ランドクルーザー80▲国内はもちろん、アメリカや欧州、アフリカなど世界中で愛されたランクル80。デビューから30年以上経つが、その人気はいまだに衰えない

トヨタ ランドクルーザー80の中古車は今

四駆が官公庁向けのワークホースから、ラグジュアリーなSUVへと変遷する最中に誕生し、1990年代のオフロード四駆ブームをけん引する存在となったトヨタ ランドクルーザー80(以下、ランクル80)。

そのタフな作りと圧倒的な悪路走破性能は、世界中の四駆ユーザーを魅了した。

生産終了から既に四半世紀近く経つが、中古車市場でも高い人気を誇っている。

年式による装備や仕様の違いが多く、コンディション車両価格も物件ごとに様々。

ハードな使われ方をされてきた車両もあれば、走行距離5万km以下の車両もある。価格帯も100万円台前半から500万円台まで非常に幅広い。

良質な中古車をゲットするには、相応の知識が必要だ。

ここではランドクルーザー80の特徴、中古車を選ぶ際のポイントや現在の中古車相場について解説していく。
 

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ランドクルーザー80の特徴と中古車相場

■ランドクルーザー80 DATA
生産期間:1989年10月~1997年12月
中古車流通量:約170台
中古車価格帯:90万~580万円
全長:4970mm × 全幅:1930mm × 全高:1860~1900mm
 

ランドクルーザー80 ▲「VX」以上のグレードでは、オーバーフェンダーの付いたワイドボディとなっていた。前期型と中期型はフロントグリルおよびエンブレムですぐに見分けられる

■ランドクルーザー80の特徴
ランクル60系の後継車種として、1989年に登場したランクル80。

ボディラインは全体的に丸味を帯び、サイズについてもランクル60から大きく拡大。これは車内空間の拡大を狙ったものだ。

サスペンションは前後リジッドアクスルを堅持していたが、トラック然とした乗り味で積載性が重視された前後リーフスプリングから、前後コイルスプリングへと変更。

トランスファーは伝統的なパートタイム式から、ベベルギア式のセンターデフを備えるフルタイム式へと進化した。

インテリアについても、当時のクラウンなど高級セダンに全く見劣りしない豪華な仕様となっている。四駆からSUVへ、ワークホースから趣味の車へ、という時代のニーズをくんだ結果だった。

オンロードでの乗り心地向上を主眼に置いた設計だったが、オフロードにおいても決して歴代のランクルに劣らない、むしろ進化させているのがランクル80の特徴だ。
 

ランドクルーザー80 ▲上級グレードのシートにはエクセーヌ(ウルトラスエード)と呼ばれる肌触りの良い表皮を採用

もっとも、当時はワークホースとしての需要も国内にまだ残っており、ラインナップはそうした事情を反映した多彩なものとなっている。

乗用車登録となるワゴン系グレードは4L 直列6気筒ガソリンエンジン(3F-E型)を搭載し(後に4.5L 直列6気筒ガソリンの1FZ-FE型へと変更)、オーバーフェンダーが付くワイド仕様。

貨物車登録となるバンには4.2L 直列6気筒ディーゼルターボエンジン(1HD-T型。後に1HD-FT型へと変更)・ワイド仕様の他、オーバーフェンダーの付かないナローボディで4.2L 直列6気筒ディーゼル自然吸気エンジン(1HZ型)を搭載、4WDシステムもパートタイム式となる仕様も用意された。

デビュー時のグレード展開は以下のとおりだ。

・「ワゴンVX」:ワゴンの標準グレード。ワイドボディ・フルタイム式4WD・4速AT
・「ワゴンVXリミテッド」:ワゴンの上級グレード。ワイドボディ・フルタイム式4WD・4速AT。バックドア付きスペアタイヤキャリア装着車と非装着車が存在した
・「バン STD」:バンの最廉価グレード。ナローボディ・パートタイム式4WD・5速MT
・「バン GX」:バンの廉価グレード。ナローボディ・パートタイム式4WDまたはフルタイム式4WD・5速MTまたは4速AT
・「バン VX」:バンの標準グレード。ワイドボディ・パートタイム式4WDまたはフルタイム式4WD・5速MTまたは4速AT
・「バン VXリミテッド」:バンの上級グレード。ワイドボディ・フルタイム式4WD・4速AT。バックドア付きスペアタイヤキャリア装着車と非装着車が存在した
 

