TT ▲新車で買うと、なんだかんだ総額600万円以上になり、マイナーチェンジ後の後期型は中古車でもなかなかのプライスとなる現行型アウディ TT。しかし、「現行・前期型の中古車」であれば総額200万円台後半から普通に狙えること、ご存じですか?

前期型と後期型の差は内外装デザインが少し違う程度?

「シュッとした感じの輸入クーペ」といえば、やはりドイツのアウディ社が作っている「現行型TTクーペ」がその最右翼でしょう。そのクールなたたずまいには憧れを禁じえません。

しかし、クールでシュッとしてる輸入車だけあってお値段は高く、新車で買うとなると一番安いやつでも518万円(しかも車両本体だけで……)。2019年5月に行われたマイナーチェンジ後の後期型中古車でも、支払総額は軽く400万円を超えます。個人的にはなかなか厳しいお値段です。

ただ、同じ現行型アウディ TTでも「前期型で良し!」と考えるなら、実は総額280万円程度から、まずまず好条件な1台が狙えたりもします。

現行型 アウディ TTの前期型と後期型の違いは、ざっくり言いますと「内外装が少し違う」ということと、「ベースグレードのエンジンとトランスミッションが少し違う」ということ、そして「セットオプションの内容が少々異なる」といった程度。つまり「そう大きくは変わらない」ということです。

であるならば、現行・前期型アウディ TTの中古車というのは、コンディションの良いものを選ぶことができたなら「かなりお買い得」なのではないでしょうか?

とはいえ、実際のところどうなのか。次章以降、もろもろ検討してみることにしましょう。
 

TT▲エクステリアだけでなくインテリアのデザインとムードもシュッとしてる(カッコいい)のが歴代アウディ TTの特徴。現行型は「バーチャルコックピット」の採用により特にシュッとしてるかも

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アウディ TT(現行・前期型) × 全国
 

モデル概要:初代からの基本フォルムを踏襲しつつプラットフォームを刷新

アウディ TTの初代モデルが発売されたのは1999年。俗に2+2クーペといわれるボディ形状を採用しているスポーティクーペ(※2+2クーペの他に2人乗りのオープンモデル「TTロードスター」もありますが)。

乗車定員は一応4名であるものの、成人がこの車の後席に座り続けるのはきわめて困難ですので、後席は「手荷物を置くスペース」と割り切った方がいいでしょう。

現在販売されているTTは、2015年8月に発売された通算3代目。初代から続くデザインイメージを踏襲しつつ「MQB」という新世代プラットフォームを採用し、ボディフレームの上部などをアルミとするコンポジット構造のモノコックに変更。

外板パネルもすべてアルミ製にしたこともあって、2Lターボの4WDモデルでいうと従来型よりも30kg軽量化されました。

クーペのボディサイズは全長:4180mm × 全幅:1830mm × 全高:1380mm。エクステリアデザインは、従来型以上にワイドとなったシングルフレームグリルや、よりシャープなデザインとなったヘッドランプ、フロントグリルからボンネットに移されたフォーシルバーリングス(アウディのブランドロゴ)などにより、従来型以上に「クールでシュッとした感じ」に仕上がっています。
 

TT▲キリリとした目元が特徴となるエクステリア。2Lターボ車はLEDヘッドライトを標準装備
TT▲全幅は1830mmとまあまあ広めだが、全長は4180mmとやや短めであるため、都市部での取り回しで苦労するシーンはほとんどないはず

また、現行型ではLEDヘッドライトが標準装着されていますが(※1.8 TFSIを除く)、ハイビーム使用時に、カメラが対向車や前走車を検知して最適な配光パターンに切り替える「マトリクスLEDヘッドライト」もオプションとして設定。これには、流れるように点滅するウインカーである「ダイナミックターンインディケーター」も備わります。

インテリアはメーターパネルに12.3インチの液晶ディスプレイを配置し、そこに速度計や回転計だけでなく地図表示なども行う「アウディバーチャルコックピット」が新採用されました。
 

