日産 エルグランド【プロトタイプ】
2010/06/21
■大きくて豪華なミニバンから高級車へと進化を遂げた
駆動方式はFRからFFに(オールモード4×4=4WDもあり)大変更、エンジンは3.5LのV6と2.5L直4、これに全グレードCVTを組み合わせるが、個人的に最もインパクトがあったのはそのデザインである。
フロントマスクはひと目でエルグランドとわかる、厚みのある伝統のデザインだが、新型はそれをうまく継承しながら現代風にアレンジしている。何より凄いのが「目力(めぢから)がある」こと。そしてそのフォルム全体を遠目から見ていて感じたのが「止まって良し、走って良し」という独特の存在感。つまり長い伝統を守りながら新しい世界を創造する歌舞伎の世界に通ずる部分があるのではないか、と。“日本美”や“佇まい”といった世界観を今風に表現したデザインが、新型エルグランドにおいて何よりも一番新しいと思えたのだ。
余談ではあるが、VDCの全グレード標準設定やTPMS(空気充填ガイド付きタイヤ空気圧センサー)の採用など、安全面での進化も光る新型エルグランド。やや硬直化気味のミニバン市場に、風穴を開ける存在になりそうだ。
↑日本が誇る「現代の名工」加藤博義氏がテストドライバーとして走りの味つけを担当。加藤氏いわく「FFとかFRとかにこだわったのではなく、あくまでも乗用車的な味つけや静かさにこだわった」とのこと。事実、テストコースにおける高速走行時でも運転席と3列目で会話ができるほどの静粛性が高く、またコーナリング時の安定感は現行型とは比較にならないレベルであった
「待望の…」この言葉がこれほど似合う車も珍しい。日本におけるLクラスミニバンのマーケットを確立したと言っても過言ではない日産エルグランドが、この夏に8年ぶりのフルモデルチェンジを行う。その市販車のプロトタイプに試乗する機会を得たのだが、正直その中身は予想を大きく超えていた…。
↑全高は現行モデルに比べ95mm低い。ロー&ワイドなフォルムであるが、従来のミニバンにありがちな「箱」っぽい感じがない伸びやかな造形だ。またボディ周辺をぐるりと囲む立体的な光輝モールは高級感がある(左)
従来のミニバンにありがちなドライバーの閉塞感(自分は運転手だ…的な)がなく、車を操る悦びを演出してくれている。カーナビのモニター位置やスイッチ類の配置などもよく練り込まれている(右)
この市場を牽引してきたエルグランドだが、ライバルたちが「エルグランドに追いつけ、追い越せ」をテーマに強力な新型車を世に送り出してきたのは今さら説明の必要もないだろう。そのたびにエルグランドはマイナーチェンジや特別仕様車などの商品力向上(特にここ数年、テレビCMも含めマーケティングがうまかった)で対抗してきたわけだが、なまじ出来が良かったため、8年というロングセラーとなった。そんなヒット作の後継車となる新型を開発する難しさは、当然開発陣にはあったに違いない。従来のミニバンにありがちなドライバーの閉塞感(自分は運転手だ…的な)がなく、車を操る悦びを演出してくれている。カーナビのモニター位置やスイッチ類の配置などもよく練り込まれている(右)
駆動方式はFRからFFに(オールモード4×4=4WDもあり)大変更、エンジンは3.5LのV6と2.5L直4、これに全グレードCVTを組み合わせるが、個人的に最もインパクトがあったのはそのデザインである。
↑すべての席が“ファーストクラス”に仕上げられているが、その中でさらに特等席なのが2列目シート。新たに「中折れ機構」を設定することで身体にかかる体圧を分散し、より快適な座り心地を実現している(左)
2&3列目のサイドウインドウ(2列目は待望のパワーウインドウ付き)には引き上げ式のサンシェードを装着(中)
リアモニターは高精細(4倍美しい)のワイドVGA液晶を、それもこのクラス初となる11型という大型サイズを採用。注目は構造上難しいと言われているツインサンルーフと格納式モニターの設置を両立させたこと(右)
実はこのプロトタイプを見た瞬間、「新型エルグランドって市川海老蔵みたい」と思ったのである。2&3列目のサイドウインドウ(2列目は待望のパワーウインドウ付き)には引き上げ式のサンシェードを装着(中)
リアモニターは高精細(4倍美しい)のワイドVGA液晶を、それもこのクラス初となる11型という大型サイズを採用。注目は構造上難しいと言われているツインサンルーフと格納式モニターの設置を両立させたこと(右)
フロントマスクはひと目でエルグランドとわかる、厚みのある伝統のデザインだが、新型はそれをうまく継承しながら現代風にアレンジしている。何より凄いのが「目力(めぢから)がある」こと。そしてそのフォルム全体を遠目から見ていて感じたのが「止まって良し、走って良し」という独特の存在感。つまり長い伝統を守りながら新しい世界を創造する歌舞伎の世界に通ずる部分があるのではないか、と。“日本美”や“佇まい”といった世界観を今風に表現したデザインが、新型エルグランドにおいて何よりも一番新しいと思えたのだ。
↑オーテック製のファクトリーカスタムモデル、ライダーのプロトタイプ。元々エアロ志向が強く、人気の高かったライダーゆえに今回のモデルも注目(左)
専用のホワイトレザーを設定。ホワイトレザーはライダーシリーズではおなじみの仕様だが、ベースの出来がいいゆえに、その高級感がさらに際立っている(右)
もちろん中身も大きく変わっている。短時間の試乗ではあったが、旧来のミニバンが商用車ベースに作られてきたのに対して、新型はあくまでも乗用車として開発されたのだとすぐわかる。それどころか、乗用車の中でも、これまでにない高級車のカテゴリーを開発したのだと強く思わざるをえないほどだ。開発陣がミニバンとは言わずにアピールする「MPC(マルチ・パッセンジャー・カー)」という考えは、まさに私の感じたことを言い表した言葉である。専用のホワイトレザーを設定。ホワイトレザーはライダーシリーズではおなじみの仕様だが、ベースの出来がいいゆえに、その高級感がさらに際立っている(右)
余談ではあるが、VDCの全グレード標準設定やTPMS(空気充填ガイド付きタイヤ空気圧センサー)の採用など、安全面での進化も光る新型エルグランド。やや硬直化気味のミニバン市場に、風穴を開ける存在になりそうだ。
<Report/カーセンサー編集部 高山正寛 Photo/尾形和美>
日産 エルグランド【プロトタイプ】/試乗レポート
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