日産 スカイライン(V35型)▲1999年にルノー傘下となった新生日産を象徴するような1台。販売戦略の見直しで多くの車種が統合整理された中、GT-RやフェアレディZとともに、スカイラインの名も残された

「不人気」のレッテルを貼られ、手頃な価格で流通していたが……

日本専用車ではなく、北米市場へも導入されるグローバルセダンとして生まれ変わったスカイラインが11代目となるV35型だ。

当初はニューモデルとして開発がスタートし、途中でスカイラインを襲名することになったため、スカイライン伝統の縦置き直列6気筒エンジンではなくV型6気筒が採用され、リアランプも丸目4灯ではない。

歴代のファンからは「こんなのスカイラインじゃない」と批判の声が上がり、新車セールスは苦戦した。
その影響は中古車市場にも表れ、長らく手頃な価格で手に入る格安モデルとして流通してきた。価格の割には高性能ゆえ、一部のユーザーからは支持されていたのも事実だ。

しかし、ここのところV35型スカイラインの中古車相場に動きが出ている。2021年に入ると価格が急に上昇し、平均価格を見ると2021年12月の対前年比はクーペが約110%、セダンに至っては約162%となっている。

いずれも支払総額100万円でまだ狙える価格の物件が多いとはいえ、この先のさらなる価格上昇が懸念される。果たして今の狙い目は? まずは詳しい相場情報から見てみよう。

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日産 スカイライン(V35型)×全国

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中古車台数が減っていることが価格上昇の一因

2001年6月(クーペは2003年1月)から販売され、2006年10月(クーペは2007年9月)に生産が終了したV35型スカイライン。

先述のように新車時の人気がいまひとつだったことに加え、生産終了から15年ほど経過したこともあり、中古車価格は長らく安値で推移。2020年を見ても、セダンは30万円台、クーペは50万円台で1年間安定していた。

しかし、5ナンバーサイズ+アルファ程度の扱いやすいサイズ感のFRスポーツセダン&クーペが他にほとんどないこともあり、知る人ぞ知るお手頃感あるモデルだった。

ところが、まずクーペが2020年11月あたりから、セダンも2021年1月から急に価格が上昇に転じ、一時期クーペは80万円台、セダンも70万円近くまで高くなった。

原稿執筆時点でもクーペの平均価格は70万円台後半、セダンは60万円台前半と2020年よりも平均価格は高いままだ。

日産 スカイラインの中古車平均価格推移▲こちらはV35型スカイラインセダンの中古車平均価格推移。2021年に入り、明らかに上昇している
日産 スカイラインクーペの中古車平均価格推移▲V35型スカイラインクーペの方は、セダンよりも少し早い2020年中頃より上昇を始めている

大きな要因として考えられるのは流通量の減少だ。

生産終了から時間が経ち、セダン、クーペともに延べ掲載台数は2桁台だが、2021年になるとさらに台数が減り、ともに2019年に比べて半減。セダンでひと月の流通台数は20~30台、クーペも60台前後といったところまで落ちている。

しかし、どちらも性能的には優れていると言って良いモデルのため、一定数需要が存在し続けているゆえ、価格が上昇したと考えられる。

とはいえ、どちらもまだ100万円以下で狙える物件も多く、歴代スカイラインシリーズの中ではまだまだ狙い目と言えるだろう。

しかし、年式相応に走行距離10万km超が当たり前になってきており、コンディション面での心配が出てきているのも事実。貴重で手頃なFRスポーツセダン&クーペを狙いたいなら、早めに行動することをオススメしたい。

以下、改めてV35型スカイラインはどんなモデルだったのか、簡単に振り返ってみよう。

初めてV6を搭載し、日本専売からグローバルモデルへと生まれ変わった

日産スカイライン(V35型)▲スカイラインという名を受け継いだ以上、スポーティな走りを楽しめるのは当然、常に車両姿勢をフラットに保つように、また空気抵抗によって車体が浮き上がらないように(ゼロリフト)するといった車両開発が行われた

先述のように、スカイラインとしては初めてV6を搭載し、日本専売モデルからグローバルモデルへと生まれ変わったV35型。

2001年6月に、まずセダンから登場した。2.5Lと3Lという2種類のV型6気筒エンジンをキャビン側に寄せて置く、フロントミッドシップレイアウトが採用された。

当初は5速ATのみ、2WD(FR)のみというラインナップだったが、2001年9月に4WDの250GT FOURが追加された。

日産スカイライン(V35型)▲ロングドライブでの乗り心地や居住性向上などのため、ホイールベースは先代のR34型より180mmも長い2850mmとなった。トランク容量は475L
日産スカイライン(V35型)▲デビュー時の3L車にBOSEサウンドシステムが標準装備されるなど、高級感のあるインテリアや機能が採用された。リアシートは4段階のリクライニング機能が備わる

