Q.契約書にサインした後って
   キャンセルはできないの?


 昔から欲しかった中古車を発見。なかなか市場に出回らない車なので、今買わねばと勢いで契約しました。が、家族は猛反対、冷静に考えるとローンを支払えるかも危うい状態です。これはまずいと次の日にキャンセルを申し出ましたが、「契約書に押印したでしょう」と受け付けて貰えませんでした。納得がいきません!

A.契約書に押印をしたら契約は成立
   契約の際の押印は計画的に


 最初に言っておきますが、一般的に押印をすると契約は成立します。これは、契約内容に同意したという証なので、簡単に「やっぱりやーめた」と言うわけにはいきません。契約の際は、熟考して、納得がいってから押印といった基本を忘れないでください。

 とはいえ、中古車の売買契約には、『自動車注文書標準約款』なるものがあります。これには、「契約の成立は『①納車②使用者の登録完了③注文者の依頼により修理・改造・架装に着手』の3点のうち最も早い日」と明記してあります。この考え方からすると、相談のように次の日にキャンセルを申し出た場合、販売店が上記のいずれかに着手していなければ、契約が成立していないのでキャンセルできることになります。

 もしも、修理・改造・架装を開始して契約が成立していた場合は、それにかかった実費を負担する必要があります。また、買い主が契約を破棄したことにより、売り主が売却益を得られなかったなど、実質的な損害を受けた場合は、買い主には逸失利益の賠償が発生することがあります。契約が成立すると、両者とも一方的な解約はできなくなります。解約には、損害賠償を含んだ違約金を支払うのが一般的です。

 ちなみに、『自動車注文書標準約款』は自販連に加盟している販売店が使用しているものです。もしも、加盟していない販売店が、独自の約款を使用しており、そこに「契約の成立は署名押印の時」などと明記していれば、サインをした瞬間に契約が成立したことになります。最初の話に戻りますが、約款には必ず目を通すことは忘れずに。また、押印は熟考してから行いましょう。



illustration/もりいくすお


■ワンポイント法律用語■

約款(やっかん)
事業者が多数の相手と契約をスムーズに締結することを目的に、あらかじめ契約条項を定型化したもの。契約書の裏に細かい文字で「甲は乙に」などと書かれていることが多い。契約書へのサインは、約款の内容に了承したという合意でもある

逸失利益(いっしつりえき)
もしもその事象が生じなければ、未来において当然得られたであろう利益。「得べかりし利益」とも呼ばれる。車のキャンセル場合、実際に販売していたら得られた利益を、損害分として買い主に請求することができる