ランボルギーニ ウラカン テクニカ▲公道、サーキットを問わずドライビングの楽しさを追求したという、V10自然吸気エンジンをリアミッドに搭載した後輪駆動モデル。約20年間にわたりブランドを支え続けてきたV10ミッドシップカーの集大成というべき1台だ

積極的に操ってこそ真の魅力を味わえる

2014年に登場し、これまで2万台も生産されたランボルギーニ ウラカン。モデルライフが長きにわたったためライバルたちと単純には比較できないにしても、史上最も成功したミッドシップスーパーカーの1台であることだけは間違いない。

そんなウラカンもいよいよ23年いっぱいでその生産を終えようとしている。すでに発表されているとおり、後継モデルにはプラグインハイブリッドシステムが採用される予定だ(エンジン仕様などもすでに決まっているが未発表)。だからこそ大排気量自然吸気マルチシリンダーエンジンを積んだウラカンは、モデル末期であるにも関わらず人気はまるで衰えず、マニアからの熱心な注目も変わることがなかった。

そんなマーケットの期待に応えることはもちろん、先代にあたるガヤルドから数えて約20年間にわたりブランドを支え続けてきた「V10ミッドシップカー」の集大成というべきモデルをサンタガータは開発する。その名もウラカン テクニカ。
 

ランボルギーニ ウラカン テクニカ▲バンパーや六角形のテールパイプなどのデザインが変更されている
ランボルギーニ ウラカン テクニカ▲さらなる軽量化と空力性能向上を実現しつつ、エクステリアデザインを変更。ウラカンEVOと全幅と全高は同じながら全長は61mm延長されているため、より低く幅広く見える

テクニカは量産グレードとして最後のウラカン(厳密には4WDのハイライダー限定車を別に用意)だ。とはいえ、ボディカラーやエアロパーツ、ホイールなど付加物でごまかした、ありがちなファイナルエディションなどではなかった。マスクやリア、サイドウィンドウ周りなど従来モデルとはまるで異なるデザインとしたのだ。マイナーチェンジ時のリスタイリングさえ上まわる手の入れようである。

ウラカン テクニカは後輪駆動だ。そしてV10エンジンの最高出力は640ps。そう、ド派手なスタイリングで注目を浴びたSTOと同じパワートレーンを積んでいるというわけで、性能的にも、そして見た目にもEVO RWDとSTOの間に割って入るモデルである。

それにしても500psオーバーゆえ4WDとして始まったランボルギーニのV10ミッドシップカー史が、640psも発揮するのにこうしてRWDで幕を閉じるとは! 技術の進化、まさに“テクニカ”(=技術)という名がふさわしい。
 

ランボルギーニ ウラカン テクニカ▲ウラカンEVOから採用された、走行中の車両状況をモニターしトルクベクタリングやダンパーなどを統合制御するLDVIを搭載する。これには先の車両挙動を予測して制御してくれるフィードフォワード制御も備わる

国際試乗会はスペインのバレンシアで開催された。まずはサーキットでのテストだ。結論から言うとサーキットでのテクニカは、歴代ウラカン、否、歴代ランボルギーニの中で、最もファンな1台だと思える仕上がりだった。

サーキットを走らせてファンであることとラップタイムが速いということは、素人運転手の場合必ずしもリンクしない。ランボルギーニのスポーツカーには、ストラダーレ/スポルト/コルサという3つのドライブモードが用意されているのだが、ドライビングファンを求めるならオーバーステアを許すスポルトが一番だったし、ラップタイプを縮めたいのであればニュートラルステア傾向のコルサが最適だった。

例えば、見た目にはまるでレーシングカーのSTOをコルサモードで走らせると、それはもう全領域で驚くほど速く、しかもイージーだ。楽しい、楽しくないといった次元を超えている。ラップタイムを重視したい人(さほどいらっしゃらないと思うが)は迷うことなくSTOを買った方がいい。

