スズキ ジムニーノマド(初代・現行型)▲スズキのインド工場で生産され、日本に輸入されるジムニーノマド。そのノマドが、ついに中古車市場でも流通し始めた!

ジムニーの秘蔵っ子が日本でも買えるように

ジムニーシエラの待望の5ドアモデル、ジムニーノマドが登場し大人気となるに違いないと思った矢先、発売開始からわずか数日で新車受注停止に。これでは中古車市場に流通するのは、いつになることやら……。

というニュースが流れたのは今年2月のことだった。その後2025年5月30日、ノマドの増産を決定した、というニュースも出たが、いまだ受注再開には至っていない。

という状況なので、まさか中古車なんて流通していないよな……と思い、カーセンサーnetをチェックしてみると、しっかり50台もの物件が掲載されているじゃないですか!

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スズキ ジムニーノマド(初代)

これは新車の受注停止が続いている中で、実にうれしいニュース。一体どんな物件が流通しているのか気になるところだ。

ジムニーノマドの概要を改めて紹介するとともに、現在の中古車概況を解説していこう。

スズキ ジムニーノマド(初代・現行型) ▲ノマドはジムニーらしさを失わずに5ドア化することが目指された。実は前ドアが3ドアよりも短いなど、シエラからの変更点は多い
 

1.モデル紹介:長さとドア数だけでなく乗り味も違う

ジムニーノマドは3ドアのジムニーシエラをベースに、ホイールベースを伸長し、5ドア化したモデルだ。

シエラの1グレードではなく、「ジムニーノマド」という独自の車名が与えられた。型式も軽自動車のジムニーがJB64W、シエラがJB74Wなのに対して、ノマドはJC74Wとなっている。

スズキ ジムニーノマド(初代・現行型) ▲インパネの景色はシエラとほぼ共通だが、後部窓まわりにインナーパネルが付くなど内装にも違いもある

最高出力75kW (102ps) 、最大トルク130N・m (13.3kg・m) を発生する1.5L 自然吸気ガソリンエンジンはシエラと共通。オーバーフェンダーが付いて1645mmとなる全幅も同じだが、ボディは後部ドアを増設するためにホイールベースが340mm伸ばされた。

同時に後席の着座位置を50mm後方に下げ、足元空間を確保。ホイールハウスがシート後方に移動されたことで、後席座席間距離もシエラに対して90mm拡大されている。さらに、後席座面には厚いクッションが採用され、座り心地が改善された。

スズキ ジムニーノマド(初代・現行型) ▲自然吸気1.5Lエンジンは扱いやすく、パワフルさもある良機。ATとの相性も良いエンジンだ

荷室長もシエラの240mmから590mm(ともに4名乗車時)へと伸長。こうしたシエラとの違いがノマドに何をもたらしているかというと、ずばり“SUV化” だ。

ベースとなったジムニー シエラだってSUVでしょ? と思うのは当然だが、シエラの場合は軽自動車であるジムニーとメインボディを共有しているために、SUVの“U”にあたるユーティリティ性能には限界があった。

スズキ ジムニーノマド(初代・現行型) ▲乗車定員はシエラと同じ4人だが、乗降しやすくなり、荷室が拡大されたメリットは大きい

そこにきてノマドは晴れて軽自動車の枠から逸脱し、ロングホイールベース・5ドアとなったことで「ファミリーカーとしても使える」SUVに仕上がっている。

さて、その乗り味は? 実はノマド、重くなったことへの対応としてラダーフレームやボディマウントを強化、フロントサスの剛性アップなどが図られており、シエラよりややシッカリめの乗り味となっている。また、ロングホイールベース化されたことで直進性もアップ。長距離ドライブが得意になった。

さらに、「スズキセーフティサポート」の機能はシエラよりも進化しており、夜間の歩行者検知が可能に。ジムニー初の「アダプティブクルーズコントロール(AT車)」も装備されて、イージードライブが可能になっている。

スズキ ジムニーノマド(初代・現行型) ▲ランブレークオーバーアングルはシエラから3度マイナスの数値に

一方で、ジムニー本来のオフロード性能は……。ホイールベースが長くなったことで障害物の乗り越え能力はやや犠牲になっているが、日常で出くわすオフロードなら全く影響ない範囲。地形によってはむしろ走りやすいステージもあるだろう。

オフロード競技のように極端な状況は別として、ジムニーやシエラ同等と考えて全く問題ない。つまり世界最高水準のオフロード性能ということだ。

スズキ ジムニーノマド(初代・現行型) ▲重量増に対応するため、延長されたラダーフレームにはセンタークロスメンバーが追加されている
 

2. 中古車概況:同じ条件でも価格には幅がある

では現在の中古車市場に流通しているノマドを1台ずつ紹介……したいところだけれど、こうして記事を書いている間にも流通状況は刻々と変化していて、個々の物件を紹介することにあまり意味はないかも。

ということで走行距離やボディカラーの傾向などを分析していこう。現在、ノマドの中古車市場流通量はおよそ50台。1500台オーバーのシエラに比べるとまだまだ少ないが、新車の受注がストップしている今、流通しているだけでもありがたいところだろう。

年式は当然ながら全物件2025年式で、初度登録は3~5月。走行距離についてはほとんどが100km以内。つまり納車時の移動や店舗での試乗などに使われたのみの物件が多いと推測できる。約4割は初度登録したのみで実生活では使用されていない「登録済未使用車」だ。

スズキ ジムニーノマド(初代・現行型) ▲中古車では黒、緑といったシックなボディカラーが多い

トランスミッション別では、ほぼすべての物件がAT。これは前述のとおり、「アダプティブクルーズコントロール」などの機能がAT車に限定されている影響がありそう。ちなみに、ジムニーやシエラでのMT/AT比率はどちらも2:8。ノマドでの比率は今後変わるかもしれない。

ボディカラー別では黒系、緑系が多く、「ブルーイッシュブラックパール」が約3割、「ジャングルグリーン」が約3割、その他4割がアイボリーやレッドとブラックのツートーン、ホワイトパールとなっている。

スズキ ジムニーノマド(初代・現行型) ▲ノマドは「FC」のみのモノグレード。「アダプティブクルーズコントロール」も全車標準だ

さて注目の中古車価格だが、現在の中古車平均価格は約440万円。新車価格が265.1万~275万円であることをふまえると諸経費を考慮してもかなり高い水準だ。新車が手に入らない状況では仕方ないか……。

とはいえ、最もリーズナブルなものでは総額400万円前後の物件も。どの物件も条件はかなり近いが、価格帯では総額400万~490万円と差がある。自宅近くの中古車店に限定せず、幅広いエリアから検索することがオトクに購入するポイントになりそうだ。

400万円台という価格は決して安いものではないが、買えないものが買える、長い納期を待たなくていいというメリットは何物にも代えがたい。今すぐノマドに乗りたい! という人は検討してみてはどうだろうか。

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スズキ ジムニーノマド(初代)
文/田端邦彦 写真/スズキ
※記事内の情報は2025年6月1日時点のものです。
田端邦彦(たばたくにひこ)

自動車ライター

田端邦彦

自動車専門誌で編集長を経験後、住宅、コミュニティ、ライフスタイル、サイエンスなど様々なジャンルでライターとして活動。車が大好きだけどメカオタクにあらず。車と生活の楽しいカンケーを日々探求している。プライベートでは公園で、オフィスで、自宅でキャンプしちゃうプロジェクトの運営にも参加。