レクサス LX▲1996年に初めて北米で発売され、2015年に国内導入されたLXは、これまで約50の国と地域で累計約51万台が販売されてきた。新型は、どんな路面状況でもラクに上質な移動体験ができる車をめざして開発された

新世代プラットフォーム採用で最大200kgも軽量化

NXに続く次世代レクサスの第2弾として新型LXが1月12日に発売された。

設定グレードと税込み価格は下記のとおりである。

・LX600 1250万円
・LX600 OFFROAD 1290万円
・LX600 EXECUTIVE 1800万円

レクサス初採用のGA-Fプラットフォームは、伝統のラダーフレーム方式を踏襲しつつ、最新の溶接技術が用いられるなどして従来型より剛性が20%向上しながら、最大200kgの軽量化を達成している。

スポット打点の増し打ち、ドア開口部およびフロアへの構造用接着剤の採用もボディ剛性アップに貢献。また、厚板と薄板の鋼板をレーザー溶接で結合してプレス成形する世界初の技術を起用。おかげで優れた衝突安全性能、高い静粛性、良好な走りを実現している。

ボディには、高張力鋼板が拡大採用され、ボンネットフード、ルーフ、すべてのドアをアルミ化。ルーフのアルミ化はレクサス初だ。フードは歩行者との衝突時に衝撃を緩和する構造に仕上がっている他、中央が凹状にデザインされていて前方視界に配慮。

パワートレインや燃料タンクを守るために優れた堅牢性も確保されており、9本のクロスメンバーが最適配置されている。
 

レクサス LX▲ラダーフレーム方式のまま一新されたプラットフォームは、剛性が約20%向上した。ボンネットフードや前後ドアに加え、ルーフもレクサスで初めてアルミ化されて最大200kgもの軽量化に成功

パワートレインは、V8自然吸気エンジンから3.5L V6ツインターボにダウンサイジングしながらも最高出力は415psに、最大トルクは650N・mに向上した。直噴インジェクター付きD-4STの採用、ロングストローク化、バルブ狭角の最適配置による高速燃焼が効果を発揮している。

ウェイストゲートバルブには、軽負荷時にポンピングロスと残留ガスを低減することで燃費向上に寄与し、高負荷時には開閉を緻密に制御して加速レスポンスを向上する電動タイプを採用。

冷却ファンは、電子制御方式に変更され、従来のサーモ式では実現できなかった運転状況に応じたファン回転数の制御が可能になった。その結果、静粛と振動の改善が図られ、エンジンの暖機性向上と摩擦損失の低減を実現。

燃料蒸発ガスのパージ経路は、下流側に加えて上流側にも設定されており、燃料タンク内で発生する蒸発ガスをエンジン内で燃焼させて大気への流出防止が図られている。

また、車体の傾きによってオイルレベルが極端に下がった場合に警告灯が点灯してドライバーに知らせるオイルベルセンサーを採用。登降坂および、左右の傾き45度までオイル供給性能が確保されている。

10速ATは、発進時を除くほぼ全域でロックアップしてダイレクトなフィーリングをもたらす。ワイドレンジ化で高速燃費や発進加速、オフロード性能などが向上。なお、パワートレインは後方に70mm、下方に28mm移されて前後重量配分が改善された。
 

レクサス LX▲415ps/650N・mを発揮する3.5L V6ツインターボ。筒内噴射とポート噴射が使い分けられるD-4STが採用されている。WLTCモード燃費は8.0km/L

前輪サスペンションは、ハイマウント・ダブルウィッシュボーン式で、ジオメトリーとスプリングのバネ定数を最適化することで優れた安定性と乗り心地を両立。オフロードでの走破性を高めるために、ストロークは従来型より15mm増やされた。

後輪サスペンションには、トレーリングリンク車軸式が継承されているが、アームとショックアブソーバーの配置および特性が見直されて安定性と乗り心地が向上。リバウンドストロークは従来型より20mm増加。併せてショックアブソーバーの位置を変えることでタイヤの上下動に追従しやすくなり、路面からのショックと振動を吸収しやすくなった。

