総額150万円から狙えるBMW 2シリーズグランツアラーって、ところで本当にお買い得なのか?
カテゴリー: 特選車
タグ: BMW / ミニバン / 家族向け / クルマを選び始めた人向け / スタイリッシュ / 高級 / 2シリーズグランツアラー / 伊達軍曹
2021/07/04
「BMWなのにお手頃」というのは確かに魅力的だが?
諸般の事情により3列シートのミニバンが必要となる予定だが、国産車のそれはどうも「所帯じみた感じ」がするため、買う気になれない。
しかし、輸入車だと「ミニバン」というもの自体があまりなく、あったとしても、ぶっちゃけ割と高額だったりもする。
さて、どうしたものか……と悩んでいる紳士淑女のみなさんも多いだろう。いや多くはないかもしれないが、一部にはいらっしゃるはずだ。
そんな、一部のみなさんの目を引く存在のひとつが「BMW 2シリーズグランツアラー」である。
2015年6月から販売されているBMWの7人乗り車で、新車時価格はおおむね400万円超級だったのだが、その走行距離5万km以下の物件が今、総額150万円ぐらいからフツーに狙えてしまうのだ。
BMWといえば「所帯じみた感じ」とはほぼ無縁のブランドであり、総額150万円ぐらいというのは「まぁ普通に出せそうな予算」でもある。
ということで、ある種の人にとって2シリーズグランツアラーの中古車は「渡りに船」と言いたくなるほど好都合な選択肢にも見えるわけだが、世の中、うまい話には裏があったりもする。
2シリーズグランツアラーの場合はどうなのだろうか? 様々な角度から検証してみることにしよう。
サイズ感はマツダ プレマシーに近い
まずは、BMW 2シリーズグランツアラーという車についての簡単なご紹介から。
2シリーズグランツアラーは、日本では2015年6月に発売されたBMW初の7人乗りMPV(マルチ・パーパス・ビークル)。
ひと足先にデビューした「2シリーズアクティブツアラー」という5ドアハッチバックのホイールベースと全長を延ばし、さらにルーフも高くした3列シート7人乗りのモデルだ。
駆動方式はFF(フロントエンジン・前輪駆動)で、ボディサイズは全長4565mm × 全幅1800mm × 全高1645mm ……と数字を羅列してもイメージしにくいと思うので、メジャーな国産ミニバンである日産 セレナと比べると、「セレナより12cm短く、6.5cm幅広で、22cm背が低い」ということになる。
要するに「やや幅広ではあるが、比較的小ぶりな7人乗り車」ということである。サイズ的には、セレナよりもマツダ プレマシー(3代目)に近い。
乗車定員は7名。2列目シートは60:40の分割式で、前後130mmのスライド機構付き。3列目シートは前方に倒すことでフロアに収納でき、その場合のラゲージルーム容量は560Lになる。さらに2列目シートのバックレストも倒すと、荷室容量は最大1820Lまで拡大する。
搭載エンジンは、ガソリンターボが2種類とディーゼルターボが1種類。ガソリンターボは「218i」というグレードに最高出力136psの1.5L 直列3気筒エンジンが搭載され、「220i」には同192psの2L 直列4気筒エンジンを搭載。
そして「218d」は、最高出力150psの2L 直列4気筒ディーゼルターボとなる。トランスミッションは「218i」が6速ATで、「220i」と「218d」には8速ATが採用された。
2018年6月のマイナーチェンジでフロントまわりのデザインを変更するとともに、「218i」のトランスミッションがデュアルクラッチ式の7速ATに変更されている。
以上が、ざっとではあるが、BMW 2シリーズグランツアラーという車の概要だ。
あ、重要な点をもうひとつだけ。安全装備については、カメラを使った衝突回避・被害軽減ブレーキなどを含む「ドライビング・アシスト」と、「LEDヘッドライト」「リアビューカメラ」などが全車に標準装備。
ドライビング・アシストの機能をさらに強化した「ドライビング・アシスト・プラス」や、ヘッドアップディスプレイを組み合わせた「アドバンスド・セーフティ・パッケージ」も、オプション設定されている。
で、妙に安い理由は何なんだ?
さて。前章でご紹介したとおりのなかなか素敵なスペックをもつBMW 2シリーズグランツアラーというMPVだが、400万円超級だった輸入車にもかかわらず、走行距離5万km以下の「218i」を総額150万円ぐらいから探すことができる。妙に安いのだ。
……安い理由は、輸入車にありがちな話だが「しょっちゅう壊れまくる車だから」だろうか?
