プジョー508SW▲SUVが登場するまで、アウトドアへ出かけるならステーションワゴンだった。つまり、それだけ積載量は申し分ないということ。しかも背が低くて走行性能の面でも有利

流通台数が少ないから、他人とカブらないというメリットが!

ロールスロイスやランボルギーニが参入するほど、世の中はSUVで溢れている。その中でクーペ風にするなど、「他とは違う」感を各社懸命に模索しているけれど、これだけ街中でたくさん見かけるようになると、もはや厚みのあるSUVよりは、最初から薄くてスタイリッシュなステーションワゴンの方が魅力的に見えないだろうか。

世界的に人気のSUVと比べて、ステーションワゴンにはロールスロイスやランボルギーニも手を出していない。売れ筋も国産車ならスバル レヴォーグかカローラワゴン、輸入車でも街でよく見かけるのは定番のドイツ御三家か、北欧の雄であるボルボくらい。

だからこそ、前述した定番モデルを外すだけで、「他とは違う感」のあるモデルを手に入れることができる。だいたいステーションワゴンは、積載量だってSUVとそう大きくは変わらない。実際、仕事上荷物の多いカメラマンやスタイリストたちにもいまだに人気なのだ。それに背が低い分、ルーフキャリアを使えば屋根の上に荷物や自転車だって載せやすい。むしろ目的地までの道中、高速道路やワインディングでは背の低い、つまり重心の低いステーションワゴンの方が断然有利だ。

では定番モデルを外すと、どんなステーションワゴンがあるのか。今回は「他とは違う感」に加えて「他人とカブりにくい」イギリスとフランスの現行型車からレアモデルを選んでみた。いずれも中古車の流通台数が100台以下で、希少性が高く個性が際立つモデルだ。
 

新生プジョーを象徴するワイド&ローなステーションワゴン
プジョー 508SW(2代目)

プジョー508SW▲衝突被害軽減ブレーキはもちろん、ストップ&ゴー機能付きアクティブクルーズコントロールや、ドライバーが車線内でキープしたい位置を選べるレーンポジショニングアシスト機能なども備える。リアゲートはバンパー下に足を出し入れするだけで開閉可能
プジョー508SW▲ラゲージ端はファストバックの508よりもさらに30mm低く、24mm幅広になるなど、荷物の積載性が考慮されている。また、キャビンとの間を仕切るセパレーションネット(ドッグネット)や、ラゲージフックレールなども備えられているので使いやすい

2019年3月にデビューした508は、3ボックスの4ドアサルーンではなく4ドアファストバックというデザインが与えられた。遅れて同年6月に追加されたそのステーションワゴンも、やはり従来のプジョーのステーションワゴンとはひと味違う。フロントマスクはファストバック同様、新世代プジョーの象徴である、猛獣の牙のようなLEDデイタイムライトが走るし、全幅1860mm×全高1420mmというワイド&ローなステーションワゴンは他にあまりない。

全長4790mmと、508よりも40mm伸ばされたボディはラゲージルームに当てられている。そのためスタイリッシュに見えてもラゲージ容量は通常時で530Lと、ライバルのメルセデス・ベンツ Cクラスワゴンの470Lよりも大きい。ワンタッチで後席の背もたれを倒すと、同時に座面も沈み込み、1780Lの大容量でフラットなスペースを作り出せる。

搭載されるエンジンは1.6Lターボと、2Lディーゼルターボ。いずれも8速ATが組み合わされ、FFのみとなる。どこまでもフラットライドでしなやかな乗り心地や、コーナリング時はステアリングの操作に気持ちよく反応する俊敏性は、特にここ数年のプジョーならではの味。身内のシトロエンとの差が明確になっている。

新車時の車両本体価格は442万~517万円。原稿執筆時点で中古車は46台が掲載されていた。走行距離3万km未満の物件が支払総額360万円以下から見つけることができる。
 

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並のスポーツカーなら峠道でブッチぎれる!? 俊足ワゴン
ルノー メガーヌスポーツツアラー(初代)

ルノー メガーヌスポーツツアラー▲パフォーマンスに合わせて制動力に優れた大径ブレーキディスクを装備。ラゲージ内に備わる12V電源ソケットはアウトドアで重宝するだろう。衝突被害軽減ブレーキやアダプティブクルーズコントロールなど先進安全運転支援機能を標準装備
ルノー メガーヌスポーツツアラー▲走行モード(コンフォート/ニュートラル/スポーツ/任意)に合わせてエンジン音が変化し、エアコンも走行モードに応じて自動調整される。12個のセンサーで駐車時にステアリング操作をしなくてもいい駐車支援機能が標準装備となる

