ポルシェ 911 カレラ▲911が改良を受け、現行の992型は“後期型”へと進化、まずはカレラ/カレラ GTSが登場した。ベーシックグレードとなるカレラは、3L 水平対向エンジンの改良などが行われている

内燃エンジンはエミッション低減を主眼に改良

2024年5月、2018年に登場した現行911(992型)の後期型、通称992.2がデビューした。まず発表されたのは、911初のハイブリッドモデルである「GTS」とベーシックな「カレラ」だ。

カレラは内燃エンジン車のままだ。ただし、燃費の改善、CO2排出量の削減という課題はすべてのモデルにとって共通であり、カレラは従来の3L 水平対向6気筒ツインターボエンジンをベースとしながら改良が加えられている。

まずエンジンの冷却性能をアップするために前期型ターボ用のインタークーラーを採用。そしてタービンは前期型GTS用のものに置き換えられた。ターボにGTSなんて聞くとさぞかしパワーアップしたように思うかもしれないが、スペック上における最高出力は394psと前期型に比べてわずか9psのアップ。最大トルクにいたっては450N・mと変更なし。カレラクーペの0→100km/h加速タイムは4.1秒(スポーツクロノパッケージ仕様車は3.9秒)、最高速度は294km/h。前期型比でそれぞれ0.1秒、1km/hの向上にとどまっていることから、性能向上よりもエミッションの低減が主眼だったようにもみえる。

縦長のフラップを備えたGTSの顔つきに対して、カレラのそれはかなりすっきりとしている。実はエアインテークの上部に配されていたLEDドライビングライトがなくなっているのだ。その機能は新しくなったマトリクスLEDヘッドライトがひとつで賄うというわけだ。エアインテーク内は横桟が2本走るシンプルなデザインとなっており、冷却性能を高めている。リアは、ナンバープレートまわりなどバンパーの形状を変更。リアグリルに配されたフィンの数を、左右に5枚の計10枚と前期型よりも大幅に減らし、よりリアウインドウと一体化して見えるようにデザインされている。ターボ譲りのインタークーラーはこのリアグリルの真下に配置されている。また、テールランプはポルシェのロゴを囲い込むようなデザインになった。

インテリアデザインは基本的に従来モデルを踏襲する。大きく変わったのは、メーターパネルに唯一残されていた中央のアナログタイプがなくなり、12.6インチのフルデジタルディスプレイになったこと。アナログメーターが恋しい気もしなくはないが、視認性は確実に上がっている。またディスプレイ全面をナビゲーションの画面にするなど、7種類の表示から選択が可能だ。もう1つは、911では伝統的にスマートキーが標準になった前期型でもノブをひねってエンジンを始動する伝統的な所作が踏襲されてきたが、一般的なスタート/ストップボタン式になった。それからGTS、カレラともにクーペボディのみリアシートがオプションになった。これはGTSの軽量化を見越しての措置のようで約7kg軽くなるという。無償オプションで選択できるので、使い勝手を考慮するならあった方がいいだろう。
 

ポルシェ 911 カレラ▲前後バンパーのデザイン変更をはじめ、エクステリアは空力向上も図られている
ポルシェ 911 カレラ▲デザインに大きな変更はないものの、スタート/ストップのボタンやフルデジタルメーターパネルなどが採用されている

スタートボタンを押すと、こともなく3Lフラット6が目覚める。動き出した瞬間からトルクのつきがいいと感じた。また、極低速や坂道で停止しそうになりながらまた走り出すような日常的なシーンでギクシャクすることなくPDKのふるまいが洗練されている。スペイン・マラガでの試乗会に参加するにあたって事前に前期型のカレラ カブリオレに試乗しておいたこともあり、走り出してすぐに違いが感じられた。スペックだけを見ると変わっていないように見えても、そこはさすがにポルシェの仕事というわけだ。聞けば1500回転以下でも300N・mのトルクを発生し、それを超えるとすぐに最大トルクの450N・mを発生するようチューニングされているという。

試乗車はオプションのフックスのデザインをオマージュしたフロント20インチ、リア21インチのホイールに、タイヤはピレリ Pゼロを装着していたが、乗り心地も良好でマラガ郊外の山岳路を軽快に走る。カレラクーペの車両重量は1520kg(DIN)なので、GTSクーペの1595kgと比べれば、やはり軽さを感じる。絶対的な速さではもちろんGTSには敵わないけれど、エンジンがレッドゾーンの7500回転まできっちり吹け上がるさまや、勇ましいウェイストゲートの音に気持ちが高揚する。

以前、911の開発者は、「キャリーケースが収納可能なフランク(フロントのトランク)があって、4シーターで実用性を備えていることが911の大切な要件」だと話していたが、まさに日常生活にスポーツカーを取り込みたいのならカレラは最適だ。しかし、新型に乗るたび感心させられる。つくづく最新は最良なのだ。
 

ポルシェ 911 カレラ▲従来型よりすっきりとしたエクステリア。オプションでエアロキットも用意される
ポルシェ 911 カレラ▲ホイールは19/20インチ(前/後)と20/21インチで複数のデザインを用意。こちらはオプションのカレラ クラシック ホイール
ポルシェ 911 カレラ▲911初のフルデジタルメーターパネルは12.6インチの曲面ディスプレを採用
ポルシェ 911 カレラ▲フロントドライビングライトなど、ライト機能のすべてをLEDヘッドライトに集約している
ポルシェ 911 カレラ カブリオレ▲ソフトトップを備えたカレラ カブリオレもラインナップ。こちらは0→100km/h加速が4.3秒(スポーツクロノパッケージ仕様車は4.1秒)、最高速度は291km/hとなる
ポルシェ 911 カレラ カブリオレ▲ソフトトップは5種類のカラー・仕様から選択可能
文/藤野太一 写真/ポルシェジャパン

ポルシェ 911(992型)の中古車市場は?

ポルシェ 911 カレラ GTS

初代登場から60年を超えるポルシェを代表するRRのスポーツカー。近年は走行性能だけでなく快適性も向上しており、ボディサイズの拡大と相まってGTカーとしての優れた資質を見せる。8世代目となる現行の992型は2019年に登場している。クーペとカブリオレ、タルガを用意。ベーシックモデルからレーシングモデルまでバリエーションは豊富だ。

2024年8月中旬時点で、中古車市場には300台程度が流通、支払総額の価格帯は1400万~7000万円。そのうちの60台ほどがベーシックグレードのカレラとなる。一方、カブリオレは35台程度が流通、支払総額の価格帯は2150万~3800万円。こちらはカレラが10台ほどとなっている。
 

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文/編集部、写真/ポルシェジャパン