▲台数限定の特別仕様車には、その車がスペシャルモデルであることを示すかのようにシリアルナンバーが入ることが多い。写真はスバル WRX STi S207▲台数限定の特別仕様車には、その車がスペシャルモデルであることを示すかのようにシリアルナンバーが入ることが多い。写真はスバル WRX STi S207

“メーカーの本気”が見え隠れするスペシャルチューンドカー

「本当はこんな車を作りたかった」とか「これだけやると走りがもっと楽しめる」と言わんばかりに、作り手の走りへのコダワリが注ぎ込まれたスペシャルモデル。

コダワリたっぷりのため量産化が難しく、数量限定の高価な限定車となることがほとんどだ。

作り手のコダワリは、買い手にとっても魅力的な場合が多い。中には発表された日にもう完売御礼、なんてこともある。

そのため買う側は「急に言われてもお金の用意ができなかった」「どうしようか悩んでいるヒマもなく完売した」等々、様々な事情で手に入れられなかった人も多いのではないだろうか。

しかし、カーセンサーを根気強く見ていれば、時々中古車としてそうしたスペシャルモデルが、新車時の価格よりもお手頃になって現れることがある。

あの時に買いそびれた人も、あるいは秒速で売れたためそんなスペシャルモデルがあったことすら知らなかった人にも、まだまだ購入できるチャンスがあるのだ。

今回は、そんなスペシャル限定モデルを7台紹介したい。

台数限定ゆえ、いつまた中古車として現れるかわからない、たまたま原稿執筆時点で見つけた、いわば「神7」だ。

ニュルの知見を生かして「匠」が組み立てた
トヨタ 86 GRMN|限定100台

▲86はイジって楽しめるのが魅力のひとつだが、GRMNはさしずめトヨタ自らがイジったモデルと言えるだろう。生産はトヨタ元町工場で行われ、「匠」の技能を有する従業員によって組み立てられた▲86はイジって楽しめるのが魅力のひとつだが、GRMNはさしずめトヨタ自らがイジったモデルといえるだろう。生産はトヨタ元町工場で行われ、「匠」の技能を有する従業員によって組み立てられた


2016年に100台限定で発売された86 GRMN。

レクサス RCとLFA code Xの2台で臨んだ2015年のニュルブルクリンク24時間耐久レースの知見を生かし、道を選ばず、スポーツドライビングの楽しさを存分に味わえる86として開発された。

エンジンの応答性を向上させ、クロスレシオ化された6速MTを搭載。カーボン素材のエンジンフードや樹脂製リアウインドウの採用など、軽量化・低重心化も図られた。

また、サスペンションやブレーキ・タイヤの最適化も行われている。

当時の最もベーシックなモデルの車両本体価格が248.9万円のところ、GRMNは648万円。

原稿執筆時点で走行距離0.3万kmの中古車が、支払総額630万円で見つかった。

まだ新しいスペシャルモデルで、その後継が出ていないこともあり、あまり値落ちしていないようだ。

しかし、すでにフルチューンされているモデルなので、ベースグレードをカスタムして楽しもうとしている人にもオススメできる1台といえよう。

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トヨタ 86(現行型)×GRMN×全国

即日完売が当たり前!? のSシリーズ
スバル WRX STi S207|限定400台

▲写真はNBR チャレンジパッケージ イエローエディション。NBRはニュルブルクリンクを意味し、標準仕様に対して2015年のクラス優勝を記念するオーナメントを備える他、特別色のサンライズイエローが採用されている▲写真はNBR チャレンジパッケージ イエローエディション。NBRはニュルブルクリンクを意味し、標準仕様に対して2015年のクラス優勝を記念するオーナメントを備える他、特別色のサンライズイエローが採用されている


「究極のロードゴーイングSTi」をコンセプトに開発されたこのSシリーズは、最高出力328psを発揮。

ステアリングはクイックになり、可変減衰力サスペンションやアクティブトルクベクタリングの採用によりしなやかな乗り心地とシャープなコーナリングを両立させた。

400台のうち100台が標準仕様で車両本体価格599万4000円、200台がNBR チャレンジパッケージ(同631万8000円)、100台がNBR チャレンジパッケージ イエローエディション(同637万2000円)となる。

