ダイハツ ロッキー▲板金技術の進歩により、複雑な造形の車が増えた今となっては、希少となった「カクカク」した形の車。実は今、ひそかに人気が再燃している(写真はダイハツ ロッキー)

パキッとした平面で構成された、角張ったスタイルは、新鮮&カッコいい!

今売れているSUVといえば全長4m前後のトヨタ ライズ/ダイハツ ロッキー、あるいはもう少し大きいトヨタ C-HR、ホンダ ヴェゼルといった、比較的コンパクトなSUVだろう。

街乗りにも便利なこのサイズのモデル、かつてはハッチバックスタイルが主流だったが、今ではSUVが多くの人気を集めている。

振り返って見れば、クロカン四駆と呼ばれていた時代も、これくらいのサイズの「SUV」があった。

しかも、最近のモデルに見られる曲線を多用した複雑なデザインとは違い、パキッとした平面で構成され角張ったスタイルは、今見ると新鮮でカッコいい。

現に人気が再燃しているモデルも、実は多い。

当時の板金技術では、できることが少なかったのだろう。

けれど、それが逆に「平面を使ってどうやってカッコよく、他車との違いを出すか」という創意工夫が働く理由になったのかもしれない。

今回はそんな平面を多用した「カクカクSUV」を5車種紹介しよう。

なお人気の再燃と、もともと経年ゆえの台数減少もあって、中古車人気が高くなり、年式のわりに価格が高止まりしているモデルが多い。

しかも、今後台数は減ることはあっても増えることは考えにくいため、価格がさらに上がる可能性もある。

もしも気になる中古車を見つけたら、早めの行動が必要だ。

ボディバリエーションが豊富な元祖シティSUV
スズキ エスクード(初代)

スズキ エスクード▲3ドアのボディバリエーションはハードトップとコンバーチブル、バン仕様のハードトップの3種類。1990年8月からレジントップ(後席部の屋根・側面・後方が脱着式)も追加された

初代スズキ エスクードが登場したのは1988年。

バブル経済全盛期で、クロスカントリー4WD(クロカン4WD)を含むRV(レクリエーショナル・ビークル)が人気の時代だ。

当時は三菱 パジェロやいすゞ ビッグホーン、トヨタ ランドクルーザーなど、全長4.5mを超える大きなサイズに3L前後のエンジンを搭載するクロカン4WDが主流だった。

一方で、軽自動車クラスではスズキ ジムニーが人気を集めていた。

その間隙をつくサイズ感で登場したのがエスクードだ。

最初は1.6Lエンジンを積む3ドア(全長約3.6m)で登場。3速ATと5速MTが用意された。

コンセプトは都会派の4WD。オフロードだけでなく、普段の街乗りもこれ1台で、というクロカンだった。

とはいえジムニーを育てたスズキゆえ、ジムニーやランドクルーザー同様ラダーフレーム構造を採用。

4WDシステムは副変速機を備えるパートタイム式と、今どきのSUVより本格的だ。

一部グレードを除いて、4WDに切り替える際にいちいち外に出てホイールをロックしなくていいフリーホイールハブが備えられるなど、街乗り使用にも配慮されている。

1990年8月には1.6Lエンジンの改良とともに、3速から4速ATとなった。

さらに同年9月にホイールベースを伸ばした5ドアモデルの「ノマド」が追加された。

1994年には2L V6エンジンモデルと2Lディーゼルターボモデルが、モデル末期の1996年には2.5L V6モデルも加えられた。

デビュー時の車両本体価格は、136万4000~165万3000円。

原稿執筆時点(2020年7月20日)で4台発見した。うち3台は支払総額100万円以内で狙える。

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現行型とは異なり、見た目も中身も硬派なSUV
ダイハツ ロッキー(初代)

ダイハツ ロッキー▲前席部にサンルーフを備え、後席部の屋根・側面・後方が脱着できるレジントップという、オープンカー(というか、バギーのような)感覚で楽しめるモデルだった

エスクードに続くように1990年に登場したのがダイハツ ロッキーだ。

1997年にいったん生産が終了しているモデルで、2019年に登場し現在人気のロッキーは、名前が同じ(復活)だが関連性は特にない。

ただ、どちらも「若者に向けたカジュアルSUV」という狙いは同じで、初代の方がより本格的なオフローダーだった。

搭載されたエンジンはエスクード同様1.6L。これに当初は5速MTのみだったが、1992年に4速MTモデルも追加された。

カジュアルといってもライバルのエスクード同様、ラダーフレーム構造を採用する本格派。

4WDシステムには、フルタイム式と、エスクードやジムニーのように副変速機を備えたパートタイム式の2種類があった。

しかし、オフロード志向の強いユーザーが多かったのか、手軽なフルタイム式は自然消滅した。

パートタイム式は、4WDに切り替える際にいちいち外に出てホイールをロックしなくていいフリーホイールハブを標準装備している。

エスクードが5ドアのノマドを、トヨタ RAV4も5ドアを追加したが、ロッキーは3ドアのみ。

結局これがあだとなったのか、先述のとおり1997年に生産が終了し、後継モデルが登場することはなかった。

デビュー時の車両本体価格は144万5000~179万8000円。

原稿執筆時点で2台発見し、どちらも支払総額100万円以下だった。

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2代目ジムニーの、無骨な普通車バージョン
スズキ ジムニーシエラ(初代)

スズキ ジムニーシエラ▲2代目ジムニーにはソフトトップやハードルーフなどがあったが、シエラのボディバリエーションはハードルーフのみ。バリエーションが豊富なエスクードとのすみ分けもあったのかもしれない