2017年4月にデビューしたハッチバックのメガーヌと同時に、ステーションワゴンである「スポーツツアラーGT」も導入された。その名が示すように、ニュルブルクリンクFF最速モデル、R.S.もラインナップするメガーヌの名に恥じない、快速ステーションワゴンだ。

最高出力205ps/最大トルク208N・mを発揮する1.6Lターボを搭載し、2ペダルの7速デュアルクラッチトランスミッションが組み合わされる。しかしスポーツツアラーGTの最大の魅力はパワートレインではない。R.S.にも採用されている「4コントロール」にあるのだ。これは約60km/h(スポーツモードでは80km/h)以上なら前輪と後輪が同じ方向を向き、それ以下なら逆位相となる機能。つまりコーナリング時はFFとは思えないほどクイクイと車が曲がりたがり、駐車する際は大きくステアリングを切らなくても車の向きが変えられるという、モータースポーツ由来の技術だ。

走行性能だけでなく、実用性も高い。全長4635mmはハッチバックのメガーヌGTより240mmも長く、ラゲージ容量は通常時で580Lとひと回り上のモデルであるCクラスワゴンよりも大きい。また、ラゲージにあるレバーを引くだけで後席背もたれが倒れるので、容量を簡単に1695Lまで拡大できる。

新車時の車両本体価格は354万円。原稿執筆時点で見つかった中古車はわずか9台とかなりのレア車だ。走行距離はいずれも3万km未満で、中には1万km未満という物件も。支払総額ですでに300万円を切っている物件もあった。
 

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エレガントなスタイルなのに、お買い得感が高い大穴系ワゴン
ジャガー XFスポーツブレイク(初代)

ジャガーXFスポーツブレイク▲パノラミックサンルーフの面積は1.6平米と、クラス最大級の大きさ。もちろん衝突被害軽減ブレーキやアダプティブクルーズコントロールを含む先進の安全&運転支援機能を装備する。2019年モデルからスーパーチャージャー付き3Lエンジン搭載モデルと、ディーゼル車に4WDモデルが加えられた
ジャガーXFスポーツブレイク▲シフトレバーの代わりにダイヤル式シフトセクターが備わる。エンジンが始動すると、フラットなセンターコンソールからスッと浮き上がる所作が実にエレガント。一時ジャガー全車で採用されていたが、現在他車種はモデルチェンジの度に通常のシフトノブに変わっているため、この仕様は希少だ。日本仕様は右ハンドル

メルセデス・ベンツ EクラスやBMW 5シリーズが対抗馬となるXFに、スポーツブレイクが加わったのは、セダンから約2年後となる2017年11月。ジャガーがあえて「スポーツブレイク」なる名をこの車に授けたのは、恐らく「シューティングブレイク」を想起させたかったからだろう。

「シューティングブレイク」とは、かつてイギリスの貴族たちが狩猟で乗っていた車のこと。ベースはクーペだが、猟銃などを乗せるため、コーチビルダーに荷室を作らせた車を指す。そんな“優雅なアウトドア”をイメージさせるために、「スポーツブレイク」と命名したのかもしれない。

そのためか、XFスポーツブレイクは優雅なデザインをまとっている。ラゲージ容量はライバルであるEクラスワゴンの640Lよりも少ない565L(通常時。後席を倒すと1700L)。代わりに、というわけではないが手を振るだけで頭上のパノラミックサンルーフを開閉できる機能や、積載物の重さを問わず車を水平に保つ、セルフレベリング機能付きリアエアサスペンションなど、エレガントな移動時間を生むための機能をたっぷり備えている。エンジンは2Lターボと、2Lディーゼルターボ。どちらも8速ATが組み合わされ、FRに加えディーゼル車には4WDの設定もある。

新車時の車両本体価格は722万~756万円。原稿執筆時点で中古車は61台が見つかったが、走行距離2万km未満の物件がほとんどだ。それでいて支払総額400万円以下から見つかるという、お買い得なレアモデルと言えるだろう。
 

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ジャガー XFスポーツブレイク(初代)×全国
文/ぴえいる、写真/尾形和美、プジョー、ルノー、ジャガー

ぴえいる

ライター

ぴえいる

『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はアウディA4オールロードクワトロと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。