TT▲「バーチャルコックピット」は全車標準装備。写真は左ハンドルの本国仕様で、日本には導入されていないMT車

2019年5月以降の後期型は、前期型ではオプション扱いだった「Sラインパッケージ」を標準化し、バンパーとサイドスカート、リアディフューザーのデザインを少々変更。シングルフレームグリルにもマットブラックの立体的なハニカムメッシュパターンが採用されましたが、逆に言うとエクステリアの変更点はその程度。

インテリアも、前期型ではSラインパッケージのみに設定されていた「エクステンデッドアルミニウムルックインテリア」を他のセットオプションにも設定した他、「レザーパッケージ」の内容をほんの少々変更。そして「Sラインパッケージ」のシートをSスポーツシートに変更した程度です。
 

TT▲こちらが2019年5月以降の後期型。わかりやすい違いといえば、フロントグリル内がハニカムメッシュになったことぐらいかも
 

エンジンタイプ・走行性能:全車直噴直4ターボ。駆動方式はFFとクワトロ(4WD)

現行型アウディTTの前期型に搭載されたパワーユニットは、発売当初のベースグレードであるFF車「2.0 TFSI」も、上級グレードである4WD車「2.0 TFSI クワトロ」も、最高出力230psの2L直噴直4ターボエンジン。

2016年8月からFF車のベースグレードは2Lターボに代わって1.8Lターボを積む「1.8 TFSI」に変更され、こちらが搭載するのは最高出力180psの2L直噴直4ターボエンジンです。トランスミッションは2Lターボ車が6速Sトロニック(DCT)で、1.8Lターボ車は7速のSトロニックになります。
 

TT▲前期型/後期型ともに採用されている直噴直4ガソリンターボエンジン。排気量は2Lが基本だが、2018年途中から1.8L版も追加された

「2.0 TFSI クワトロ」の4WDシステムは従来どおり、FFをベースに、必要に応じて電子制御油圧多板クラッチが後輪にトルクを伝えるという方式。しかし、現行型では走行状況などに応じて後輪へのトルク配分を増やしたり、逆に後輪へのトルク配分をカットする機構も搭載されました。

ドライバーの好みに応じてエンジンやトランスミッション、パワーステアリングの特性を選択できる「アウディドライブセレクト」は全車標準装備。その他、アダプティブダンパーシステムである「アウディ マグネティックライド」も、プラス16万円の受注生産オプションとして設定されていました。

2019年5月にマイナーチェンジを受けた後期型では、最高出力180psの1.8Lターボを積む「1.8 TFSI」が廃止され、代わって同197psの2Lターボエンジンを搭載する「40 TFSI」が新たなFFベースグレードになりました。

しかしクワトロ(4WD)の方は、車名は「45 TFSI」に変わったものの、2L直噴直4ターボの型式とスペックは前期型とまったく同じです。
 

TT▲車両の特性をオート/コンフォート/ダイナミック/エフィシェンシーの各モードに設定できる「アウディドライブセレクト」は全車標準装備で、MMIナビゲーションとの併用で「インディビジュアルモード」も設定可能
 

先進機能・安全装備:ACCは前期型・後期型ともに設定なし

運転支援システムの類は、現行型TTの若干弱い部分かもしれません。

「アシスタンスパッケージ」などのパッケージオプションにクルーズコントロールとリアビューカメラ、アウディ パーキングシステム、アウディ ホールドアシストといったあたりは含まれており、多くの中古車がそれを装着済みではあります。

しかし、今どきは定速のクルーズコントロールではなくACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)が付いていてほしいというのが正直なところ。まぁドイツ本国にもACCの設定はないようなので、致し方のない話ではあるのですが……。

ちなみに、ACCは2019年5月以降の後期型でも設定されていませんので、ここも「前期型で十分なのでは?」と思わせるポイントのひとつです。
 

TT▲車線変更が危険と判断された場合、ドアミラーのLED表示を使って警告する「アウディサイドアシスト」。アシスタンパッケージアドバンストというパッケージオプションに含まれている
 