車高の調整が行えるAHC(アクティブ・ハイト・コントロール・サスペンション)には、ガス・油圧併用バネと金属バネを踏襲。前輪に加えて後輪にも装備されて車高調整に要する時間が短縮された。ポジションは「ノーマル」「Hi1」「Hi2」と乗降用の「Low」で、自動的に調整される。ピッチやロールといった姿勢変化にも対応しており、随時バネレートが最適化されて旋回や加減速時の姿勢安定にも貢献する。

AVS(アダプティブ・バリアブル・サスペンション)は、リニアソレノイドバルブ方式に変更され、減衰力の切り替え時に優れた応答性を実現。段差を乗り越えるときは減衰力が低めに設定されて快適な乗り心地が、ステアリング操作時には高めに設定されてフラットで安定した姿勢が保たれる。

パワステは、従来の油圧式からキメ細かいチューニングが可能な電動式に変わった。操舵に応じてリニアに応答し、取り回しの良さや負荷軽減に寄与。

ブレーキには、ペダル操作量に応じて最適な制動力が確保される電子制御タイプを採用。オフロードでは空転している車輪に対して細やかな制御が行われて高い走行安定性と安心感が提供される。

オンロードとオフロードの両方で高い性能を発揮するため、レクサス初の22インチタイヤが設定されている。18インチ、20インチを含めてすべてのタイヤでバネ下重量が軽減され、転がり抵抗の最適化で燃費向上にも寄与。

2850mmのホイールベース、アプローチアングルやデパーチャーアングルなどの対地障害角、44度の最大安定傾斜角、45度の登坂能力、最大700mmの渡河性能は従来型から継承されている。
 

レクサス LX▲アプローチアングル、ランプブレークオーバーアングル、デパーチャーアングルは従来型と同等を確保。最大渡河性能は700mmに達して高い走破性を誇る

「AUTO」「DIRT」「SAND」「MUD」「DEEP SNOW」「ROCK」から選択できるマルチテレインセレクトは、従来のブレーキ油圧に加え、駆動力とサスペンションも統合制御することで選択したモードに応じて最適化。従来はローレンジ(L4)のみで作動したが、新型ではハイレンジ(H4)でも使えるようになった。

走行中の路面状況を推定してブレーキ油圧や駆動力、サスペンションを最適制御するAUTOモードはレクサス初採用で、ドライバーが自らモードを切り替えることなく走破性能を引き出すことが可能になった。

なお、前後輪ともに走破性を高める電動デフロックが備わっている。

クロールコントロールは、5段階の速度設定に合わせて駆動力とブレーキ油圧を自動制御。オフロードを走る際、ドライバーはアクセルやブレーキを操作することなく、ステアリング操作のみに集中できる。ブレーキ油圧制御が改善されて使用時の静粛性が向上した。

ダウンヒルアシストコントロールは、エンジンブレーキでは十分に減速できない急な下り坂で四輪のブレーキ油圧を自動的に制御し、タイヤをロックさせることなく安定して下れるようサポートする。
 

高い静粛性でくつろげる室内にレクサス初の2画面ディスプレイ

エクステリアは、力強さを感じさせるとともに洗練された面質、細部にこだわった造形をめざして開発された。

フロントマスクでは、新しいスピンドルグリルの表現として7組のフローティングバーで立体形状が作り出され、フレームのないシームレスな構成に仕上がっている。また、サイドラジエターグリルは冷却性能を確保する大きな開口部と整流効果の高い形状を採用。

ヘッドランプは、L字型のデイタイムライト兼ポジションランプが立体形状に進化し、二重インナーレンズによって奥行き感が演出されている。光源であるLEDからの光を高速回転するブレードミラーに照射し、反射した光がレンズを介して前方を照らすブレードスキャン式アダプティブ・ハイビームを新採用。従来のアダプティブ・ハイビームより細かい遮光が可能で、対向車や先行車を眩惑することなく歩行者や標識を認識することができる。
 

レクサス LX▲立体的なフローティングバーによるスピンドルグリルと奥行き感を表現するヘッドランプが配されたフロントマスク。左右のラジエターグリルは冷却性能確保と整流効果を併せもつ

リア中央に配置されたブランドマークは、従来のL字マークからLEXUSのロゴに刷新され、次世代レクサスをアピール。また、リアコンビランプはショルダーからシルエットに連続するL字形状と一文字が組み合わされ、レクサスとして一貫性のあるデザインに仕上がっている。
 

