートは、スタイリングも良く、ペダルの位置が最適になるように調整でき、当然のことながら滑りにくくホールド性も高い。

赤いステッチと黒のコントラスがNISMOのアイデンティティのひとつらしい。人それぞれ好みはあるだろうが、個人的には落ち着いた色で良い思う。

日産 ノートオーラ▲メーカーオプションのレカロシート
日産 ノートオーラ▲黒と赤を基調としたインテリアは、スポーティながらも落ち着いた色合いだ

300万円以下でこの性能……日産やるじゃない!

では出発だ。赤いスタートボタンを押し、システムを作動させる。

ノートオーラ NISMOには、エコ・ノーマル・NISMOの3つのモードがある。せっかくのクローズドコースでの試乗なので、最もパフォーマンスの高いNISIMOモードから試してみる。

これはレスポンスがとても良い! 電光石火のごとく、一気に50km/hまで加速する。専用チューンを施し、立ち上がりを速くしていることがわかる。

しかも、これほど強烈な立ち上がりとトルクにもかかわらず、トラクションはとてもいい。ハイパワーなFF車で起こりやすいトルクステアもなく、左右のトラクションのあんばいを心得ている制御だと言える。

ストレートの静粛性とスタビリティも、専用のエアロパーツによって良好だ。通常のノートオーラとの格の違いを感じられる。

日産 ノートオーラ

続けて、中・高速コーナーへと進入するが、ここでも終始安定している。

専用サスペンション車を採用し、車高は20mm低くなっているが、欧州車のスポーツサスペンションをマイルドにしたような奥深さを感じられる。レカロのシートも相まって、乗り心地に不満ない。

むしろ、通常のノートオーラに比べても乗り心地の質感が向上しているので驚いた。チューニングによって、ここまで良くなっているとは思わなかった。

一方で、ハイパフォーマンスカーに慣れている人ならば楽しくドライブできるレスポンスだが、初めての方には少々扱いが難しいとも感じた。それほどレスポンシブな車体の動きなのだ。

日産 ノートオーラ

次に、NISMOモードとは反対のエコモードで走らせる。

驚いたことに、これでも十分速い。しかも、ドライバビリティが高く、これがオールマイティのモードだと感じる。

そうなると、ノーマルモードの意味が薄れてしまう気もするが、エコモードでも走りを犠牲にせず十分キビキビ走れるのは良い。

ここまで試乗してきたが、はっきり言って悪いところが見当たらない。

良いところばかりで、この原稿を執筆しながら「PRっぽくなってしまったか……?」と、少し心配になってしまったほどだ。

それだけ素晴らしいバランスの取れたモデルだと言える。

そして、さらに驚くことに、このパフォーマンスで車両価格300万円以下だというではないか。

「日産、いいところあるなぁ……。」と感じずにはいられない、久しぶりに震えを感じた1台であった。

日産 ノートオーラ
文/松本英雄、写真/阿部昌也
松本英雄(まつもとひでお)

自動車テクノロジーライター

松本英雄

自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。