レクサス GX▲日本での発売が決定したレクサスの新型「GX」。ランドクルーザーと同じプラットフォームやリアにリジッドサスペンションを採用する本格オフローダーだ。従来のレクサス車と一線を画す直線基調のスタイリングも特徴的

スタイルも中身もまさしく本格派

新型の登場を機に、初の日本での発売が正式に決まったレクサス新型GXの試乗の舞台はアメリカはアリゾナ。実は新型は中東や西欧での販売はなく、北米、中国、オーストラリアにここ日本が販売の中心となるという。

コンセプトはズバリ直球の「THE PREMIUM OFFROADER」。今どき主流のクロスオーバーSUVとは一線を画する直線基調でガラスの立ったデザインはこれまでのレクサス車にはないもので、全長5005mm、全幅1980mmという大きなサイズもあり、ライバルとしてランドローバー ディフェンダーやメルセデス・ベンツ Gクラスなどの姿が思い浮かぶ。

実際、その中身はまさしく本格派だ。レクサス LX、そしてトヨタ ランドクルーザーなどで定評のGA-Fプラットフォームを用いる車体の構造はフレーム別体式で、リアサスペンションはリジッド。けん引能力はクラストップの最高4000kgを実現している。

パワートレインは、これもLXと同じV型6気筒3.5Lツインターボガソリンエンジンと、10速ATの組み合わせで、当然ローレンジも用意する。最大トルクは650N・mでLXと変わらないが、最高出力は354psにとどまる。これは低速域のレスポンスを重視した小径ターボチャージャーの採用によるものだ。
 

レクサス GX▲従来型よりアプローチアングルを5度立たせ、フロントオーバーハングを20mm短くし悪路走破性を向上。OVERTRAILはさらにバンパーコーナー下端の切り上げ、センタープロテクションを装着する
レクサス GX▲オフロード性能をより高めたOVERTRAIL。ブラックのアーチモールやミラーカバーなど、よりタフさを強調したスタイルとなる

試乗した“OVERTRAIL+”は、265/70R18サイズの専用オールテレーンタイヤを履き、そのためフェンダーを左右10mmずつ拡幅。E-KDSS、つまりは電子制御式可変アンチロールバーや、路面状況に応じて駆動・制動の最適な制御を行うマルチテレインセレクトやクロールコントロールなどを搭載して、オフロード性能を一層高めたモデルだ。外板色は専用のムーンデザート。専用シートを採用し、グリーンの差し色が入れられたインテリアも、ソソるポイントである。

よじ登るようにして車内に入ると、アイポイントは当然高めだ。ボンネットフードは先端まで確認しやすい一方、中央が凹んだデザインのおかげで前方視認性も良好。水平基調のダッシュボード、低いベルトライン、そして視野角が広い縦型ドアミラーのおかげで周囲の見切りも上々で、大きなサイズにも関わらず意外や手の内感が感じられるのが嬉しい。

インテリアは機能性最優先のレイアウトながらクオリティも上々。ただし、最新レクサス車が用いているドアのラッチ/アンラッチを電子制御で行うe-ラッチが備わらないこと、荷室のトリムが傷つきやすいハード樹脂なのは不満だ。沢山の荷物を載せることが想像される車である。荷室が簡単に傷だらけになるようでは、レクサスらしくない。

意外にも、と言っていいだろう。まず感心させられたのは、その快適性だった。ボディ・オン・フレーム構造につきものと言える微振動がほぼ解消されているし、サスペンションは柔らかなストロークであらゆる入力をいなしてくれる。静粛性も期待以上で、角度の立ったフロントウインドウにも関わらず、風切り音も気にならない。しかもEPSの操舵に対する応答は正確で、これまたフレーム付きということを忘れさせるから、場面を問わず運転を楽しめるのだ。

動力性能も不満の出る余地は皆無。低回転域からトルクが湧き出し、トップエンドまで回せば快音を響かせながら速度をグイグイと高めていく。しかし何より特筆するべきは、加速も減速も微低速に至るまで速度コントロールがとてもしやすいこと。オフロードでの繊細な操作に応えるための入念なチューニングが、日常域の比類なき扱いやすさにつながっているのである。
 

レクサス GX▲路面や前後輪の状況に応じて前後のスタビライザーを独立制御するE-KDSSをレクサスで初採用

特設コースで試したオフロードの走りも期待以上だった。さすが堅牢なボディとリアリジッドサスペンションのおかげで、走破性のレベルはやはり凡百のSUVでは到底叶わない領域にあって、思わずひるむような難所でも新型GXにとってはラクラク。しかも単に走破できるというだけでなく、堅牢なボディ、そして必要なときにはアンチロールバーを切り離して左右輪を極限までストロークさせるE-KDSSの効果、さらには徹底的に抑えたアクチュエーター作動音などもあって、オフロードですら上質と感じさせる走りを実現しているのには圧倒された。

そのキャラクターや走破性でレクサス車の新境地を切り開きながらも、上質な走りのタッチはまさにレクサス。先に挙げたようなライバルの購入を検討している人にとっては、見逃せない新たな選択肢の登場である。日本での発売開始時期は現時点では未定だが、それほど待たされることはないはずだ。

ちなみに価格は北米仕様の場合、今回乗った“OVERTRAIL”で7万5900ドル(約1120万円)という設定である。グレードは他にふたつあり、エントリーは6万2900ドル(約930万円)。日本での販売価格も気になるところである。
 

レクサス GX▲フロントはレクサスの象徴でもあるスピンドルを塊で表現した「スピンドルボディ」と、オフロード機能に根差したプロテクター形状を融合させたデザイン
レクサス GX▲空力を考慮したショルダー形状の専用オールテレインタイヤを装備する
レクサス GX▲今回の試乗は3.5Lツインターボに10速ATのみだったが、2.4L直4エンジンのハイブリッドモデルも登場予定
レクサス GX▲運転席まわりはオフロードで車両姿勢を感じ取れるようにインパネ上面を基準に水平・垂直基調としている
レクサス GX▲フロントシートには、バックサイドを柔らかくすることで悪路での頭部揺れを軽減させる専用シートを装備
レクサス GX▲2列と3列仕様をラインナップ。3列仕様の2列目はベンチシートとキャプテンシートがセレクトできる
レクサス GX▲従来型より広くなったラゲージルーム。テールゲートはガラスハッチのみの開閉も可能
文/島下泰久 写真/レクサス

ライバルとなるメルセデス・ベンツ Gクラス(現行型)の中古車市場は?

メルセデス・ベンツ Gクラス(現行型)

発売から40年を経て2018年に現行型へとモデルチェンジを果たした、人気のラグジュアリーな本格クロスカントリーモデル。スクエアなスタイルやオーバーフェンダー、丸いヘッドライトなどGクラスらしいスタイルを継承する。

2024年2月上旬時点で、中古車市場には340台ほどが流通。価格帯は770万~2850万円と幅広い。ディーゼルエンジン搭載モデルがほとんどを占めており、4L V8ターボを積むG550は数台程度となっている。また、AMGライン装着車が300台程度となる。
 

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メルセデス・ベンツ Gクラス(現行型)× 全国
文/編集部、写真/メルセデス・ベンツ日本