日産シルビア▲扱いやすいサイズのFRスポーツとして今なお絶大な人気を誇るシルビア

日産 シルビアの中古車は今

1965年に登場した初代シルビアは、世界に誇れる高級クーペとして日産が威信をかけて開発したモデルだ。

1988年に登場したS13型シルビアも、クーペとしての美しさを追求し多くのファンを生んだ。

そして、2002年にS15型が新車販売を終了してからもなお、コンパクトなFRモデルとして走りを楽しむユーザーからも支持され続けている。

ここでは中古車として流通するS13型以降のモデルを紹介する。現在のシルビアの中古車流通量と平均価格は下記のとおりとなっている。

・S13型:約50台/235万円
・S14型:約60台/220万円
・S15型:約140台/240万円

いずれも希少性、ジャパニーズスポーツカーの世界的なブームなどにより価格は高騰している。コンディションのいいものは500万円以上の値がつけられることも珍しくない。

一方、100万円台で買える中古車も存在するが、購入後に手を加える必要があるかなど車両状態を見極め、トータルコストを見て購入の判断をする必要がある。

ここからはシルビアの特徴や中古車相場について世代ごとに紹介する。
 

▼検索条件

日産 シルビア × 全国
 

シルビア(S13型)の特徴と中古車相場

■シルビア(S13型) DATA
生産期間:1988年5月~1993年9月
中古車流通量:約50台
中古車価格帯:170万~600万円
 

日産シルビア ▲筋肉質だった先代から一転、流麗なデザインを採用したS13型

■シルビア(S13型)の特徴
1965年4月に登場したCSP311型シルビアは、世界に存在を認められる高級クーペを目指して開発された、日産渾身の1台だった。

継ぎ目を可能な限り減らした美しいボディパネルは、職人が手作業でたたき出していた。量産が不可能だったこともあり生産台数は500台あまりに止まったが、車好きの間では今なお語り継がれる伝説のモデルとなっている。

CSP311型が目指した“美しいクーペ”というコンセプトをよみがえらせたのが、1988年5月に登場したS13型シルビアだ。
 

日産シルビア ▲ヘッドレスト一体型シートをはじめ、インテリアも曲線を多用したデザインに

“ART FORCE SILVIA”というキャッチコピーが表すとおり、曲線を多用した美しいボディラインが特徴。

1980年代は“デートカー”と呼ばれる流麗なスペシャリティクーペが大ブームになっていた。S13型シルビアもそこにターゲットを絞ったモデルで、ライバルはデートカーの代名詞的存在であるホンダ プレリュードだった。
 

日産シルビア ▲最上級グレードの「K’s」には最高出力175ps/6400rpm、最大トルク23.0kg-m/4000rpmを発生する1.8Lターボを搭載。Q’sとJ’sには1.8L NAエンジンが搭載された

プレリュードの駆動方式が前輪駆動(FF)だったのに対し、シルビアは後輪駆動(FR)を採用。

5ナンバーサイズ、FR、1.8Lターボ、マルチリンクサスペンション、そしてMTという構成は、走り好きの若者の心も捉えることになった。
 

日産シルビア ▲シルビアには四輪操舵システムのHICAS II、リアビスカスLSDなども設定された

1988年10月にはシルビアコンバーチブルが追加設定された。

「K’s」をベースにオーテックジャパンが手がけたオープンモデルで、ルーフは電動開閉式ソフトトップが採用されている。
 

日産シルビア ▲シルビアコンバーチブルのトランスミッションは4速ATのみの設定

1991年1月にはマイナーチェンジを実施。

搭載エンジンを1.8Lから2Lに変更し、最高出力が205ps(ターボ)、140ps(NA)にアップした。

また、四輪操舵システムをHICAS IIからSUPER HICASに変更された(全グレードでパッケージオプション設定)。
 

日産シルビア ▲エクステリアではリアスポイラーが飛行機の翼のようなデザインのものに変わっている

■シルビア(S13型)の中古車相場
S13の中古車は、登場から30年以上経過していること、海外への流出も多いことなどから流通量は50台程度と少ない。

流通している物件のほとんどが、走りのためにカスタムされたものだ。フルノーマルのものを探すのはかなり難しい状況にある。

半数は修復歴ありとなっており、修復歴がなくてもかなり走り込んでいるものが少なくない。そのため、購入時は走行距離や修復歴といった情報だけでなく、機関系やボディなどの状態をしっかり確認する必要がある。