レクサス LX
レクサス LX▲L字形状と横一文字が組み合わされたリアコンビランプ、LEXUSのロゴが次世代レクサスであることをアピールする。ボディサイドを貫く水平軸と絞り込まれたリアクオーターピラーが強いカタマリ感を表現

フロントシートは、優れたホールド性と快適な乗り心地を実現すべく、クッションパッドに安定性と圧力の分散性の高い素材を採用。

2列目シートは、サイドサポートの高さとクッション性が最適化されてホールド性が向上した。シートバック中央部は前倒しすればカップホルダー内蔵のアームレストとして使える。また、ドアトリムのショルダー部にソフトパッドが配され、上質感と安心感を表現。クッションのコーナーには丸みが設けられていて足の出し入れがスムーズに行える。

7人乗り仕様の3列目シートは、電動リクライニングが可能になった。レクサス初のマルチシートオートアレンジにはフロントシートを含む、すべてのシートが動いて広大な荷室が作り出されるラゲージスペース拡大機構、2列目シート肩口のスイッチでシートを電動で折りたたみつつ跳ね上げて3列目シートへの乗降性を容易にする、ウォークイン機構が含まれている。
 

レクサス LX▲乗降性も考慮した2列目シート、7人乗り仕様に用意される電動式3列目シートが備わるインテリア。シート表皮は全車セミアニリン本革で、複数のカラーから選べる

室内には、造形と素材を際立たせる64色のイルミネーションを採用。自然現象を見た際の感情や気持ちの変化を表現した14色の推奨カラーだけでなく、カラーパレットからその他50色が自由に選べる。

コックピットには、「Tazuna Concept」が反映され、ヘッドアップ・ディスプレイからメーターへとつながるように走行情報表示系が配置されている。また、インパネは二段構成で水平基調と広がり感を演出。下段は左右のドアグリップまでつながった造形で安心感をもたらす。

全車標準装備の指紋認証は、スタートスイッチを押した際、車両に登録された指紋情報と一致しなければエンジンが始動しない機構で、レクサス初採用となる。

スイッチ類はダイヤル、トグル、プッシュの操作方法と形状に変化をつけることで直感的に使えるよう作り込まれた。これらにより、オフロード走行中の押し間違いを低減。なお、12.3インチ画面の上端は水平に設計されており、悪路走行中にドライバーが平衡感覚を把握できるよう考慮されている。
 

レクサス LX▲水平基調にデザインされていて室内に広がり感をもたらすインパネ。二段構成のうち、下段は左右のドアグリップへと造形がつながっていて乗員を包み込む。レクサス初のデュアルディスプレイも採用

インパネには、上下2画面のデュアルディスプレイをレクサス初採用。上部の12.3インチ画面にはナビやオーディオが表示され、オフロード走行用のマルチテレインモニターを兼ねる。下部の7インチ画面には空調、マルチテレインセレクト、ドライブモードセレクトなど走行系の情報が表示される。

また、デバイスを連携させて使用できるよう、Apple CarPlayとAndroid Autoに対応。OTAソフトウェアアップデートにより、Apple CarPlayはWi-Fiでの無線接続にも対応する予定だ。

ナビには、車載情報とクラウド上の地図情報が活用されるハイブリッド型を採用。交通情報や駐車場の満空情報がリアルタイムで取得でき、G-Link契約中は常に最新の地図データが使用できる。また、DCMを活用してインターネットに接続し、ウェブサイトも閲覧できる。なお、ナビ画面は好みに合わせてカラーと書体が5種類から選べる。

音声認識機能はステアリングスイッチだけでなく、ディスプレイ画面のアイコンや音声でも起動できる。会話するような自然な発話で操作できる。

アクセルペダルとブレーキペダルの間隔は従来型より広がり、正確な操作をサポート。また、アクセルペダルはアームの剛性アップとショートストローク化でレスポンスと操作性が向上した。

自車の周囲を4つのカメラでサポートするマルチテレインモニターは、フロント、左右、リアに設置されたカメラの映像が12.3インチ画面に映し出される。また、アンダーフロアビューに切り替えると手前で撮影した映像が映し出され、タイヤ位置とともに床下の状況が確認できる。後輪周辺をクローズアップして大きく表示する機能も加わった。

