トヨタ タウンエースバン(現行型)▲短いボンネットが付いたセミキャブオーバー・スタイルが可愛らしい、タウンエースバン/ライトエースバン

中古車価格も維持費もリーズナブルな隠れた「バン」

配送業や機材を運ぶ仕事をしている人にとって必要不可欠な存在といえば、トヨタ ハイエースなどの箱型貨物登録車……通称「バン」。

最近では趣味の道具を積載する、キャンピングカーに架装するなどしてプライベートでバンを活用する人も少なくない。

けれど、狭い道での取り回しや駐車スペースなど、日本の交通事情を考えると、ハイエース級のバンだとちょっと大きすぎる……という人も多いだろう。

ならば、軽自動車タイプの通称「軽バン」は? うーん、それじゃちょっと小さすぎて荷物があまり積めないし、レジャーで使うにしてもパワー不足なんだよな……。

そんなニーズに応えてくれるのが、今回オススメしたいトヨタ タウンエースバン/ライトエースバンの存在だ。

ちょっぴりマニアックな車種だけれど、バンとしての実力は十分。ボディサイズは乗用コンパクトカー並みの小ささだが、ビジネスカーとしての積載能力は長年、プロたちに認められてきたところである。

さらなる魅力は、中古車市場でハイエースなどバンの価格が高止まりしているのに対して、タウンエースバン/ライトエースバンの中古車平均価格は130万円前後とリーズナブルなこと。

そのうえバン登録だから維持費も安い! 2台目のマイカーとして、趣味の車として購入する際にもありがたいところだ。

この記事では、3代目タウンエースバン/ライトエースバンがどんな車なのかを改めて確認しつつ、中古車市場の現況を見ていこう。
 

タウンエースバン・ライトエースバン ▲後席をタンブルさせれば、広大な荷室空間が生まれる。両側スライドドアなのでボディサイドからも積み降ろししやすい

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【モデル概要】ハイエース未満・軽バン以上のちょうど良いサイズ

タウンエースバン・ライトエースバン ▲AT、MTともインパネシフトを採用。運転席から助手席に移動するのも楽ちん

タウンエースバン/ライトエースバンは、小型貨物(4ナンバー)登録のビジネスバンとして専用に設計された車種。4代目となる現行型は2008年2月に登場した。

ボディサイズは全長:4045mm×全幅:1665mm×全高:1900mmと非常にコンパクト。背丈こそ高いが、全長、全幅はトヨタ アクアとほとんど同じサイズだ。狭い道で運転しやすいのは明らかで、最小回転半径もわずか4.9m(2WD)となっている。

車体はコンパクトでも“本業”である積載性能は優秀で、2名乗車の場合で奥行き2045mm×幅1495mm×高さ1300mmの広い荷室空間を確保。車中泊は楽々、サーフボード、マウンテンバイクなどの長尺物も無理なく積めるサイズだ。最大積載量は2名乗車時で750kg(4WDは700kg)、5名乗車時で500kgとなっている。

多くの荷物が積めるスクエアな車内空間、大きく開く両側スライドドア、積み降ろし作業がしやすい低床設計になっているのもポイント。運転席&助手席も素早く、楽に乗り降りできる高さに座面がある。とことん、プロユースを考えた作りとなっているのだ。
 

タウンエースバン・ライトエースバン ▲シート表皮はクロスとビニールを組み合わせたもの。汚れても掃除しやすいのが利点

搭載されるエンジンは1.5L 直4ガソリンのみ。トランスミッションはともにインパネシフトとなる5速MTと4速ATの2種類、駆動方式は2WDの他にセンターデフロック機構付きフルタイム4WD(2010年7月~)も用意される。

なお、エンジンについては2020年6月のマイナーチェンジで3SZ-VE型から2NR-VE型へと換装され、燃費性能が向上している。

エンジンを前席の下に搭載するセミキャブオーバー型だが、ガソリンエンジンゆえに振動や騒音はあまり気にならない。仮に乗用車から乗り替えたとしても慣れなければいけないのはインパネシフトの操作とやや硬めの乗り味くらいで、かつてのバンに比べると運転はかなり楽と言って良いだろう。
 

