高いのか、それとも意外と安いのか? 991型ポルシェ 911の選び方をちょっと真剣に考えてみる
2020/01/24
「新世代だが比較的お安い」というのが人気の理由か?
カーセンサーだけがもっている膨大なデータをもとにした、毎年好例の中古車注目度&競争率ランキング「カーセンサー・カー・オブ・ザ・イヤー」。その2019年版で総合6位に付け、輸入車としては第2位となったのは旧型ポルシェ 911(7代目・991型)でした。
1964年以来の長い歴史をもつポルシェ 911ですが、その中でも2011年から2019年まで販売された991型は、
●新世代の技術を用いたモダンな911で
●それでいて現行992型と比べれば相場は比較的手頃で
●なおかつターボ化される前の前期型は、自然吸気エンジンならではの切れ味を堪能できる
ということで人気となっているのでしょう。
もちろん「比較的手頃」といっても高年式のポルシェ 911ですので、その相場は決してお安くはありません。しかし「新世代の911をまあまあ現実的な予算で狙える」という意味で、カーセンサーnetにおいて991型が輸入車2位、総合でも6位に入ったというのは大いに納得です。
ということで、これから991型ポルシェ 911を探してみたいという方に向けて「結論としてどの年式のどんなグレードを、いくらぐらいで買えばいいのか?」という部分を研究してみたいと思います。
似たような数字とアルファベットが並ぶ「グレード」をまずはおさらい
まずはグレードの整理から始めましょう。同じ991型911でも「カレラ」の他に「カレラ4」「カレラ4S」という似たような名前の違うグレードがあったり、「カレラS」と「カレラGTS」もあったりします。
詳しい人には今さらな話でしょうが、「これから興味をもって探す」という人にとっては微妙にわかりにくいグレード構成かと思いますので、そのあたりをなるべく簡潔にまとめてみます。
< 991型ポルシェ 911(前期型)の主なグレード >
【1】カレラ
→最もベーシックなグレード。エンジンは最高出力350psの自然吸気3.4Lで、駆動方式はRR
【2】カレラS
→カレラの高出力版。エンジンは最高出力400psの自然吸気3.8Lで、駆動方式はRR
【3】カレラ4
→カレラの4WD版。エンジンは最高出力350psの自然吸気3.4Lで、リアフェンダーはカレラよりも幅が広い
【4】カレラ4S
→カレラ4の高出力版。エンジンは最高出力400psの自然吸気3.8L
【5】GT3
→走行性能を極限まで高めた自然吸気エンジン+RRの武闘派グレード。エンジンは最高出力475psの3.8L
【6】ターボ
→強力なターボエンジンを搭載するグレード。エンジンは最高出力520psの3.8Lツインターボで、駆動方式は4WD
【7】ターボS
→ターボの高出力版。エンジンは最高出力560psの3.8Lツインターボで、駆動方式はこちらも4WD
【8】カレラGTS
→カレラSとGT3の中間に相当するモデル。エンジンは最高出力430psの自然吸気3.8Lで、駆動方式はRR
【9】カレラ4 GTS
→カレラGTSの4WD版
この他にも「カレラGT3 RS」等々のかなり強烈なスペシャルグレードがあったり、それぞれのグレードにオープンモデルがあったりなかったりするのですが、すべてを挙げていくとキリがないため、とりあえず以上を「主なグレード」とさせていただきます。
2016年2月、カレラ系のエンジンはダウンサイジングターボに
グレードだけでも少々ややこしい991型ポルシェ 911ですが、前章では説明を割愛したものの、実際には「7MTとPDK(ツインクラッチ式のAT)」がグレードによってあったりなかったりするという、トランスミッションの問題もあります。
また、2016年2月にはかなり大きなマイナーチェンジがありました。それは、1964年のデビュー以来かたくなに「自然吸気の水平対向6気筒」にこだわっていたポルシェ 911カレラ系のエンジンが、ついに「3Lのダウンサイジングターボ」に変更されたということです。
3.4Lまたは3.8Lの自然吸気だったカレラ系のエンジンはおしなべて「3Lのツインターボ」となり、両エンジンとも最高出力は20ps向上。そしてカタログ燃費も12%改善されました。
また、このビッグマイナーチェンジに伴ってPASM(電子制御式可変減衰ダンパー)がすべてのカレラ系で標準装備となり、911ターボや911 GT3に採用されていた後輪操舵機構「アクティブ・リアアクスルステアリング」が911カレラS/カレラ4Sにオプション設定されるようにもなりました。
