ポルシェ 911カレラGTS▲現行の992型にスポーティなキャラクターのGTSが追加された。ターボとカレラSの間に位置するGTSの走りはスパルタン。さらに、新型では国内初のMTモデルが導入された点も注目だ

MTを操る喜びを存分に味わえるスポーティな仕立て

新型ポルシェ 911カレラGTSはステアリング位置を左右から選択でき、さらにクーペのRRモデルには8速PDKだけでなく7速MTも用意される。右ハンドルのPDKしか選べないからと導入初期のタイプ992を見送った人にはきっと「ついに!」という思いに違いない。

試乗したのは、まさにそのクーペのMTモデルだ。エンジンはお馴染みの水平対向6気筒3Lツインターボで、最高出力はカレラSに対して50ps増の480ps、最大トルクは40N・m増の570N・mを発生する。そのうえで、スポーツエグゾーストが標準になり、またそのサウンドをさらに楽しめるよう車内断熱材の一部が省かれているというから面白い。

ターボ用をベースとするサスペンションはスポーツシャシーが標準となり、リアサスペンションには接地性を高めるヘルパースプリングを組み込む。ブレーキ、そしてセンターロック式のホイールもターボからの流用だ。
 

ポルシェ 911カレラGTS▲PASMを備えたGTS専用サスペンションを装着。エクステリアにはサテンブラックを用い、スポーティな雰囲気が高められている
ポルシェ 911カレラGTS▲軽合金製ホイールは、911ターボ同様にセンターロック式を装着する 。最大25kgの軽量化を実現するライトウエイトデザインパッケージもオプションで用意される

まず関心させられたのは、そのエンジンである。全域でトルクが分厚く、低回転域で驚異的に粘る一方で、まるで自然吸気のように回せば回すほどリニアにパワーが高まる特性をも同時に実現しているのだ。まさに、いいとこ取り。はうように進む渋滞を3速キープでこなしたかと思えば、右足に思い切り力を込めてレブリミットの7500rpmに至る高回転域のサウンドとレスポンスに酔わせてもくれるのだから、調律ぶりは見事と言うほかない。
 

ポルシェ 911カレラGTS▲搭載される3L水平対向6気筒ツインターボは、先代GTSを最高出力で30ps、最大トルクで20N・m上回る

7速MTはストロークが詰められていてゲートも正確。しかも、クラッチペダルが踏力こそ重めではあるもののミートポイントが非常にわかりやすく、コントロールしやすい。まさに、MTを操る喜びを存分に味わえる仕立てである。

地面に直接手を触れているかのような饒舌なステアリングフィール、これだけのパワーとトルクを難なく受け止めるトラクションなどフットワークも申し分ない。ただし、フル加速では明確にノーズが浮き上がる、ちょっと懐かしい感覚があったから、これだけ速くなってくると空力的には何らかの押さえがあった方がいいかもしれない。

従来よりもスパルタンさが増して、走りの刺激をストレートに味わせる存在となった新しいポルシェ 911カレラGTS。ますますサーキット志向を強めるGT3と、カレラ/カレラSのギャップをうまく埋める、ストリートで楽しむには最高の911と評することができそうだ。
 

ポルシェ 911カレラGTS▲最新ポルシェコミュニケーションマネジメントを備える室内は、ブラック基調のスポーティな仕立てとされた。カレラGTSの専用装備として、ショートストロークの7速MTが用意されている
ポルシェ 911カレラGTS▲オプションのフルバケットシートを装着した場合、このように後席が取り外されている
ポルシェ 911カレラGTS▲GTSはカレラ以外にも、カレラ カブリオレ、カレラ4、カレラ4 カブリオレ、タルガ4に用意されている
文/島下泰久、写真/デレック槇島、阿部昌也、ポルシェジャパン
島下泰久

モータージャーナリスト

島下泰久

1972年生まれ。自動車専門誌から経済誌やファッション誌などに数多く寄稿、YouTubeチャンネルを主宰するなど幅広く活躍するモータージャーナリスト。「間違いだらけのクルマ選び」の著者でもある

ポルシェ 911 GTS(先代)の中古車市場は?

ポルシェ 911 GTS(先代)

先代となる991型のGTSもスポーティな仕立てで、クーペ、カブリオレ、タルガにラインナップ。ミッションはPDKのみで、前期型は自然吸気3.8L、後期型は3Lターボを搭載している。中古車は40台以上の物件が流通しており、今なら下限は1300万円台から。特に、前期型の最高出力430psを発揮する自然吸気エンジンのフィールは、現行モデルでは味わえないものだ。(写真はカレラ4GTS)
 

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