総額200万円以下で購入できるものもあるが、安いからと気軽に検討するのはオススメできない。安いものには安い理由が、高いものには高い理由がある。実車を確認のうえ、その理由をしっかりと認識して購入に進んでほしい。

その意味では中古車だけでなく、信頼できるショップを見つけることが大事と言えるだろう。
 

▼検索条件

日産 シルビア(S13型) × 全国

▼検索条件

日産 シルビアコンバーチブル × 全国 ※流通状況により物件がない場合があります
 

シルビア(S14型)の特徴と中古車相場

■シルビア(S14型) DATA
生産期間:1993年10月~1998年12月
中古車流通量:約60台
中古車価格帯:100万~460万円
 

日産シルビア ▲ボディサイズが拡大され3ナンバーとなったS14シルビア

■シルビア(S14型)の特徴
1993年にフルモデルチェンジを受けたS14型のボディサイズは、全長4520×全幅1730×全高1295mmに拡大された。全幅が1700mmを超えたことで3ナンバーとなっている。

車体が大型化されたことは、当時のスポーツカーファンから好意的には受け入れられなかった。シルビアの魅力は取り回しのいい5ナンバーサイズであることだと言われてしまったのだ。

また、プロポーションはS13の路線に沿いながらも、デザインが曲線を多用したエレガント路線に振ったこともファンの間では不評だった。

S14が登場した時期は、車の税金が5ナンバー/3ナンバーという枠組みから排気量別に変わったため、多くのモデルで排気量を2L以下に抑えつつトレッドを拡大して走行安定性を高める方向になっていた。

シルビアもその路線に乗ったのだが、それが逆にあだとなってしまったのである。

日産シルビア ▲丸みを帯びたボディラインが特徴的

当時はそのような評価を受けていたものの、ボディはS13に比べて剛性がかなり高められており、さらにSUPER HICASの電動化やブレーキキャパシティの工場、足回りの最適化などにより走りの性能は大幅にアップしている。

搭載エンジンはS13後期モデルと同じだが、最高出力はターボで220ps、NAで160psに高められている。なお、NAモデルはS14からハイオク仕様になっている。

1996年6月にマイナーチェンジを行い、エクステリア、インテリアともに大幅なデザイン変更がされている。

日産シルビア ▲マイナーチェンジによりフロントフェイスの雰囲気が大きく変わった後期型モデル

不評だったデザインに大規模な改良を加え、エレガント路線でおとなしかったフロントフェイスは、つり目のヘッドライトが装着されたことでシャープなイメージに変貌。また、フロントバンパーのデザインも変えられている。

インテリアはメーター形状、シートやドアトリムの形状が変更になった。

1997年10月には「オーテックバージョンK’s MF-T」をグレード追加。

これは「K’s」をベースに専用のターボチャージャーを換装するとともに大型のインタークーラーを搭載したスペシャルモデルだ。インタークーラーの大型化により、バンパーも専用のものが装着されている。

オーテックバージョンの最高出力は250psにまで高められていた。
 

■シルビア(S14型)の中古車相場
S14の中古車は、S13ほどは高騰していない。それでも状態がいいものは200万円を超える価格設定になる。

S13同様、多くの中古車は前オーナーによるチューニングが施されている状況。また、約60台流通している中古車のうち、修復歴なしとなっているものは25台程度と半分以下にとどまっている。

こちらも修復歴の有無や走行距離だけでなく、手が加えられた箇所はもちろん、ボディや機関系の状態をしっかり確認したうえで購入に進んでほしい。

特に低価格帯のものは、購入後に不具合が発生すると大きな出費になる可能性もある。その意味では目先の価格だけでなく、購入後の維持費も含めた額まで考え、トータルコストで選ぶのが得策だ。

S14型もS13型同様に、車選びと同じくらい信頼できるショップ選びに力を注いでほしい。
 

▼検索条件

シルビア(S14型)× 全国
 

シルビア(S15型)の特徴と中古車相場

シルビア(S15型) DATA
生産期間:1999年1月~2002年8月
中古車流通量:約140台
中古車価格帯:120万~600万円
 

日産シルビア ▲S15は原点回帰し、再び5ナンバーサイズに戻された

■日産 シルビア(S15型)の特徴
大型化したS14が不評だったこともあり、S15型は再び5ナンバーサイズになる。当時、先代よりダウンサイジングすることは珍しいことだった。