答えは「否」である。
いや、これは中古の2シリーズグランツアラーがまったく壊れないという話ではない。確かに同クラスの国産車と比べれば、修理に使う部品の代金も高めだという問題はある。
だが、それらはあくまで「輸入車としては標準的なレベルであり、2シリーズグランツアラーが特に壊れやすいとか、特に部品代が高いというものではないのだ。
では、なぜ中古車相場は安めなのか? ……走行性能の面で、実はかなりイマイチだったりするとか?
それについても、答えは「否」だ。
総額150万円ぐらいから探せる「218i」(136psの1.5L 直3ターボ)でも力感は普通に十分で、身のこなしも――FFとはいえさすがにBMWの車ということで――しなやかでありつつ、重厚感もあるといった味わいだ。
一番の売れ筋である「218d」(2Lディーゼルターボ)は総額180万円ぐらいからと、少し高めになるが、こちらの力感と身のこなしは「絶品」と評してもさほど大げさではないレベルで良好である。
「3列目はかなり狭い」という難点は確かにあるが?
故障しまくるわけでもなく、走りがイマイチなわけでもないのに妙に安いということは……ミニバンとしての使い勝手が悪いのだろうか?
これについては、部分的にそのとおりである。
日産 セレナあたりと比べて20cmほど低い全高は、ミニバンを「広々と使いたい」と考えているご家族にとっては確実にマイナスポイントとなるだろう。
また、2シリーズグランツアラーは3列シート車であるとはいえ、その3列目はきわめて狭い。成人にとっては「緊急用の座席」としてしか使い道がなく、子供はまぁそれなりに座れるが、その子供も「正直、あまり長時間は座りたくありません」と思うかもしれない。
また、後部ドアがスライド式ではなくヒンジ式であるという点も、幼い子供による「隣の車へのドアパンチ」を心配する親にとっては、マイナスポイントとなるだろう。
しかし、このあたりは考えようというか、使いようである。
ヒンジ式のドアについてはいかんともし難いが、「3列目が狭い」という問題は「基本、3列目シートは使わないで床下に収納しておく」という対応で問題は雲散霧消する。
2シリーズグランツアラーの3列目シートはごく簡単に床下に隠すことができるので、この車を「3列シート車」ではなく「広い荷室をもつ2列シート車(そして、たまに3列目をひっぱり出して使うこともできる車)」として使えばいいのだ。
もちろん、常にサードシートをフルに使うタイプのご家庭にはまるで向かない車だが、「そうではないご家庭」にとっては、ここはさほどの問題にはならないと考える。
安い理由は「要するに人気薄だから」でしかない
では、問題はデザインはなのだろうか? いかに走りが良く、使い勝手がまあまあ良い車だったとしても、デザインが超絶ダサいと、人は買う気が失せるものだ。
……ここについての感じ方は人それぞれであるため、写真を見て各自でご判断いただくほかない。
……いかがだろうか? 感じ方はそれぞれだろうが、筆者個人としては「特にカッコいいとは思わないけど、そんなに悪くはないのでは?」といった感じである。
さて、以上の検討から2シリーズグランツアラーの中古車は、
■しょっちゅう壊れまくるタイプの車ではない
■走行性能も悪くない(ディーゼルターボ搭載車は、むしろ良好である)
■使い勝手も(2列5人乗りと割り切れば)悪くない
■デザインも(人それぞれではあるが)そんなに悪くはない
ということがわかった。
……ならばなぜ、中古車相場が妙に安いのか?
結局は、「それを求める人の数が少ないから」というのが答えになる。言い方を変えて率直に言うならば、「人気薄だから安い」という身もふたもない話である。
ミニバンを求める人の数は多いが、「便利で安価な国産ミニバンではなく、わざわざ輸入車のミニバンを求める人」の数は少ない。
そしてその中でも、「BMWの3列シート車を求める人」の数はさらに少ない。BMWというブランドには「スポーティ」というイメージが染み付いているため、「四角い箱型のBMW」を求める人は――いないわけではないのだが、少ないのだ。少ないから、イマイチ売れないのだ。
ということで、「どこかに何か問題があるわけではないのだが、とにかくいまひとつ人気薄なため、安めの価格設定にせざるを得ない」というのが、BMW 2シリーズグランツアラー中古車の実像である。つまり「お買い得」なのだ。
……とはいえ、この話が刺さる人の数は、やっぱり多くはないのだろうと推測する。
だが、もしもこれをお読みのあなたに刺さったならば――特にディーゼルターボエンジン搭載の「218d」は、注目に値するMPVである。走りも楽しめる実用MPVとして、ぜひ前向きに検討を開始していただければ幸いである。
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BMW 2シリーズグランツアラー(現行型) × 総額150万円以下 × 全国▼検索条件
BMW 2シリーズグランツアラー(現行型) × 「218d」 × 全国自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。