同じく、後退時に手前で撮影した映像を合成する世界初のバックアンダーフロアビューも設定されている。
 

レクサス LX▲手前で撮影された映像が上部の12.3インチ画面に映し出され、自車の床下の状況が確認できる機能も備わるマルチテレインモニター。画面上端は水平に設計されていて平衡感覚をつかむ手がかりにもなる

レクサス・プレミアムサウンドシステムは、大容量のサブウーファーを含む10スピーカーで構成されている。また、マークレビンソン・プレミアムサラウンドサウンドシステムにはレクサス最多の25スピーカーが採用されており、天井にもスピーカーが配されて立体的なサウンドがもたらされる。どちらのサウンドシステムもハイレゾ音源に対応。

スマホアプリのMy LEXUSは、改良とデザインの見直しによって使い勝手が向上した。燃料の残量や走行距離が確認でき、乗車前に空調を作動させることもできる。任意の期間、エンジンを始動できなくする機能も用意されており、長期の旅行や出張中のセキュリティを高められる。

レクサス・セーフティシステムプラスは、単眼カメラとミリ波レーダーの性能が向上し、自転車や夜間の歩行者、交差点右折時の対向車と横断歩行者も検知可能になった。

また、車線内で操舵をアシストする緊急時操舵支援と低速時加速抑制も加わり、同一車線内での操舵を支援するレーントレーシングアシストは支援範囲が拡大されて途切れにくくなった。レーダー式クルーズコントロールにはカーブの大きさに合わせて減速する速度抑制機能を採用。

ドライバー異常時対応システムは、無操作状態が続いたときに音と表示で操作を促し、それでも反応がないときにはハザードランプとホーンで車外に異常を知らせながら減速して停車する。停車後はドアロック解錠とヘルプネットへの自動接続によってドライバーの救命救護に寄与する。

上質で静かな室内空間を実現するため、フロントウインドウと前後ドアのウインドウには、レクサス最厚である5.76mmのアコースティックガラスが使われている。エンジンルームには、遮熱性も有するダッシュアウターサイレンサーと隔壁を採用。また、インパネ裏にも吸音材が配置されるなど、適材適所の防音措置によってロードノイズとエンジンノイズが低減されている。

エンジン系と吸排気系のこもり音を低減するアクティブノイズコントロール、ドライブモードセレクトでSPORT-SおよびS+を選んだ際に臨場感あふれる加速感を演出するエンジンサウンドエンハンスメントも採用されている。
 

最上の移動空間を実現する4人乗りモデル登場

オンロードからオフロードまで快適に過ごせる機能が備わるEXECUTIVEは4人乗り仕様。専用リアシートは最大48度のリクライニングと座面角度の調整によって良好な前方視界と最大1000mmのレッグスペースが確保できる。

さらに、助手席後面のオットマンを展開すれば身体への負担が少ない姿勢で座れる。クッションとシートバックには振動吸収性に優れたソフトウレタンが使われており、オフロード走行時の不快な振動も抑えられる。

後席用の機能と装備が集中管理できるコントロールパネルは角度にこだわり、パームレストを装備することで使いやすさに配慮。スマホのワイヤレス充電スペースは誤操作防止とリクライニング時の視認性を考慮した位置に設けられている。

後席専用コンソールの足元には小物入れ、USB&HDMIソケットを設定。また、大型コンソールボックスにはDC電源、USBソケット、ヘッドフォンジャックなどが配されている。フタ付きのカップホルダーはテーブルとして使うこともでき、表面にはキズが付きにくい自己治癒塗装が施されている。

専用の読書灯や天井エアコン吹き出し口、寒い季節に重宝する足元エアコン吹き出し口、専用オーディオシステムも標準装備。
 

レクサス LX
レクサス LX▲EXECUTIVEには左右独立の専用キャプテンシートが採用されている。また、中央には各種機能が操作できるコントロールパネルと大型コンソールボックスが備わっている

もうひとつの新グレードであるOFFROADには走破性を高める3つのデフロック(フロント・センター・リア)が装備されている。外観には18インチタイヤ、マットグレー塗装のホイール、ブラック塗装のホイールアーチモールなどが採用され、力強さを表現。
 

レクサス LX▲3つのデフロックに加えて18インチタイヤやマットグレー塗装のホイールも装備されて力強さが表現されているOFFROAD
文/マガジンX編集部、写真/レクサス