タウンエースバン・ライトエースバン ▲エンジンが新型になり、「スマートアシスト」が装備された2020年6月のMCはタウンエースバン/ライトエースバンの歴史で大きな転機となった

グレードは「GL」と「DX」の2種類。

上位グレードの「GL」にはカラードバンパーやリモコンキー、パワーウインドウなどが装備される。ビジネスバンゆえ、標準装備される快適装備はリクライニング&スライドシート、マニュアルエアコン程度といったところで、乗用車に比べると装備内容は著しく簡素。

仕事で使うには十分だが、プライベートで使うなら必要に応じてカスタマイズ必至だろう。シンプルな内装ゆえに手を加えやすいのも長所のひとつと言える。

ちなみに、タウンエースバンとライトエースバンの違いは、かつて存在した販売チャンネルのみで、設計や装備内容は全く同じ。

もともとタウンエースバンはトヨタカローラ店、ライトエースバンはネッツ店というすみ分けがなされていたが、2019年に販売チャンネル制度が廃止されたことに伴い、2020年6月をもってライトエースバンの生産を終了。タウンエースバンに一本化された。

デビュー翌年の2009年11月に後席にシートベルトを追加、2018年5月にイモビライザーを追加するなど、現在まで14年間のモデルライフを通じて何度かマイナーチェンジが実施されている。

エンジンが換装された2020年6月には「衝突警報機能/衝突回避支援ブレーキ機能」「車線逸脱警報機能」「ブレーキ制御付き誤発進抑制機能」をパッケージした「スマートアシスト」が標準装備された。
 

 

【現在の中古車状況】初度登録から5年前後の物件が豊富

タウンエースバン・ライトエースバン ▲リアゲートは跳ね上げ式。スクエアなボディ形状は限られた空間内にできるだけ多くの荷物を積載するためだ

原稿執筆時時点での中古車掲載台数は、タウンエースバンが約270台、ライトエースバンが約120台。実質的にほぼ同じ車であるにもかかわらず、流通台数が違う理由は主に当時の販売チャンネルによるものだろう。

中古車平均価格についても、タウンエースバンが127万円であるのに対して、ライトエースバンは110万円。この価格差はライトエースバンの生産がすでに終了しており、直近2年の物件が存在しないことが理由と思われる。

年式でいうと、デビュー直後よりも2017年前後の物件数が多い。これは消費税率アップ(2019年10月)を前に新車を買い求めた人が多かったためか?

いずれにしてもタフな作りであるバンで、初度登録から4~6年といえば、まだまだ長く乗れるコンディション。中古車購入を検討している人にとって、ありがたい状況と言えるだろう。

価格については同じ2017年前後の物件であっても、コンディションによって80万~150万円台とかなり幅がある。1万~2万kmしか乗っていない新車に近いようなコンディションの物件もあれば、10万km近いものもあるからだ。

また、総額100万円圏内の物件を見てみると、全体の4分の1程度がヒット。2008~2009年式といった初期型の物件は多くなるものの、2015年くらいまでの比較的新し目の物件も見つかり、かなり値頃感が高いと言えるだろう。

 

物件選びの際には走行距離ももちろん重視すべきだが、定期的にメンテナンスされてきた車両かどうかも必ずチェックしたい。

なお、全体の流通数からすると一部だが、総額240万円以上の物件も存在する。それらのほとんどは、あらかじめカスタマイズされたコンプリートカー、キャンピングカーなどだ。

 

中には、ベースが貨物車とは思えないほどカッコ良く、可愛らしくカスタマイズされている物件もある。最初からカスタマイズ目的でタウンエースバン/ライトエースバンを狙っている人なら、そうした車両を選ぶのも一案だろう。

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※記事内の情報は2022年9月12日時点のものです。
 

文/田端邦彦 写真/トヨタ
田端邦彦(たばたくにひこ)

自動車ライター

田端邦彦

自動車専門誌で編集長を経験後、住宅、コミュニティ、ライフスタイル、サイエンスなど様々なジャンルでライターとして活動。車が大好きだけどメカオタクにあらず。車と生活の楽しいカンケーを日々探求している。プライベートでは公園で、オフィスで、自宅でキャンプしちゃうプロジェクトの運営にも参加。