ランボルギーニ カウンタック LPI 800-4▲カウンタックの生誕50周年を記念し、世界限定112台のみのハイブリッドスーパースポーツとして登場した“新型”カウンタック。シアンをベースに、より洗練された乗り味にチューニングされている

“伝説の名”を復活させてアピールしたかったこととは

1971年に衝撃のデビューを飾ったランボルギーニ カウンタック(クンタッチ)。昨年、その生誕50周年をサンタガータ自身が祝って発表したのが“新型”カウンタックだった。正式名称をカウンタックLPI 800-4(以下、カウンタック800)という。

LPはカウンタック以来、ランボルギーニのフラッグシップモデルに継承されてきたパワートレーンレイアウトを象徴する頭文字であり、最新のアヴェンタドールまですべて“LP”だった。見慣れぬ I の一文字はハイブリッド(イタリア語でイブリッド)のイニシャル。残りは800cv(馬力)の4WDを意味する。
 

ランボルギーニ カウンタック LPI 800-4▲6.5L V12エンジンは最高出力780ps/最大トルク720N・mを発生。34ps/35N・mの電動モーターが組み合わせられ、システム総合は814psとなる

パワートレーンだけを取り出せば、それは限定車シアンと同様の大容量スーパーキャパシタ付きマイルドハイブリッドシステムを備えた6.5LのV12エンジンとISRミッションということになる。

シアンはアヴェンタドールの一つの理想形にして完成形。新型カウンタック800を知る前に筆者自身、そんな結論を下していた。否、新型のデビューを知ったあとでも、シアンと中身は同じだから試乗がかなったとしてもシアンがアヴェンタドールの最終進化形であるという結論が揺らぐことなどないと思っていた。

逆にいうと、“カウンタック”という伝説のネーミングを復活させてまでサンタガータはいったい何を、ランボルギーニファンやクンタッチマニアにアピールしたかったのか、それが気になって仕方なかった。まさか50周年を祝うだけの“思いつき”でもあるまい。単なる思いつきであれば、ミウラ40周年のときと同じように1台のみのコンセプトカーを製作し、本社のミュージアムに飾っておけばよかった。

中身はシアンの流用でガワだけ伝説に似せたシロモノだったなら、“カウンタック”というネーミングを使ったことに対する批判も免れなかったであろう。オリジナルカウンタックを今も愛し続けるファンやマニアへの裏切りでしかない。

カウンタック以降のフラッグシップモデル、ディアブロやムルシエラゴ、アヴェンタドールはLPレイアウトを踏襲するがゆえ、すべて“カウンタック”であったと断じてきた筆者は、もちろんアヴェンタドール派生であるシアンと中身が同じという事実をもってカウンタック800を“カウンタック”であると援護していた。けれども正直、形と名前をオリジナルに寄せただけで中身(=ドライビングテイスト)が同じ車を作られたんじゃたまらないとも思っていたのだ。

とはいえ、新型を試す機会などそうそうない。本社を訪ねて白いデモカーに乗るか、さもなければ日本で納車されたオーナー(12名!)にお願いするしかない。今回、取材に協力いただいた黒いカウンタック800は、昨年発足したサンタガータ本社公認の「ランボルギーニ・クラブ・ジャパン」会長に納車されたばかりの個体であった。
 

ランボルギーニ カウンタック LPI 800-4▲カーボンモノコック構造やフルカーボンのボディなどにより、乾燥重量を1595kgとしている

インスタなどで納車された個体を見ていると派手な色味が多く、ブラックは逆に珍しい。オリジナルカウンタックのフォルムをうまく再現できたことがよくわかる色合いだ。

上等なインテリアマテリアルに気を使いつつ、ゆっくり落ち着いて走り出す。“カウンタック”を駆るといつも身体が勝手に興奮してしまうから、あえてじっくりスタートするのだ。

