Q.現状渡しで購入した車のトラブル
   これって泣き寝入りするしかないの?


現状渡しの車を購入しました。しかし、直後からエンジンの調子が悪く、走行中に止まったり、異音や異臭がすることもあります。現状渡しで購入しているので、クレームをつけることもできずに、最近ではあまり乗らなくなってしまいました。現在、修理をするために貯金中ですが、販売店に言って、せめて修理代の何割かを負担してもらうことはできないですかね?

A.車として最低限の動作が保証されていない
   よって販売店に無償修理の責任アリ


何割かどころではなく、この場合は販売店の責任で修理をしてもらうことが可能です。購入直後からエンジントラブルが続いているということは、売った車に欠陥があったということです。

「現状販売」とは決して壊れた車を売ってよいといった類のものではありません。車を商品として売っている以上、走る、止まる、曲がるなどの車として最低限の動作は保証する必要があります。相談のケースの場合は、走行中に止まってしまうという、車として最低限の動作が保証されていないことになります。よって、この点に関して、販売店に対して修理を求めることが可能でしょう。

いくら現状渡しとはいえ、隠れた瑕疵(かし)について販売店は無償修理の責任があります。これは、購入時のチェックでは一見してその故障や欠陥を見抜くことができない場合に適用されます。
例えば、目に見えるキズや凹み、オイル漏れなどは、現状渡しの場合は品質表示がされているはずなので、隠れた瑕疵(かし)には当たらず、有償修理となります。しかし、エンジン内部のコンピューターの故障など、予想されうる通常の自然消耗とは言えない不具合に関しては、民法570条「売主の瑕疵担保責任」で、買い主が販売店に対し損害賠償請求(無償修理)または隠れた瑕疵が修理不可能の場合は売買契約を解除する権利を認めています。

中古車は新車と異なり、その程度は千差万別。使用状態や年式によって、状態は大きく変わります。経年劣化や自然損耗が原因となり、不具合が生じる可能性も当然考えられます。現状渡しでの購入の場合はそれらを納得した上で購入しているとみなされます。安いからと、何の知識もないまま現状販売で購入すると、後々のメンテナンス代や修理代がかさむことも考えられます。もしも、少しでも購入後のメンテナンスなどに不安があるようならば、保証付きの中古車を買うことをオススメします



illustration/もりいくすお


■ワンポイント法律用語■

現状販売(げんじょうはんばい)
現状販売とは正確に言うと、「保証なし(現状渡し)販売」のこと。これは「保証付き及び保証なし(整備渡し)で販売する以外の中古自動車について、販売業者が保証なしで販売するもの」と公正競争規約で定められている。ただしこの場合には「車両状態説明書」が交付されるので、これを見て車両の現在の状態を判断することができる

瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
売買の対象とされた商品に、購入時に一見して見つけることができないキズや故障があり、買い主がこれを知らず、かつ知らないことに過失がない場合、買い主は瑕疵の存在を知ったときから1年以内であれば、代替物との交換や損害賠償請求ができる。さらに、瑕疵のために契約をした目的を達することができないときは、契約の解除ができる。中古車の場合は替えのきかない特定物なので、損害賠償または契約の解除を請求することとなる