ダウンサイジングターボ化は時代の要請であり、なおかつそれにより性能自体も上がっているわけですから、基本的には何の文句もありません。しかし、昔ながらのポルシェ 911の味わいを愛好している人の一部からは、「ターボ化された後期型はイマイチ好きじゃない……」という声が上がっているのも事実です。
ちょっと前説が長くなってしまいましたが、以上を踏まえて次章、「じゃあ結論としてどれがオススメなのよ?」という部分を考えてみます。
現実的な予算で考えるなら選択肢はこの3種類
中古車選びに「絶対的な正解」というのは存在しませんので、991型ポルシェ 911を探すにあたっても「絶対のオススメグレード」というのはありません。各自の好みや価値観、あるいは予算に応じた複数のオススメがある――というのが基本的な考え方となります。
ということで今回は、勝手に3パターン考えてみましたので、ご参考までに。
◆とにかくお安く991型を手に入れたい! という人に
⇒
お安くといっても車両価格700万円台、支払総額で800万円台になりますが、それでもいちおう最安ゾーンにて、走行3万km台ぐらいの991型ポルシェ 911カレラ PDKを入手することができます。
「できればPDKではなく7MTで!」と思う人もいるかもしれませんが、7MTの前期型カレラは希少かつ一部で人気なため、車両700万円台ではちょっと無理でしょう。7MTだとイメージとして「車両800万円台~/総額900万円台~」ぐらいになってしまいます。
▼検索条件
ポルシェ 911(2011年11月~2014年3月生産モデル)×カレラPDK×全国◆比較的お安く、なおかつ高速道路などで安定感のある走りを堪能したい! という人に
⇒
これまた「比較的お安く」といっても決して安くはないのですが、車両価格900万円台にてまずまず低走行な前期型カレラ4S PDKを見つけることができます。後輪駆動のカレラも軽やかでナイスですが、カレラ4Sの4WDならではの安心感はやはり魅力です。
「比較的お安く」ということであれば、高出力版であるカレラ4S PDKではなく「素のカレラ4 PDK」の方がいいのでは? と思うかもしれませんが、両者の中古車価格にはあまり大きな差はありません。であるならば、もちろん各自の価値観次第ではあるのですが、ここはせっかくですから3.8Lで400psの「4S」を選んだ方が、後々の満足度は高いはずです。
▼検索条件
ポルシェ 911(2011年11月~2015年8月生産モデル)×カレラ4S PDK×全国◆とにかくポルシェ 911らしい「切れ味」を比較的手頃な予算で味わいたい! という人に
⇒
「切れ味」という面ではカレラやカレラSよりもGT3あたりの方が数段上なのですが、その分、GT3等々はお値段も数段上です。またGT3等の武闘派グレードは「普段使い」には向いていませんので、日常的な使用を購入の主たる目的としているのであれば、普通のカレラ系を選んだ方がいいでしょう。
で、なおかつターボチャージャーが付かない自然吸気エンジンだった前期型の、後輪駆動+7MTのカレラまたはカレラSを探すことができれば、その「切れ味」は抜群です。
これは速さうんぬんの問題ではなく「気分の問題」です。実際は、アマチュアが後輪駆動車をガチャガチャ手動で変速させるより、四輪駆動車をPDK任せで変速させた方が(たぶん)速く走れるでしょう。
しかしそんなことはどうでもいいんです。人生で大切なのは車の速度ではなく「気分」ですから、ぜひ7MTの自然吸気カレラで切れ味抜群の走りを楽しんでいただければと思います。相場は、おおむねですが「800万~1100万円」といったところです。
ただ問題は「流通量がきわめて少ない」ということ。991世代のポルシェはその大半がPDKですので、7MTの前期カレラ/カレラSは2020年1月中旬現在、全国で7台しか流通していません。
▼検索条件
ポルシェ 911(2011年11月~2015年8月生産モデル)×カレラ/カレラS×MT×全国以上、ポルシェ 911マニアの方にはやや食い足りない内容だったかもしれませんが、「これから初めて991型ポルシェ 911を探してみたい」という人にとって、今回の記事が多少なりとも参考になったならば幸いです。
それでは、どうか良き中古車ライフ&ポルシェ 911ライフを!
▼検索条件
ポルシェ 911×2011年11月~2019年6月生産モデル×全国自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。
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