その点、テクニカはたとえコルサモードであってもドライバーに多くの自由度を与えてくれる。スポルトほど顕著ではないにしろ、明らかに後輪には自由度があってドライバーに積極的なステアコントロールを要求する。これが実に楽しい。コルサモードでファン・トゥ・ドライブな唯一のランボルギーニだと筆者が思ったゆえんである。

もちろん、スポルトモードならさらに楽しい。ウラカン自慢のフィードフォワード制御がいっそう精緻に機能しており、リアが流れ出してもその様子が文字通り手にとるようにわかるから、容易に立て直すことができる。もちろんこれはシャシー制御のたまものだが、ドライブ中にはまるでそう思わないのだ。640psのリア駆動ミッドシップカーを自在に操っているという感覚はなかなか他では味わえない。
 

ランボルギーニ ウラカン テクニカ▲最高出力640ps/最大トルク565N・mを発生する5.2L V10エンジン。最高速度は325km/h、0→100km/h加速3.2秒を誇る

サーキット試乗を終え、午後からはカントリーロードを中心とした200km以上の公道テストとなった。テクニカ用にセットされたシャシーと、STOと全く同じブリヂストン ポテンザはトラック上では、実にコントローラブルなドライブフィールを提供してくれたが、一般道ではさすがにやや硬質な乗り心地で、フラットなのはいいとしてもソリッドさが前面に出てしまう。とはいえ、STOよりは明らかにしなやかに走ってくれ、乗り心地もどちらかというとEVO RWDに近い。個人的には乗り心地を含めてAWD系のドライブフィールを一般道では好む。

それでも前輪が自由になる感覚に満ちたドライビングフィールはRWD系の長所で、テクニカではそれが一層強調されていた。扱いやすく本当に自由自在に操っているという感覚に満ちている。初めての狭い山岳路でどんどん速度を上げていけるのだから、公道においてもウラカン史上、最高のドライビングマシンであると言っていい。

自然吸気V10エンジンのサウンドと、電光石火のギアシフトフィールも素晴らしい。ワインディングロードを軽く攻め込んだときに車内で響くサウンドは、明らかにウラカン歴代で最高の音質だった。特にシフトダウン時のブリッピング音が最高だ。

サーキットも一般道も、積極的に操ってこそウラカン テクニカの魅力を真に味わうことができる。ピュアなV10自然吸気エンジンを積んだミッドシップスーパーカーはおそらく、これが最後となるだろう。テクニカは「ガヤルドとウラカンの20年」を締めくくるにふさわしいモデルとして、人気を博すに違いない。
 

ランボルギーニ ウラカン テクニカ▲テクニカ限定の機能が備わったHMI(ヒューマンマシンインターフェイス)を採用。オーナー向けスマートフォンアプリ(UNICA)への接続もできる
ランボルギーニ ウラカン テクニカ▲軽量ドアやチタン製リアアーチなど、サーキット走行を想定したオプションも用意される
ランボルギーニ ウラカン テクニカ▲特徴的なY字型デザインのバンパーには、タイヤ側面に空気を流して空気抵抗を軽減させるエアカーテンが組み込まれている
ランボルギーニ ウラカン テクニカ▲固定式リアウイングなどを装着し、ウラカンEVO RWDよりリアダウンフォースを35%増加、ドラッグを20%低減させている
文/西川淳 写真/ランボルギーニ

自動車評論家

西川淳

大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。

ランボルギーニ ウラカンの中古車市場は?

ランボルギーニ ウラカン LP580-2

ガヤルドの後継となる2シーターのミッドシップスポーツ。5.2L V10自然吸気エンジンに、LDFと呼ばれる7速DCTを組み合わせる。基本は4WDだが、LP580-2(2016年)やEVO RWD(2020年)といった、運転する楽しさを追求した2WD(後輪駆動)モデルも追加された。

登場から約8年が経過しているため、中古車の流通量は75台以上とスーパースポーツとしては比較的豊富。平均価格は約3100万円だが、初期モデルを中心に2000万円台前半から探すことができる。後輪駆動モデルは20台程度が流通している。
 

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文/編集部、写真/ランボルギーニ