軽自動車のジムニーに、軽規格より大きなエンジンを載せ、トレッドを拡大することでオンロードでの走行性能を高めたモデルは、1977年から設定されていた。

ジムニーの輸出モデルをベースとしたもので、初代ジムニーの時は「ジムニー8」、2代目では「ジムニー1000」「ジムニー1300」があり、1988年のエスクードの登場でいったん廃止されたが、1993年にジムニーシエラとして復活した。

シエラのベースは2代目ジムニー(の輸出モデルである「サムライ」)で、1990年の軽自動車規格変更によりジムニーが大きく変わった後のモデルとなる。

搭載されたエンジンは1.3L。当初は5速MTのみだったが、すぐに3速ATが追加された。

もちろん悪路走破に有利なラダーフレーム構造、4WDシステムは副変速機を備えるパートタイム式が採用されている。

1995年にジムニーとともにサスペンション形式が変わり、悪路走破性と乗り心地が改善されている。

その他にもエンジンの改良やフリーホイールハブの採用など、乗用車としての性能が高められている。

これは、同じ時期にデビューした三菱 パジェロミニの人気が影響したと思われる。

モデル末期の1997年には、ジムニーとともに2WD/4WDの切替を走行中でもできる「ドライブアクション4×4」が搭載された。

デビュー時の車両本体価格は137万8000円(5速MT)。

原稿執筆時点で21台見つかり、おおよそ総額100万円前後といったところ。

また、カスタムされている中古車も多いのが特徴だ。

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専門店ができるほどブームになっているSUV
日産 ラシーン(初代)

日産ラシーン▲乗る人を主人公にするため、シンプルな四角い箱型にしたというデザイン。バックドアは上下分割式で、背面にスペアタイヤを備えていてもバックドア上部だけ開閉することができる

小型セダンであるサニーをベースに、「乗用車感覚で気軽に4WDを楽しめる」をコンセプトに開発されたのがラシーンだ。

上記3台と違い、ボディ構造はサニー(乗用車)と同じモノコックで、4WDシステムはサニーと同じフルタイム4WD。

つまり雪道などでは安心して走れるといった、いわゆる生活四駆だ。

そのため他の4台と比べると悪路走破性は高くないが、その代わりオンロードで快適な乗り心地を提供してくれる。

生活四駆といってもスキーにも出かけられるし、砂場だって脱出できる。

最低地上高は170mmとそこそこあるので、大きな岩がゴロゴロ転がっているようなキャンプ地でもない限り、ラシーンで十分出かけられるはずだ。

当時はそのコンセプトがあまり理解されず、結局1代限りで終わってしまったが、再評価された今ではラシーン専門店もあるほど人気となっている。

搭載されたエンジンは当初1.5Lのみ。これに4速ATが組み合わされた。

その後1.8Lモデルや2Lモデルが追加され、2Lモデルは5速MTも用意された。

全高が1450mm(ルーフレールの備わるタイプIIとIIIは1515mm)とSUVとしてはかなり低いが、意外と室内は広い。

大型サンルーフが用意されていた他、オプションで脱着可能なテレビもあった。

デビュー時の車両本体価格は157万~219万8000円。

原稿執筆時点で121台と台数が多く選びやすい。価格は支払総額35万~180万円と幅が広い。

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パジェロミニの普通車バージョンはオン/オフとも得意
三菱 パジェロジュニア(初代)

三菱 パジェロジュニア▲迫力あるワイドフェンダーや大型バンパーを備えることができたパジェロジュニア。当時の2代目パジェロのショートボディの雰囲気は、軽規格に収めなければならなかったミニよりもジュニアの方が上手く表現されていると思う

当時の三菱の大ヒット作「パジェロ」を、軽自動車サイズに縮小したようなパジェロミニが1994年にデビュー。

翌年の1995年にはパジェロミニに軽規格より大きなエンジンを載せ、トレッドを拡大することでオンロードでの走行性能を高めたパジェロジュニアが登場する。

軽自動車のパジェロミニは、乗用車が用いるモノコックボディに、クロカン4WDが多く採用するラダーフレームをビルトインする凝った構造を採用。

1999年に登場した3代目パジェロも、それまでのラダーフレーム構造から、同じようなビルトイン構造を採用している。

乗用車とクロカン4WDのいいとこ取りを狙ったもので、当然パジェロミニをベースとしたジュニアも、このメリットを生かした「街乗り4WD」となる。

むしろ、排気量の余裕やワイドトレッド化によって、乗り心地や走行性能はパジェロミニよりもアップしている。

搭載されたエンジンは1.1L。これに3速ATまたは5速MTが組み合わされた。

副変速機を備えるパートタイム4WDだが、(パジェロミニ同様)イージーセレクト4WDシステムを採用。

これは、80km/h以内なら走行中でも副変速機の操作のみで2WD/4WDを切り替えられるというもの。

街乗りが中心だけど悪路も走りたいという人にピッタリだ。

販売期間は3年未満と短命だったが、代わりに1.8Lエンジンを搭載した後継モデル「パジェロイオ」が1998年に登場している。

デビュー時の車両本体価格は134万~162万5000円。

原稿執筆時点で15台見つかり、ほとんどが支払総額100万円以内で狙える。

ただし、モデル末期に追加されたクラシックカー風カスタムカーの「フライングパグ」が半数を占めているので、純粋なカクカク系は7台となる。

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文/ぴえいる、写真/スズキ、ダイハツ、日産、三菱

ぴえいる

ライター

ぴえいる

『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はアウディA4オールロードクワトロと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。