ベースのSTiに対して200万円以上高いにも関わらず、即日完売したといわれているモデル。

原稿執筆時点では走行距離3.7kmで支払総額約500万円をはじめ、4台見つけることができた。

2017年にはS208が、2019年にはS209(ただし北米市場限定)が発売されているが、まだまだS207の人気は高い。

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スバル WRX(現行型)×S207×全国

歴代Cクラス最強のモンスターマシン
AMG Cクラスクーペ C63ブラックシリーズ|限定50台

▲前後のトレッドが拡大されたのに合わせてフロントフェンダーは28mm、リアフェンダーは42mmも拡大している。横滑り防止機能のESPはオン/オフの他、スポーツハンドリングモードも備えられた▲前後のトレッドが拡大されたのに合わせてフロントフェンダーは28mm、リアフェンダーは42mmも拡大している。横滑り防止機能のESPはオン/オフの他、スポーツハンドリングモードも備えられた


2011年に大幅な改良が施された旧型(C204型)Cクーペ。

そのC63をベースに歴代Cクラス最強となる最高出力517hp、最大トルク620N・mにまで高められた自然吸気6.3L V8エンジンを載せたブラックシリーズが日本限定50台で販売された。

サーキット走行も視野に入れたカスタマイズが行われ、エンジンの強化には当時のAMGトップモデルであるSLS AMGのパーツや技術が投入されている。

それに合わせ大型オイルクーラーが備わり、好みのセッティングが可能なサスペンションや専用チューニングが施されたブレーキシステムも装備。

そしてリアシートも外され、2シーター化されているという本気っぷりだ。

C63の車両本体価格が1085万円なのに対し、ブラックシリーズは1500万円(4シーターパッケージもプラス40万円で用意された)。原稿執筆時点で3台確認でき、いずれも1000万円以上となる。

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AMG Cクラスクーペ (初代)×C63ブラックシリーズ×全国

初代誕生30周年を記念したスペシャルM5
BMW M5 30 Jahre|限定11台

▲ボディカラーは専用色とかるフローズン・ダーク・グレー。アルミホイールは専用ブラックに塗装されている。ブレーキはMカーボンセラミックが採用されている▲ボディカラーは専用色とかるフローズン・ダーク・グレー。アルミホイールは専用ブラックに塗装されている。ブレーキはMカーボンセラミックが採用されている


5シリーズのスペシャルモデルといえばM5だが、さらに走りの性能を研ぎ澄ませたハイパフォーマンスモデル「30 Jahre(ドライスィヒ・ヤーレ) M5」が発売されたのは2014年のこと。

初代M5の誕生から30年を記念して、2代目M5をベースに世界300台限定で開発された。そのうち日本に割り当てられたのはわずか11台となる。

ベースのM5に対して最高出力を40ps、最大トルクを20N・mそれぞれアップした600ps/700N・mを発揮する4.4L V8Mツインパワーターボエンジンを搭載。それに合わせて足回りやブレーキシステムが改良されている。

さらに運転中にオペレーターによるナビゲーションの目的地検索・設定やスマホによる車の遠隔操作などが可能なBMWコネクテッド・ドライブ・プレミアムが標準装備されている。

新車時の車両本体価格は1870万円だが、原稿執筆時点で走行距離2.5万kmの総額約850万円が1台見つかった。

わずか11台しかないことを考えれば、出会えただけでもラッキー!?

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BMW M5(2代目)×30 Jahre×全国

ラリーの名門プジョーが手塩にかけた渾身の1台
プジョー RCZ R|限定150台+30台

▲足回りの強化もあり車高はベース車に対し10mm下がっている。固定のリアスポイラーが備わる他、Rファイナルバージョンでは同車の特徴である、波打つようなダブルバブルルーフがカーボン製になっている▲足回りの強化もあり車高はベース車に対し10mm下がっている。固定のリアスポイラーが備わる他、Rファイナルバージョンでは同車の特徴である、波打つようなダブルバブルルーフがカーボン製になっている


プジョーというとモータースポーツのイメージがないという人もいるだろう。しかし、かつて205ターボで世界ラリー選手権を席巻したのを皮切りに、1980年代から活躍してきたラリー界の名門だ。

そんなプジョーのラリー部門をけん引してきたのが、同社のモータースポーツ部門のプジョー・スポール。プジョー RCZ Rは、そのプジョー・スポールが手がけた限定車なのだ。

2014年4月に150台限定で販売されたRCZ Rは、1.6Lターボエンジンの最高出力が200psから270psに高められ、サスペンションも専用チューニングが施された。

さらに左右の車輪の回転差を補正するLSDも備えられ、高速コーナリングがさらに楽しいものに。

新車時の車両本体価格は540万円。さらに翌2015年にカーボンルーフを追加したRCZ R ファイナルバージョンは550万8000円で限定30台が販売された。

原稿執筆時点で見つかったのは、総額約300万円をはじめ約12台。

今回紹介する「神7」の中では比較的台数もあり、走行距離5万km未満がたくさんあるなど程度の良い中古車が選びやすい。

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プジョー RCZ(初代)×R&R ファイナルバージョン×全国

