BMW 2シリーズクーペ▲トップグレードは、スペックで2番手より上に立とうとするから最高出力/最大トルクを高め、当然そのスペックを引き出すために足回りも変更されたりする。むしろ2番手グレードこそ、普段使いの中でのトップグレードではないか?

サーキット走行しないなら2番手グレードがオススメ

かつて「2番じゃダメなんですか?」という言葉が話題になったけれど、今、あらためてみなさんに問いたい。

2番手グレードじゃダメですか?

バブル時には「一番いいヤツもってきて」と、カタログすら見ずに注文した人がたくさんいたけれど、今は自分の暮らしに照らし合わせながら、じっくりと比較して選ぶ時代だ。

「オーバースペック気味なトップグレードを選ぶより、2番手でも十分……いやむしろ魅力的」みたいなことが、たくさんあるんじゃないだろうか。

その要因のひとつに、技術の進歩がある。例えば、スマホ。

最近発売された、iPhone 11pro(イレブンプロ)と11(イレブン)を例に考えてみよう。

カメラ性能は、11proが超広角/広角/望遠が可能なのに対して11では望遠が使えないとか、11proの耐水性が4mなのに対し11は2mなどの違いはあるものの、搭載されるチップは同じだし、もちろん同じアプリだって使える。

日常使いがメインならば、恐らく両者の性能の違いはほぼわからないだろう。

だいたい、耐水性が4mではなく2mになって困る状況って……あります?

生活に見合うという観点からすれば、車はスマホ以上に2番手グレードに利がある。

なにしろ今ドキの車は、そもそものスペックが高い。例えば、フォルクスワーゲンの人気モデルであるゴルフ。

1976年に登場した初代ゴルフの高性能グレード「GTI」の最高出力は110psだったが、現行型では「TSIハイライン」というベーシックグレードですら余裕で上回る140psも出ている。

むしろ、トップグレードは時に「サーキットじゃないと、そんなハイスペック引き出せませんよ」なんていうほどオーバースペックになりがちだ。

それにトップグレードは、群を抜いて価格が高いモデルも多い。

だから、トップグレードのひとつ下を狙うことこそが、今ドキの正解と言えるのではないか。

もちろんすべての車がそうではないだろうが、今回は少なくとも2番手でも十分スゲー! と思える、いわばサーキットを主戦場としない、実用域でのトップグレードを紹介したい。

もちろん紹介するのは、そもそものスペックが高い現行型モデルばかりだ。

M社がチューンしたエンジン&足回りを装備
BMW 2シリーズクーペ M235i/M240i(現行型)

BMW 2シリーズクーペ▲M235iおよび2016年のマイナーチェンジを経て名前を変えたM240iは、M2クーペのような軽量化された専用サスペンションや、左右のトルクを自在にコントロールできるアクティブMディファレンシャルはない
BMW 2シリーズクーペ▲M2がM社の7速M DCT(M社の開発したデュアルクラッチ式の2ペダルMT)なのに対して、M235i/M240iは他グレードと同じ8速ATとなる。どちらも6速MTが選べる

BMWのトップグレードは、3シリーズならM3、5シリーズにはM5という具合にM社が開発を担当しているMモデルが飾る。

これらは、1973年に登場した同社初のスーパーカーM1から始まった、歴史と伝統のあるトップモデルだ。

ところが最近、Mモデルとは別にMパフォーマンスという新たな高性能モデルを用意する車種が増えている。

その中で今回紹介するのが、2シリーズクーペのMパフォーマンスモデル「M235i」&「M240i」だ。

M社が、3L直6ターボと足回りのセットアップを行っている。

後に登場したMモデルのM2(同じく3L直6ターボを搭載)とM240iのスペックを比べて見ると、M240iが最高出力340ps/最大トルク500N・mに対し、M2は370ps/465N・m。

最高出力を重視したM2と、最大トルクを重視したM240i、といった具合に両車のチューニングの方向性が異なっている。

その他にも、M2には7速DCTなどの様々なM社が開発したパーツが備わるが、こうした装備はプレスリリースにも書かれているように、「サーキットでの究極の運動性能と日常走行における高い実用性の両立」のため。

つまり、サーキットを走らない人にとってはM235i/M240iでもM社が手がけたエンジンと足回りをM2より手頃に、また他のグレードより存分に「駆け抜ける歓び」を味わえるというわけだ。

車両本体価格はM235i/M240iが584万~701万円なのに対して、M2は770万~894万円。

原稿執筆時点(2019年11月6日)で、M235iなら新車時の半額以下となる支払総額250万円以下から選ぶことができる。M240iは支払総額400万円以上。ちなみにM2は支払総額約500万円からとなる。

▼検索条件

BMW 2シリーズクーペ(現行型)×M235i/M240i×全国

軽々と走る伝統のホットハッチ
フォルクスワーゲン ゴルフ GTI(現行型)

