▲3月11日に発売される予定のマークX“GRMN”、すでに予約完売済み ▲3月11日に発売される予定のマークX“GRMN”、すでに予約完売済み

GRシリーズに限定350台でマークX“GRMN”が発売される

トヨタが誇る成熟したセダンといえば、『マークX』である。

そのマークXを、TOYOTA GAZOO Racingが本格的に手を入れてスポーツセダンに仕立てたのが、マークX“GRMN”モデルだ。

このGRMNとは、GAZOO Racing tuned by Meister of Nurburgringの略で、スポーツカー開発の聖地で有名なドイツのニュルブルクリンクへの尊敬の念が込められている。

マークX“GRMN”は2015年に限定100台で発売され、今回2019年モデルとして限定350台が生産された。

サーキット試乗では、最初に2015年のマークX“GRMN”を、その次に2019年モデルの順で試乗した。

2015年モデルに座り込んでクラッチを踏んだ瞬間、軽やかではない重さのあるペダルの踏み心地に男らしさを感じた。

エンジンを始動しただけでも、チューニングカーに乗っているというのがわかる。

とにかくボディとロール剛性を向上させているため、走行中にアクセルでコントロールしなければならないような荒々しい面もあった。

続いて、2019年モデルに乗り込む。

ベースとなったマークXは2016年にマイナーチェンジが行われ、シャシー性能がぐっと高まった。

骨格の素性が向上し、さらに250ヵ所以上ものスポット溶接が追加されている。それにより、4ドアでは苦手な開口部を強靭にたたき直している。

ドアを閉めた瞬間、びっくりするほど剛性が高いことに気づく。金属のバイブレーションが皆無なのである。

そのマークXがベースとなり、2019年モデルのマークX“GRMN”は作られたのだ。

クラッチのキレがリニアで軽くなり、スパッと1速に入る。

ゆっくりとピットレーンを走り、本コースに入ったところで性能を試す。

2015年モデルに比べるとリアのトラクションがよく利くので、ステアリングも安定してコントロールできる。

▲マークX“GRMN”
▲マークX“GRMN”

一気に速度を上げて走行し、そのままカーブに進入する。

高速のままヘアピンカーブにアプローチしても、バケットシートがしっかりしており、姿勢が乱れにくい。

バウンドとリバウンドを繰り返しても、路面状況を細かく捉えることができる。

しっかりした骨格は、サスペンションの取り付け剛性にも反映されており、パワーを加えてもフルブレーキでボトムしてもしっかり受け止めてくれる。

また、取り付けられているダンパーが低速から高速まで実に素直に、サーキットの様々なシチュエーションにおいても速やかに収束していい仕事をしてくれるのだ。

開発担当の方に伺ったら、レクサス ESでも使われているダンパーだと教えてくれた。

電子デバイスを使わずに、ダンパーの性能を発揮できるのは王道のチューニングである。

パワーユニットは、長年使われている成熟したV型6気筒の“2GR-FSE”ユニットだ。

車にはエンジンの力を駆動輪(タイヤ)に分配するディファレンシャルがあり、そこにはギアが付いている。これはファイナルギアとよばれ、一番エンジンの力を発揮しやすいところで使えるようにギア比を変更するものである。路面にエンジンの力をより最適に伝えられるよう、ファイナルギアを調整したのだ。

また、エンジンを制御するコンピュータにも、パワーユニットを知り尽くしたエンジニアによるチューニングが施され、アクセルペダルをぐっと深く踏んだときのトルクのもっていき方が滑らかになった。

これらのおかげでシフト操作時の急な加減速やギクシャク感がなくなり、以前よりも安定した走りが可能になったのだ。

実用セダンであるマークXで、ここまでメーカーがチューニングにこだわるところが車好きにはたまらないのである。

自分の技量を試せる、こんなにいいMTのスポーツセダンはない。

プロ集団が作った、こんなにチューニングされたマークXを500万円代で購入できるのだから、車の価値がわかる人には驚きのバーゲンプライスである。

違いのわかる方御用達が“GRMN”なのである。そしていま国産メーカーがチューニングして販売する最高のFR 4ドアスポーツセダンが、マークX“GRMN”である。

text/松本英雄
photo/尾形和美、トヨタ