エクステリアデザインはエンジンフードを低い位置に配置し、ルーフも大きく傾斜させることで、スピード感あふれる彫刻のようなフォルムになっている。

エンジンフード上にはシルビアの“S”を模ったエンブレムが付けられているが、これはブレード(刃)をイメージしたデザインされたものだ。

日産シルビア ▲シャープな印象のリアデザイン

インテリアは随所にスピードを感じさせるチタン調の加飾が施された。

搭載エンジンは、2Lターボと2L NAの2種類。

MTとATでは最高出力が変えられている。NAエンジンの「スペックS」は5速MTが165psで、ATが160ps。ターボエンジンの「スペックR」は6速MTが250psで、ATが225psになる。

「スペックR」の6速MTは、クロスギアレシオ化された新開発のもの。このトランスミッションを搭載するモデルのパワーウェイトレシオは5kg/ps以下を達成した。

ボディ剛性は先代より大幅に高められるとともに、ブレーキ性能も強化。

足回りはS14から継承されたものだが、サスペンション取り付け部の剛性向上、サスペンションジオメトリーの変更、各部の補強などにより、軽快で応答遅れの少ない運動性能を実現している。

日産シルビア ▲随所に丸型の意匠が施された機能的なインテリア

その後いくつかのグレードが追加されている。主なものは下記のとおり。

【1999年10月 グレード追加】
・「スペックS」と「スペックR」にブルーを基調としたインテリアを採用した「bパッケージ」を追加
・「スペックS」の6速MTをベースに、エンジンの専用チューニング(最高出力200ps)、ボディ剛性の向上、サスペンションの変更、リアヘリカルLSDと専用ブレーキなどを採用した「オーテックバーション」を追加

【2000年5月 グレード追加】
・シルビアコンバーチブル「ヴァリエッタ」を追加

日産シルビア ▲オープン時にはルーフが完全にトランクルームに格納される

この「ヴァリエッタ」は電動式メタルルーフを国産車で初めて採用したモデルだ。

オープン化でも4名乗車を可能にしていて、ルーフの開閉は約20秒で完了。気軽に軽快なオープンドライブを楽しむことができる。

【2000年10月 グレード追加】
・「スペックS」と「スペックR」に「Lパッケージ」を追加設定

「Lパッケージ」は上質でセンスの良い大人のスポーツクーペを目指したモデルだ。

インテリアには、ブラックとシルバーでまとめた本革シートを採用。アルミ製ペダルやシルバーメーターなども標準装備となり、上質な室内空間が演出された。

【2002年1月 グレード追加】
・「スペックS」と「スペックR」に「Vパッケージ」を追加

「Vパッケージ」は、専用フロントシート地とドアトリム地、プライバシーガラス、キセノンヘッドランプなどが標準装備されたモデルである。

「Vパッケージ」が登場した際、日産は2002年8月をもってシルビアの生産を終了することを発表。これは平成12年排ガス規制の影響によるものだった。
 

■シルビア(S15型)の中古車相場
シルビアの中古車を狙ううえで、流通台数の観点から最も検討しやすいのがS15型だ。

とはいえS15も流通台数の減少、世界的なジャパニーズスポーツモデルの盛り上がりにより平均価格は250万円に迫る相場となっている。

グレード別に見ると、NAエンジン搭載の「スペックS」系は約50台流通していて価格帯は車両本体価格で120万~330万円。ターボモデルの「スペックR」系は75台ほど流通していて価格帯は200万~600万円となっている。

車両本体価格で450万円以上の中古車には、走行距離が5万kmに達していない「スペックR」も見つけることができる。

S15もすでにデビューから20年以上が経過。修復歴なし物件の比率は半分程度あるものの、多くの中古車はチューニングが施され、スポーツ走行をしてきたものになる。

そのため、目先の安さに引かれて飛びつくと後で高額な修理費が発生する可能性もある。

購入時は走行距離や修復歴だけでなく、機関系やシャシーなどの状態をショップとともに入念に行いたい。
 

▼検索条件

日産 シルビア(S15型) × 全国

▼検索条件

日産 シルビアヴァリエッタ × 全国

※記事内の情報は2021年8月25日時点のものです。
 

文/高橋満 写真/日産

高橋満(たかはしみつる)

自動車ライター

高橋満(BRIDGE MAN)

求人誌編集部、カーセンサー編集部を経てエディター/ライターとして1999年に独立。独立後は自動車の他、音楽、アウトドアなどをテーマに執筆。得意としているのは人物インタビュー。著名人から一般の方まで、心の中に深く潜り込んでその人自身も気づいていなかった本音を引き出すことを心がけている。愛車はフィアット500C by DIESEL