と、走り出してすぐさま、シアンとはなんだか違うドライブフィールだと思った。すべてのあたりが柔らかいとでも言おうか。シアンはもっと硬派だった記憶が……。交差点で曲がっていくと確信に変わる。シアンではフロントがもっと踏ん張った印象、つまりより大きな弧を描いて曲がっていく感覚があったのだ。対してカウンタックはというと、トレッドの広さもシアンほどには感じさせず、ノーズが向きを変える瞬間もステアリング操作により忠実だった。端的に言って、ずっと乗りやすい。シアンの方が大きな車に乗っているようで、一体感もカウンタック800の方が上だ。

断然に乗りやすい。シアンはもちろん、アヴェンタドールのSやウルティメに比べてもそうだ。シアンとカウンタック800のマイルドハイブリッドはバッテリーではなく電気の出し入れを瞬時に行うことのできるスーパーキャパシタを積んでいる。その特性を活用し、ISRミッションに特有のクセ=シフトアップ時のトルク落ちを電気モーターのトルクで補いならすよう設計されているのだ。その制御自体もシアンに比べて上等な気がした。よりスムーズに加速するからだ。そして、乗り心地もベター。乗れば乗るほどに扱いやすさが身にしみる。

そういう意味ではこのカウンタック800はいっそう成熟し洗練されたアヴェンタドールかもしれない。これなら毎日乗ることができると思う。この扱いやすさはカウンタックという名前から皆さんが想像されるイメージとかなり違うかもしれないが、昔のカウンタックLP400も扱いにくかったミウラの反省から生まれた車で、実際、とても乗りやすかった。
 

ランボルギーニ カウンタック LPI 800-4▲シングルクラッチの7速トランスミッション(ISR)を搭載。0→100km/h加速2.8秒、最高速度355km/hとなる

サーキットでも試乗した。V12を高回転域までぶん回すと、アヴェンタドール以外の何者でもない。やっぱり、シアンよりもアヴェンタドールのテイストを強く感じる。攻め込んだ領域でのパフォーマンスではひょっとするとシアンの方が優れているかもしれない。その代償がオンロードでの違和感だったとすれば納得できる。

やはりカウンタック800こそアヴェンタドールの完成形だった。その乗りやすさは、そのイメージとは裏腹にランボルギーニが昔から目指してきたことの一つである。創始者フェルッチオが目指したのは、爆音を撒き散らす過激なだけのスーパーカーではなかった。理想はスーパーカー界のロールスロイスだったのだ。
 

ランボルギーニ カウンタック LPI 800-4▲メーターパネルには液晶ディスプレイを採用、縦型HDMIタッチディスプレイも備わった
ランボルギーニ カウンタック LPI 800-4▲ヘッドレスト一体型シートを装着。もちろんインテリアはオーナーの要望に合わせた仕立てとなる
ランボルギーニ カウンタック LPI 800-4▲ホイールサイズはフロント20インチ、リア21インチとなる
ランボルギーニ カウンタック LPI 800-4▲六角形の3連テールランプや可動式リアスポイラーを備える
文/西川淳 写真/タナカヒデヒロ 協力/ランボルギーニ・クラブ・ジャパン

自動車評論家

西川淳

大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。

ランボルギーニ カウンタックの中古車市場は?

ランボルギーニ カウンタック

1971年のジュネーブショーでデビューを飾ったスーパーカーを代表する1台。後のフラッグシップモデルも取り入れ続けた、V12エンジンをリアミッドシップに縦置きレイアウトする、パオロ・スタンツァーニによるLPレイアウトを採用。1974年から1990年まで進化を続けながら生産されてきた。

2022年12月現在、中古車市場には9台が流通しており、そのうちクワトロバルボーレ(QV)が5台という流通状態となっている。絶大な人気を保ち続けるモデルゆえに、30~40年も前の車としては現存個体は多いと思われる。ただ、希少価値は年々高まり続けているモデルとなる。
 

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文/編集部、写真/アウトモビリ・ランボルギーニ