▲新車時は決して安い車ではなかったドイツのプレミアムコンパクト「アウディ A1」。その平均価格がそろそろ80万円を割ろうとしています。とはいえ高いものから安いものまであるアウディ A1の中古車のなかから、どんな1台を選ぶのが「ちょうどいい選択」なのでしょうか? 現実的な目線で考えてみましょう! ▲新車時は決して安い車ではなかったドイツのプレミアムコンパクト「アウディ A1」。その平均価格がそろそろ80万円を割ろうとしています。とはいえ、高いものから安いものまであるアウディ A1の中古車の中から、どんな1台を選ぶのが「ちょうどいい選択」なのでしょうか? 現実的な目線で考えてみましょう!

安くなってきたが「安物買いの銭失い」はしたくない

「もしもコンパクトカーを買うのであれば、国産のビミョーなやつじゃなくて、ヨーロッパのちょっとおしゃれなやつがいい。でも、ヨーロッパ車って高そうだし……」

そんなことを考えている方に朗報です。

ドイツの中では一番しゃれた感じの車を作るメーカーであり、世界レベルで見てもトップクラスにおしゃれな「アウディ」が作っていた「A1」というプレミアムコンパクトの平均価格が今、まずまずの勢いで下がってきています。

下のグラフをご覧ください。

アウディ 価格グラフ

2019年1月から下がり始めたアウディ A1の平均価格は、2020年の秋頃からはなぜか上昇に転じたのですが、2021年に入ってからは再び下がり始め、直近の平均価格は85.6万円。このペースであれば、80万円を切るのも時間の問題かもしれません。

しかし、「安物買いの銭失い」みたいなことになっても意味がありませんので、買うにあたってはいろいろと策を練っておく必要はあります。

ということで本稿では、かなり手頃な相場になってきたおしゃれ系ヨーロピアンコンパクト「アウディ A1」の、なるべくいいモノをなるべくお値打ちな予算で手に入れるための方法を考えてみたいと思います。
 

▼検索条件

アウディ A1(初代)×全国
▲こちらが2011年1月から2019年9月まで販売された「一番小さなアウディ」ことアウディ A1▲こちらが2011年1月から2019年9月まで販売された「一番小さなアウディ」ことアウディ A1
▲アウディ A1の運転席まわりはおおむねこんな感じのデザイン。写真は本国モデルのため左ハンドルですが、日本仕様はすべて右ハンドルです▲アウディ A1の運転席まわりはおおむねこんな感じのデザイン。写真は本国モデルのため左ハンドルですが、日本仕様はすべて右ハンドルです

同じ車台を使うフォルクスワーゲン ポロ以上に上質な作り

まずはアウディ A1とはそもそもどんな車か? ということをご紹介しておきましょう。

アウディ A1は2010年に本国ドイツで発表され、日本では翌2011年1月から2019年9月まで販売された「小さなアウディ」。ボディタイプは、いわゆる3ドアハッチバックです。5ドアハッチバック版もあるのですが、そちらはA1ではなく「A1スポーツバック」という別の車種になります。

アウディ A1の基本となる車台はフォルクスワーゲンのポロというコンパクトカーと共通ですが、エンジンもインテリアの仕立てもポロとはまったく異なります(アウディ A1の方が断然上質です)。また、ボディサイズもポロとは異なっており、具体的にはアウディA1の方が「全長は短いけど幅は広い」というフォルムになっています。
 

▲全長は短めだが、全幅は当時のコンパクトカーとしてはまあまあ広い(1740mm)という、ちょっと独特なプロポーションとなるアウディ A1▲全長は短めだが、全幅は当時のコンパクトカーとしてはまあまあ広い(1740mm)という、ちょっと独特なプロポーションとなるアウディ A1

搭載エンジンは1.4Lのダウンサイジングターボエンジンで、最高出力は122psと十分なもの。小さめな排気量ですが、パワー不足を感じる局面はほとんどありません。

2014年6月には、高速道路などを走る際に4気筒のうち2気筒を休止させる「シリンダーオンデマンド」という仕組みを採用したグレードを追加し、2015年5月のマイナーチェンジ時に排気量1Lの直列3気筒ターボエンジンを追加。これら2つも素敵なエンジンですが、中古車市場での数はやや少なめです。

そして、アウディ A1は2015年5月のマイナーチェンジを経て2019年9月まで販売され、それ以降は5ドア版である「A1スポーツバック」の第2世代が新車として販売されている――というのが、この車の大まかなヒストリーです。
 

総額100万円前後が好バランスでコスパ良し!

さて、では具体的に「アウディ A1の賢い選び方」を考えてまいりましょう。

2021年10月中旬現在、アウディ A1の中古車流通量は105台で、価格(支払総額)は50万~200万円です。

とはいえ、総額50万円ぐらいのゾーンはちょっとイマイチな多走行車が多く、逆に200万円ぐらいの高値ゾーンは「……そこまで出すなら、いっそ新車を買った方が?」とも思ってしまいますので、あまり「ちょうどいい選択」とはいえません。

ちょうどいいのは、アウディ A1の場合はズバリ「総額80万~120万円ぐらい」です。このプライスゾーンであれば、マイナーチェンジ前の前期型ではありますが、走行1万km台から4万km台までの1.4 TFSIを普通に探すことができます。

さらに総額130万円、140万円、あるいは150万円以上のゾーンで探してもいいのですが、そこまで出すと、前述の「……それならいっそ新車を買った方が?」という気持ちが湧いてきてしまいます。

中古車というのは、安すぎるのもアレですが、ある程度はお安く買わないと意味がないモノですので、アウディ A1の場合は「総額80万~120万円ぐらいで比較的低走行な1台を探す」というのが、ちょうどいい落としどころでしょう。
 