中古車のオススメ:お手頃ゾーンでの狙い目は総額300万円前後の1.8 TFSI、または2.0 TFSI

「なるべく手頃な予算で、しかしなるべく状態の良い現行型TTが欲しい」と考える場合のオススメは、総額290万~340万円付近のゾーンにあるFF車、すなわち「1.8 TFSI」または「2.0 TFSI」です。

年式でいうと2015~2017年式、走行距離でいうと3万km台から4万km台の物件が該当します。
 

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アウディ TT(現行・前期型) × 「1.8 TFSI」 & 「2.0 TFSI」
TT▲車名に「クワトロ」と付かない1.8 TFSIまたは2.0 TFSIの駆動方式はFF。現行前期型の場合、2.0 TFSIと2.0 TFSI クワトロはまったく同じエンジンを搭載した

1.8 TFSIと2.0 TFSIは文字どおりターボエンジンの排気量が1.8Lと2Lで異なるわけですが、中古車価格にさほどの違いはなく、両者ともだいたい総額230万~370万円といったところ。コンディションやオプション装備の内容に応じて「安めの2Lもあるし、高めの1.8Lもある」みたいな状況です。

走行フィールに関しては、さすがに2Lターボである2.0 TFSIの方がパンチがあるというかトルクの厚みを感じるのですが、1.8Lターボでも何ら不足はありませんので、エンジン性能に関しては「どちらでもいい」と考えてOKなはずです。

しかし、エンジン性能以外にも1.8 TFSIと2.0 TFSIは以下のような違いがありますので、そこについての好みは、いちおうあらかじめ確認しておくべきでしょう。

・2.0はLEDヘッドライトで、1.8はバイキセノンヘッドライト(※オプションのマトリクスLEDヘッドライトは装着可)
・1.8はリアの「流れるウインカー」がオプション
・ホイール径は2.0が18インチで、1.8は17インチ(※18インチのオプション設定あり)
・1.8はフロントパワーシートの設定なし
・1.8はアウディパーキングシステム(リア)の設定なし(※アシスタンスパッケージ装着車はフロント/リアが装着される)

オプションの内容によっていろいろ変わるためややこしいのですが、上記を確認したうえで、あとは「ご縁とコンディション優先で1.8か2.0かを決定する」という決め方でよろしいかと思います。

現行型アウディ TTの前期型の場合、FFの2.0 TFSIも4WDの2.0 TFSI クワトロも搭載エンジンは同じで、どちらも最高出力230psの2L直4直噴ターボです。しかし、「それでも自分は、せっかくアウディに乗るなら“クワトロ”が欲しい」と考える方もいらっしゃるでしょう。

その場合は前述の予算に40万円ほどプラスした「総額330万~380万円」のゾーンで、2016~2017年式の2.0 TFSI クワトロを探すことになります。
 

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アウディ TT(現行・前期型) × 「2.0 TFSI クワトロ」

こちらも、この予算で走行距離3万km台から4万km台の物件が見つかるはずです。

流通台数はFF車より若干少なめですが、極端に少ないわけではないため、普通に吟味と取捨選択を行いながらの検討が可能です。
 

TT▲走行状況に応じて後輪へのトルク配分などが調整されるクワトロシステムを備えた2.0 TFSI クワトロ
 

以上のとおり、現行・前期型のアウディ TTとは「後期型との違いがないわけではないが、さほど大きな違いはない」という存在であり、なおかつそれが、後期型の中古車よりも軽く100万円はお安い予算で狙えるという、コスパに優れる選択肢です。

シュッとした輸入クーペを「比較的お手頃な予算で入手してみたい」とお考えの方は、ぜひご注目ください。
 

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アウディ TT(現行・前期型) × 全国
文/伊達軍曹 写真/アウディ
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。