トヨタ GR86▲プロトタイプの新型GR86&BRZに試乗する機会を得た。自動車テクノロジーライターの松本英雄氏によるレポートをお届けする

雨の中での試乗だがそれはそれで利点がある

低重心の水平対向ユニットを使った純粋のFR! というのが、とにかく世界に類を見ない心意気を感じた初代86とBRZ。

デビュー時に試乗してからかれこれ9年が経過した。

そして、いま目の前にあるのは、プロトタイプの新型GR86&BRZ。ピットレーンに停車して我々の試乗を待っているのだ。

試乗会場は袖ヶ浦フォレスト・レースウェイ。だが、サーキットとしては好ましくない土砂降りの雨である。

しかし、限界値が低いこともあって、素直なコントロール性を確かめられる利点もある。雨の日の静粛性も確かめられるというものだ。

車によっては、晴れた日は気にならなかったけど、ウエット時の高速道路の静粛性が……。なんてモデルもある。

試乗に移る前にデザインの話をすると、全体的に旧モデルのファストバッククーペのデザインを踏襲している。だが、若干角を取りラウンドしたフォルムに変身。大人の雰囲気となった。

特にフロントフェンダーの形状は、他社では見られない工夫が施してあるので、実写を見たときにぜひチェックしてほしい。

リアから見比べてみると、テールは先代より控えめなイメージだが、以前よりも質感の向上を目指したレンズとなっていることがわかる。
 

トヨタ GR86
トヨタ GR86▲左が新型BRZ、右が新型GR86

改めて乗るとピーキーな特性の旧型86

まず、先代との違いをリアルに体感すべく、旧型の86から試乗だ。

久しぶりにFRのMT車に試乗だ。軽くミートさせて走り出すと、昨今のモデルと比べると明らかにトルク感が薄い。

だが、回転を上げるとモリモリとパワーが出てきて、ライトウェイトFRクーペにふさわしいフィーリングである。

しかも、滑りやすい路面ということもあるが、ステアリングとアクセルのコントロールに神経を使う。これはこれでピーキーで楽しい。これから貴重な存在となるFR仕様だ。
 

トヨタ GR86▲ピーキーな性格だがスポーツカーとしての走りは楽しい

大人な仕様になったがスポーツカーらしさは忘れていないGR86

次に新型GR86AT仕様の試乗である。

なんだATか。と正直感じたが、走り出したら先代とは全然違ったフィールがある。

エンジンは先代の2Lから2.4Lに拡大され、ゆとりのある加速とコントロールが可能になった。
 

トヨタ GR86▲235psを発揮する2.4Lユニット

何よりもATとのマッチングがよく、MTモードで走らせなくてもスポーツ走行をしているかのようなシフトセレクトもいい。

そして、エンジンとエグゾーストサウンドも落ち着いたトーンである。加えて、大雨にもかかわらず、隣と会話をできるほどに静粛性が高くなっていることには驚いた。

それと、フロントリアともに接地性が向上し、ボトム時のコーナリングの際には滑りやすい路面にもかかわらず、しっかりととらえる。

これは、先代の86から比べボディ剛性が高くなったことで、しなやかなサスペンションセッティングが可能になったからである。ずいぶん大人の仕様になったと感じた。
 

トヨタ GR86

間髪入れず今度はMT仕様のGR86の試乗だ。

やっぱりMTじゃなきゃ。と思いながら試乗を始める。相変わらず滑りやすい路面ではあるが、出力が増してコントロール性が高くなったエンジンをダイレクトにコントロールすることは、単純に資質を感じ取ることができる。

高速コーナーで負荷かけながら、車体の動きを身体で感じて操作するが、先代に比べて動きがじんわりとしていて安定性の高さがうかがえる。

だが、アクセルを踏み込むと川のような雨の中のアスファルトでは、容易にオーバーステアーが発生しブレイクアウトしそうになる。

86という特有の特性を感じることができるのも事実ではあるが、それにしてもシフトフィールもブレーキフィールも、細かな扱いにもリニアに応えてくれる。スポーツカーらしい一面を見ることができた。
 

トヨタ GR86

先代のスポーティな味付けから一変してGTモデルのような仕上がりのBRZ

GR86から今度はBRZの試乗に移る。

コースコンディションはさらにひどくなった。こちらはMT仕様からの試乗だ。

走り出した瞬間に感じたのは、リアの沈み込みの感じがGR86と違うことである。そして、乗り心地がとてもいい。

高速コーナーも、GR86以上の速度で進入して加速しても、不安のないトラクション性能だ。見た目は似ているが、中身は全くの別物である。

ロール特性もゆるやかに抑えるBRZは、こういった路面では安心感がもてる。フロントも外に逃げたりはせず、確実にきっかけをつくってくれる。

ただし、ステアリングは深く切らないことは必須であるが。これは大人のGTに昇格したような印象だ。
 

トヨタ GR86

4周ほどして最後にBRZのAT仕様の試乗である。

GR86のAT制御もよかったからBRZのATの期待も高い。

ゆとりのトルク特性を上手に使ったシフトコントロールは、サーキットでも切れがよくMTモードであっても不愉快なことはない。この乗り心地のよさが一般道でも感じられれば、ロングドライブでも快適であるはずだ。

先代ではスポーツカー色が強かったが、新生BRZはかなり長いクルージングにも耐えるGTモデルのようなセッティングである。

ちなみにBRZのセッティングは、雪道でセッティングを繰り返したという。なんともスバルらしい一面ではないか。
 

トヨタ GR86

キャラクターの違いを明確にしたGR86とBRZであるが、キビキビとターンインをさせながら走りたいならばGR86である。

一方、GT気分でオールランドのドライブにはBRZという印象をファーストインプレッションで受けた。公道での走りがとて楽しみにさせる国産クーペの誕生である。
 

文/松本英雄、写真/篠原晃一、トヨタ、スバル
松本英雄(まつもとひでお)

自動車テクノロジーライター

松本英雄

自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。