フォルクスワーゲン ゴルフ▲GTIも専用サスペンションが組み込まれ、他のグレードより車高が15mm低い。ちなみにRラインはGTIよりさらに車高が5mm低い。フロントグリルにはGTI伝統の赤いラインが入る
フォルクスワーゲン ゴルフ▲初代ゴルフからGTIに設定されているチェック柄のシートを装備。赤いステッチが施されたステアリングは、Rライン同様、プログレッシブステアリング機能(切れ込むにつれて少ない操作で操ることができる)を備えている

かつてゴルフのトップモデルといえばGTIだった。

初代から続く格式のあるグレードで、70~80年代のホットハッチ全盛時代をけん引してきた。

ところが、4代目ゴルフもそろそろフルモデルチェンジを迎えようとしているタイミングで突如、GTIの上にR32という新たなグレードが設けられ、その後の6、7代目ではRと名称を変更してトップグレードの座に付いていた。

R32やRが他のゴルフと大きく異なるのは、二輪よりも四輪で路面をつかんだ方が速いとばかりに4WDシステムを採用したことだ。

エンジンはR32時代(4~5代目ゴルフ)こそV6を搭載したが、6代目以降GTIとRはいずれも2L直4ターボエンジンを積む。

ただし、最高出力は現行型GTIが230psでRは310ps、最大トルクはGTIが350N・mでRは380N・mと差がある(数字はいずれも2017年のマイナーチェンジ後)。

とはいえ、現行型GTIはRより車両重量が約120kgも軽く、電子制御式ディファレンシャルロックなどを備えるなど、スムーズにコーナリングする機能を備えている。

峠のワインディングロードをひらりひらりと、かつてのホットハッチ気分で(もちろん当時よりずっと速く)楽しむのであれば、GTIで十分というわけだ。

6速DSG(ダブルクラッチ式の2ペダルMT)の他に、2016年から6速MTも選べるようになった。

2013年デビュー時の車両本体価格(DSG)は369万円。一方、Rは510万円。

原稿執筆時点で、2014年式なら支払総額150万円以下から選ぶことができる。ちなみにRは支払総額約250万円からと、100万円ほどの差がある。

▼検索条件

フォルクスワーゲン ゴルフ(現行型)×GTI×全国

ゴルフのトップモデルと同等の性能
アウディ S3スポーツバック(現行型)

アウディ S3スポーツバック▲専用スポーツサスペンションを備えるためA3と比べて車高は10mm低い(RS3は25mm低い)。ちなみに最高出力は2014年に285ps、2017年に290psへと引き上げられている
アウディ S3スポーツバック▲コンフォートやスポーツなどエンジンの出力特性や乗り心地を変えられるアウディドライブセレクトを標準装備。街乗りでは省エネ走行、峠道は楽しくと、場所や気分に合わせて走りやすい

アウディはベーシックモデルのモデル名の頭にAを、サーキットでも通用する高度なチューニングを施したモデルに「レーシングスポーツ」に由来するRSを付けている。

そして、その間に位置するいわゆる2番手が「スポーツ」に由来するSシリーズだ。

今回紹介するのは、同社のプレミアムコンパクトハッチバックであるA3スポーツバックをベースとした、S3スポーツバック。

実はこのS3スポーツバック、アウディと同じグループであるフォルクスワーゲンのゴルフRと、エンジンや4WDシステムを含むプラットフォームが同じなのだ。

つまり2番手モデルとはいえ、ゴルフのトップモデルと性能がほぼ同じといってよい。

2013年デビュー時の2Lターボエンジンのスペックは、最高出力280ps/最大トルク380N・m。ゴルフRと同じ数値だ。

もちろんアウディ自慢の4WD、クワトロシステムを搭載し、6速トロニック(ダブルクラッチ式の2ペダルMT)を搭載する。

ちなみにトップグレードのRS3は、最高出力367ps/最大トルク465N・mを発揮する2.5Lターボエンジンを搭載し、Sトロニックは7速となる。

デビュー時の車両本体価格は544万円、RS3スポーツバックは756万円。

原稿執筆時点で、登場初期型なら新車時の半額程度となる、総額200万円台から見つけることができる。ちなみにRS3は、支払総額550万円以上といった感じだ。

▼検索条件

アウディ S3スポーツバック(現行型)×全国

いずれのモデルも2番手とはいえ、公道でそのもてる能力をフルに発揮できることはほとんどないレベル。

「トップモデルを買うには予算が……」などと消去法で選ぶのではなく、積極的に選びたいモデルと言えるんじゃないだろうか。

文/ぴえいる、写真/BMW、フォルクスワーゲン、アウディ

ぴえいる

ライター

ぴえいる

『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はルノーのアヴァンタイムと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。