ニュル最速を記録したモデルの5人乗り仕様
ルノー メガーヌR.S. 273トロフィーS|限定50台+60台

▲グレード名の「273」はエンジンの最高出力273psが由来。トロフィーRとの違いはリアシートがあることやフロントサスペンションのスプリングが違うことなど、ホンのわずかな違いのみ▲グレード名の「273」はエンジンの最高出力273psが由来。トロフィーRとの違いはリアシートがあることやフロントサスペンションのスプリングが違うことなど、ホンのわずかな違いのみ


現在でもF1をはじめ、モータースポーツに積極的なルノー。

そのモータースポーツ部門であるルノースポールが手がけたモデルは現在でもいくつか登場しているが、中でも注目されたのが当時のニュルブルクリンクサーキットでFF車最速タイムをたたき出した、3代目メガーヌR.S.(ルノー・スポール)のトロフィーRだろう。

トロフィーRは2014年に世界限定250台、そのうち60台が日本でも販売された。しかしトロフィーRは後席を取っ払った2シーターモデル。

普段乗るには少し難しいなぁ、と思った人へということなのか、いわばトロフィーRの5人乗り仕様となる273トロフィーSが2016年に限定50台で販売された。

273トロフィーSはトロフィーRと同じエンジンを搭載。2Lターボエンジンは最高出力の数値だけ見ればわずか8psアップの273psだが、コーナリングスピードを高めるためにエンジン特性を変更。その他、足回りやマフラーも同じものが採用されている。

新車時の車両本体価格は456万円。原稿執筆時点で1台、2017年式の走行距離1.7万kmが支払総額約330万円で見つかった。

ちなみに車名に「273」の入らないトロフィーSが2014年に限定60台販売されたが、内容は273トロフィーSとほぼ同じ。もし「273」で見つからなかったら「273なし」で探してみるといい。

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ルノー メガーヌ(3代目)×R.S. 273トロフィーS&R.S トロフィーS×全国

名門ブランド同士の奇跡のコラボモデル
アバルト 695トリブートフェラーリ|限定150台+50台

▲当時のフェラーリ 430スクーデリアと同じデザインのストライブが施され、ボディーカラーはフェラーリのカタログカラーからロッソコルサ(レッド)、ジアッロモデナ(イエロー)、グリッジョチタニオ(グレーメタリック)、ブルアブダビ(ダークブルーメタリック)の4色が用意された▲当時のフェラーリ 430スクーデリアと同じデザインのストライブが施され、ボディーカラーはフェラーリのカタログカラーからロッソコルサ(レッド)、ジアッロモデナ(イエロー)、グリッジョチタニオ(グレーメタリック)、ブルアブダビ(ダークブルーメタリック)の4色が用意された


アバルトとフェラーリはほぼ同じ年月の歴史をもつレース界の名門。創始者がいずれもイタリア生まれのレースドライバー出身で、アバルトは主に小排気量、フェラーリは大排気量など多少の違いこそあれ、レースへのこだわりや情熱も同じだった。

そんな両者のコラボモデルがフランクフルトショーに登場したのが2009年。その折に世界限定1696台で発売すると発表された。日本へは150台割り当てられ、2010年末に予約が開始されると約1週間で完売した。

それもあってか2012年に日本限定でフェラーリの限定色ビアンコ・フジ(パールホワイト)のボディカラーを備えたトリブートフェラーリ トリブート アル ジャポネも50台限定で追加販売された。

1.4Lターボエンジンはターボやエキゾーストシステムが変更され、最高出力はベースのアバルト500の135psから180psへとアップ。

また500の5速MTに対し、2ペダル式のパドルシフト付きMT「アバルトコンペティツィオーネ」が備えられ、足回りも強化された。

新車時価格は569万5000円(トリブート アル ジャポネは609万5000円)。

原稿執筆時点では支払総額約300万円から24台見つかった。発表から10年が経っているが、走行距離3万km未満もけっこう見つかる。

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アバルト 695トリブートフェラーリ(初代)×全国

ちなみにもしこの記事を読んで探したのに、もう売れてしまっていてもカーセンサーの「指定した検索条件で通知を受け取る」機能を使えば、今後もお気に入りのスペシャルモデルを追いやすくなるのでオススメだ。

文/ぴえいる、写真/トヨタ、スバル、メルセデス・ベンツ、BMW、プジョー、ルノー、アバルト

ぴえいる

ライター

ぴえいる

『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はルノーのアヴァンタイムと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。