ルノー アルカナ▲2022年5月に日本でも販売が開始されたルノーのクーペSUV・アルカナ。自動車テクノロジーライターの松本英雄氏によるインプレッションをお届けする

日本に初導入されたルノーの“クーペSUV”

昨今、欧州メーカーはプレミアム性をもたせたクーペタイプのSUVを多く登場させているが、ルノーもいよいよ日本で展開する。

その名は“アルカナ”。

ラテン語で“神秘”を意味する「ARCANUM」に由来しているが、この車には果たしてどのような神秘が隠されているのだろうか。

今回、箱根周辺で試乗する機会を得たので、インプレッションをお伝えしたい。

ルノー アルカナ
ルノー アルカナ

まずはデザインを見てみよう。

最近のルノーアーキテクチャーを組み込んだフロントとリアの作り込みに加え、SUVらしい力強く柔らかなボディ断面から、堂々とした雰囲気が漂ってくる。

そして、2WD・FFのパッケージングとは思えないほどリアにも力強さを感じる。

一昔前まで、フランスのモデルには繊細な作りの部分に美学を感じることが多かった。

しかし、最近では堅牢で頑強なデザインに、質感の高いインテリアを組み合わせることが好まれているようで、アルカナもまさにそのような車である。

ルノー アルカナ
ルノー アルカナ

センタークラスターのソフトパッドや、ドアまわりの柔らかな素材とステッチの質感は高い。

また、ルノースポールからの流れを組む“R.S.ライン”とうたっているだけのことはあり、カーボン調のパネルなど、スポーティで高級なエッセンスもしっかり取り入れている。

ルノーを含むフランス車の質が、グングン向上していることがわかる。

しかし、この車の神秘的な部分は表面的なものではなく、“E-TECH HYBRID”というシステムにあるのだ。

エンジンとモーターのマリアージュ

ルノー アルカナ

ハイブリッドのメインボタンを押してシステムを起動する。バッテリー残量が十分なため、エンジンは始動しない。

試乗会場の石畳の上をゆっくり走り出す。ルノーらしく、凹凸をしなやかに受け止める。

ダウンヒルでは、負荷が少ないのでエンジンは始動せずモーターのみで走行する。

路面状況が良いとは言えない一般道であるが、静粛性とフロントの乗り心地はとてもいい。背の高い車であるが、コーナリング時も安定している。

峠を下り終えて高速道路に入り加速した瞬間、エンジンが始動した。「えっ? エンジン始動した?」というくらい、ON/OFFの境目がなくスムーズだ。

高速の合流の時点でのドライブモードは、パワーを抑え燃費を重視したECOモードであるが、不満は全くない。

さらに加速すると、エンジンサウンドが一気に花開く。1.6L NAエンジンとは思えぬほどスムーズで、滑りもない。

同時に、フルハイブリッドらしくモーターの粘りも感じる。中程度の負荷であれば、エンジンと力を合わせ加速をもたらしレスポンスもいい。

高速道路の勾配がある上り車線になり、負荷が高まる。さらにアクセルを踏み込むと、エンジンサウンドが大きくなるわりには加速が鈍化し、ワンテンポほどラグも生じる。

フルハイブリッドといえども、さすがに1.6Lユニットに期待しすぎたようだ。

モータースポーツの技術を採用! ハイブリッドモデルに対するルノーの本気

この車の大きな特徴は、トランスミッションだ。実際に試乗してみると、今まで体験してきたことのない未知のフィーリングに驚く。

このトランスミッションは、ルノーが積極的に参加してきたF1の技術がふんだんに投入され作られたという。

カットモデルを見ると、内部構造はマニュアルのトランスミッションである。ただし、通常のマニュアルミッションにはある歯車と歯車の同期をとるシンクロナイザー機構がない。

代わりに採用されているのが、「ドッグクラッチ」というもの。これは、おもにレース用の変速機に採用されることが多い機構で、素早くロスの少ない変速や軽量ゆえのレスポンスの良さが特徴だ。

モータースポーツのテクノロジーを用いて、最高のハイブリッドモデルに仕立てようとしている姿勢がよくわかる。

このシステムが今後のスタンダードになることは考えにくいが、ルノーのハイブリッドに対するエスプリを感じる1台であることに間違いはない。

ルノーの真髄が、このSUVでも発揮されている。

ルノー アルカナ
文/松本英雄、写真/阿部昌也

【試乗車 諸元・スペック表】
●R.S.ライン イーテック ハイブリッド

型式 7AA-LJLH4MH 最小回転半径 5.5m
駆動方式 FF 全長×全幅×全高 4.57m×1.82m×1.58m
ドア数 5 ホイールベース 2.72m
ミッション 4AT 前トレッド/後トレッド 1.55m/1.56m
AI-SHIFT - 室内(全長×全幅×全高) -m×-m×-m
4WS - 車両重量 1470kg
シート列数 2 最大積載量 -kg
乗車定員 5名 車両総重量 -kg
ミッション位置 フロア 最低地上高 0.2m
マニュアルモード -
標準色

ノワールメタルM、ブルー ザンジバルM、オランジュバレンシアM

オプション色

ブランペルレメタリック

掲載コメント

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型式 7AA-LJLH4MH
駆動方式 FF
ドア数 5
ミッション 4AT
AI-SHIFT -
4WS -
標準色 ノワールメタルM、ブルー ザンジバルM、オランジュバレンシアM
オプション色 ブランペルレメタリック
シート列数 2
乗車定員 5名
ミッション
位置
フロア
マニュアル
モード
-
最小回転半径 5.5m
全長×全幅×
全高
4.57m×1.82m×1.58m
ホイール
ベース
2.72m
前トレッド/
後トレッド
1.55m/1.56m
室内(全長×全幅×全高) -m×-m×-m
車両重量 1470kg
最大積載量 -kg
車両総重量 -kg
最低地上高 0.2m
掲載用コメント -
エンジン型式 H4M 環境対策エンジン -
種類 直列4気筒DOHC 使用燃料 ハイオク
過給器 - 燃料タンク容量 50リットル
可変気筒装置 - 燃費(10.15モード) -km/L
総排気量 1597cc 燃費(WLTCモード) 22.8km/L
└市街地:19.6km/L
└郊外:24.1km/L
└高速:23.5km/L
燃費基準達成 -
最高出力 94ps 最大トルク/回転数
n・m(kg・m)/rpm
148(15.1)/3600
エンジン型式 H4M
種類 直列4気筒DOHC
過給器 -
可変気筒装置 -
総排気量 1597cc
最高出力 94ps
最大トルク/
回転数n・m(kg・m)/rpm
148(15.1)/3600
環境対策エンジン -
使用燃料 ハイオク
燃料タンク容量 50リットル
燃費(10.15モード) -km/L
燃費(WLTCモード) 22.8km/L
└市街地:19.6km/L
└郊外: 24.1km/L
└高速: 23.5km/L
燃費基準達成 -
松本英雄(まつもとひでお)

自動車テクノロジーライター

松本英雄

自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。