ランドクルーザー80 ▲リアゲートは写真の2分割式上下開き仕様の他、「GX」、「STD」には観音開き仕様も用意された。スペアタイヤも背面キャリア仕様と、荷室下に吊り下げる仕様の2種類あり

ランクル80はデビュー直後から毎年のように改良が行われたが、中古車を購入するうえで特に注意したいターニングポイントは下記の2回だ。

なお、一般的にデビューから1992年7月のモデルが前期型、1992年8月~1994年12月までのモデルが中期型、1995年1月から生産終了までのモデルが後期型と呼ばれる。

■1992年8月 マイナーチェンジ
主に、車体が重くなり、制動力や動力性能に不足を感じるユーザーが多かったことに対応する内容となっている。

【外観】
・ワイドボディ車のアルミホイールを15インチ→16インチに変更
・フェンダー上に補助ミラーを追加

【エンジン・トランスミッション】
・ガソリンエンジンを4L 直列6気筒の3F-E型から4.5L 直列6気筒の1FZ-FE型に変更
・動弁機構も12バルブOHVから24バルブDOHCに進化し、動力性能アップ。同時にATを電子制御化

【サスペンション・ブレーキ】
・バネレートをアップし、車高をダウン
・ブレーキ径を大径化し、制動力を向上

【安全性能】
サイドドアビーム、フロントアンダーミラーを全車標準装備化
四輪ABSを新たにオプション設定(フルタイム4WDのみ)

■1995年1月 マイナーチェンジ
コストダウンを目的とした内容が多いが、ディーゼルエンジンの性能アップは見逃せない。

【外観・内装】
・フロントグリルのデザインを変更。エンブレムも「TOYOTA」ロゴから楕円形のトヨタマークに変更
・内装ではインパネのデザインを大幅に変更し、同時にシートの生地やデザインも変更

【エンジン・トランスミッション】
・ディーゼルエンジンの1HD-Tを改良型の1HD-FTへと変更。1気筒あたりの吸排気バルブを4バルブ化し、出力向上と燃焼効率を改善。EGRを採用

【安全性能】
運転席エアバッグをオプション設定
 

ランドクルーザー80 ▲後期型ではフロントまわりだけでなく、インパネまわりのデザインも全面的に変更。前期型、中期型よりもシンプルな配置となった

■ランドクルーザー80の中古車相場
生産終了から約24年を経過した現在、中古車流通量はおよそ170台程度と多くない。

それでも今まだ根強い人気を誇っており、中古車平均価格(車両本体価格)は260万円という状況だ。

しかも、流通している物件の多くが走行距離15万kmオーバー。後継車であるランクル100をも凌ぐ、驚異的なバリューである。

もっとも、この値段は単に人気を反映しているだけでなく、整備さえキチンと行われていれば走行距離15万kmなど序の口、30万km走っていても安心して乗れる、耐久性の高さにも由来している。

希望どおりの仕様、コンディションのランクル80が手に入るなら、決して高い買い物ではない……かもしれない。

新車当時はディーゼルの人気が高く、現在の中古車も約3分の2をディーゼルが占めている。

1HD-T型、1HD-FT型エンジンは重量級のボディを軽々と引っ張るトルクの持ち主だ。

経済性においてもガソリンエンジンより優れているが、残念ながら自動車NOx・PM法の規制対象地域外でしか登録することができない(触媒等の排ガス浄化装置を付けたうえでガス検査に通せば登録可能になるが、数十万~100万円規模の追加費用が必要)。

規制対象地域内に住んでいる人は、ガソリンエンジン搭載のワゴンが妥当な選択肢となる。

ランクル80を選ぶうえで特に注意したいのは年式で、1992年8月の変更前と変更後ではガソリンエンジンの動力性能、制動力、乗り味が大きく変わっている。

よほどマニアックな嗜好をもつ人でない限り、マイナーチェンジ後のモデルを選ぶのが正解だろう。
 

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※記事内の情報は2021年8月4日時点のものです。

文/田端邦彦 写真/トヨタ
田端邦彦(たばたくにひこ)

自動車ライター

田端邦彦

自動車専門誌で編集長を経験後、住宅、コミュニティ、ライフスタイル、サイエンスなど様々なジャンルでライターとして活動。車が大好きだけどメカオタクにあらず。車と生活の楽しいカンケーを日々探求している。プライベートでは公園で、オフィスで、自宅でキャンプしちゃうプロジェクトの運営にも参加。