▲総額80万~120万円あたりのゾーンで「悪くない1台」が普通に探せるはず。ちなみに1.4 TFSIというグレード名に「スポーツパッケージ」と付いているものは、スポーツシートとスポーツサスペンション、16インチタイヤなどが装着されています▲総額80万~120万円あたりのゾーンで「悪くない1台」が普通に探せるはず。ちなみに1.4 TFSIというグレード名に「スポーツパッケージ」と付いているものは、スポーツシートとスポーツサスペンション、16インチタイヤなどが装着されています

ちなみに、中古車のコンディションというのは走行距離だけで測れるものではないため、走行4万km台までの物件に絞るのも、ナンセンスといえばナンセンスです。

しかし、車というのは走行7万kmから10万kmのあたりで、あちこちの部品を一気に交換する必要が出てくる場合が多いものです。その出費を回避する意味で、「走行4万km台までの物件に絞る」ということにはいちおうの合理性があるのです。
 

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アウディ A1(初代) ×総額80万~総額120万円 ×走行距離4万km以下 ×全国
▲たとえばエンジンでいうと、エンジン本体はどんな車でもそれなり以上に頑丈で長持ちするのですが、そのまわりにある「補機類」は7万~10万kmぐらいで寿命を迎え、要交換となる場合が多いものです▲例えばエンジンでいうと、エンジン本体はどんな車でもそれなり以上に頑丈で長持ちするのですが、そのまわりにある「補機類」は7万~10万kmぐらいで寿命を迎え、要交換となる場合が多いものです

2012年式は純正HDDナビの有無にちょっと注意を

前期型の1.4 TFSIを探す際の注意点のひとつは「カーナビの有無」です。

アウディA1の場合、2011年にデビューした当初は「MMI(マルチメディアインターフェイス)」というオーディオとHDDナビを統合したものが標準装備されていました。

しかし、2012年1月の仕様変更でこれがオプション扱いになり、代わりに「MMIベーシック」という、MMIからHDDナビと地デジTV、ETCシステムを省略したバージョンが標準装備となったのです。

このMMIとMMIベーシックは見た目的には同じで、ナビの機能は持たないMMIベーシックでも、ダッシュボードの中央には「カーナビっぽいディスプレイ」が付いていますので、ちょっとややこしいのです。

そのため2012年式の1.4 TFSIを買う場合は、それが「MMI」なのか、それとも「MMIベーシック」なのかを、販売店に確認するようにしてください。

とはいえ、多くの物件にはオプションとしてのHDDナビが装着されていますし、最近は純正カーナビがなくても、スマホアプリのカーナビで事が足りたりしますので、さほど大きな問題ではないかもしれませんが……。

また前期型のアウディ A1は、「7速Sトロニック」というトランスミッションのリコールが届け出られています。多くの中古車はすでにリコール対策済みと思われますが、ここについても、購入時はいちおう販売店にご確認ください。
 

▼検索条件

アウディ A1(初代・前期型) ×総額80万~120万円 ×走行距離4万㎞以下 ×1.4 TFSI ×全国
▲「MMIベーシック」の場合でも、ダッシュボードの中央上部にあるディスプレイはMMIとまったく同じように付いているため、パッと見だけでは区別がつきにくい。わからない場合は販売店に確認を▲「MMIベーシック」の場合でも、ダッシュボードの中央上部にあるディスプレイはMMIとまったく同じように付いているため、パッと見だけでは区別がつきにくい。わからない場合は販売店に確認を

流通量は少なめだが後期1.0 TFSIもおすすめ

以上のとおり、基本的には「総額80万~120万円ぐらいの前期型1.4 TFSI(走行5万km未満が望ましい)」がちょうどいい落としどころとなるアウディ A1ですが、さらに「総額120万円以上」を出すつもりがあるなら、マイナーチェンジ後の「1.0 TFSI」を探すこともできます。

2015年5月のマイナーチェンジ時に追加された1.0 TFSIは、その名のとおり1Lの直3ターボエンジンを搭載するグレード。最高出力は95psとほどほどなのですが、実際の力感は十分以上です。そして小さなエンジンを採用したことで「鼻先」が軽くなり、運転感覚は非常に軽快です(A1の中でベストかも?)。

さらに燃費も、アウディA1の中では最高の22.9km/L(JC08モード)ですので、マイナーチェンジでシュッとした外観デザインや安全装備の進化などとも併せ、後期型の1.0 TFSI(および1.0 TFSIスポーツ)はかなり魅力的な選択肢です。

とはいえ、総額120万円以下で探せる物件の数はさほど多くはなく、中心は総額150万円以上となってしまうのがネックではあるのですが。
 

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アウディ A1(初代・後期型)×総額150万円以下 ×走行距離5万㎞以下 ×1.0 TFSI ×全国
▲こちらが2015年5月以降の後期型。1Lターボエンジンが追加され、ヘッドランプとテールランプのデザインも変更されています▲こちらが2015年5月以降の後期型。1Lターボエンジンが追加され、ヘッドランプとテールランプのデザインも変更されています

しかしそれはそれとして、モデル全体として平均価格が下がってきたアウディ A1は、コンディションの良い個体を探すことさえできれば、かなりナイスな選択肢です。

インテリアの質感も走行フィールも、国産の同クラスとはちょっと次元の異なる良さがあることはもう間違いありませんので、この機会にぜひチェックしてみることを強くオススメいたします。
 

▼検索条件

アウディ A1(初代) ×全国
文/伊達軍曹 写真/アウディ

※記事内の情報は2021年10月20日時点のものです。
 

伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。