2002年1月に追加されたのが最上級グレードとなる350GT-8だ。最高出力272psを発揮する3.5LのV6エンジンを搭載し、8段変速マニュアルモードを設定するCVT「エクストロイドCVT」が組み合わされた。また、専用の足回り「ユーロチューンドサスペンション」が備わる。

なお、同時に他の2WD車にもユーロチューンドサスペンションがオプションで選べるようになった。

2003年1月にはクーペが誕生。搭載されたエンジンは3.5L V6のみで、トランスミッションは5速ATの他、6速MTも用意された。併せてセダンの足回りに改良が行われた。

日産スカイライン(V35型)▲スカイラインクーペ。セダンの350GT-8や350GTと同じ3.5L V6を搭載しているが、最高出力はセダンが272psなのに対し、クーペでは280psとされた。トレッドもセダンより広げられ、乗車定員も4名とスペシャルモデルの性格が与えられている
日産スカイライン(V35型)▲デビュー時のクーペは350GTと350GTプレミアムの2グレード体制だったが、2005年11月のマイナーチェンジで350GTプレミアムに一本化され、本革・スエードのコンビシートが標準装備された

2003年6月にはセダンにも3.5L V6×6速MTを搭載した350GTと350GTプレミアムが設定された。いずれもGT-8同様、ユーロチューンドサスペンションが採用されたスポーツモデルだ。

2004年11月にセダンのマイナーチェンジとクーペの一部改良が行われた。セダンの内外装のデザイン変更の他、セダンの3.5L車は350GT-8と350GTプレミアムの2グレードとなり、350GTプレミアムには5速ATも設定された。また、セダン・クーペとも、350GTプレミアムの5速ATにシンクロレブコントロールが備えられた。

2005年11月にはクーペにマイナーチェンジが施された。内外装の変更の他、サスペンションにフーガと同じショックアブソーバーが採用され、乗り心地とコーナリング時の安定感向上が図られた。併せてセダンの機能充実も図られた。

そして、2006年11月には後継となるV36型スカイラインのセダンが、翌2007年10月にはクーペが登場し、V35型の生産が終了した。

セダンなら2.5L車、クーペなら6速MT車がオススメ

2.5L、3L、3.5Lとエンジンバリエーションのあるセダン。

気軽にFRセダンらしい素直なハンドリングを楽しみたいのであれば、オススメは2.5L車だ。全体の約半数を占めて選びやすい他、ほとんどが3.5L車よりも安く、支払総額70万円以内で狙える。購入後の自動車税も最も安いためお手頃感もある。

また、3.5L車と比べてイジられていない物件が多いため、コンディションの面でも有利になることが多そうだ。好みのカスタマイズがされているかどうか考えなくてもいいのもポイントだ。

といっても原稿執筆時点で見るとセダン全体で24台と台数が少ないため、お気に入りの装備の有無などを決めて、根気強く探した方がいいだろう。

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日産 スカイライン(V35型)×2.5Lグレード×全国

一方で、3.5Lエンジンのみのクーペは、セダンよりも台数が多く、原稿執筆時点で52台掲載されていた。

クーペは大まかにノーマルの350GTと、装備の充実した350GTプレミアム系があるが、台数はほぼ同数。いずれも前オーナーによってカスタマイズされた物件が多い。また、セダンでは見つからなかった6速MTモデルも約半数を占める。

オススメは、3.5LのFRクーペをMTで駆れるという、今となっては希少価値のある6速MT車だ。支払総額120万円程度から見つけることができる。

先述のようにカスタマイズされている物件が多いので、好みの社外品パーツが備わっているかどうか、確認して選ぶようにしよう。

こちらもセダンよりは多いとはいえ、台数が少ないので、根気強く探したい。

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日産 スカイラインクーペ(V35型)×MT×全国

なお、いずれも生産終了から10年以上経ち、走行距離10万kmを超える物件が多い。

また、年式相応の経年劣化は避けられないから、走行距離が少ないといっても油断は禁物だ。整備点検記録簿を見てこれまでの整備内容や部品の交換履歴を確認したり、ある程度の整備費用を見込んで購入することをオススメしたい。

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文/ぴえいる、写真/日産

ぴえいる

ライター

ぴえいる

『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はアウディA4オールロードクワトロと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。