Q.商談中のお客さんに直接交渉して、購入の権利を買い取ったのですが…

どうしても欲しい車があったのですが、直前に見ていたお客さんが先に商談に入ってしまいました。そこで、そのお客さんに直接交渉をして、5万円で権利を譲ってもらいました。しかし、あとあと考えると、購入したわけでもない客に5万円も払う必要はなかった気がします。受け取った行為に問題はないのでしょうか。問題があれば返してほしいと思っています…。

A.販売店の了承を得ずに、購入の権利を売買したらトラブルの原因になります

結論からいうと店側が納得していれば問題はないでしょう。要は、あなたはプラス5万円を払ってでもその車を購入したかっただけという話です。権利を譲った客が不当に騙し取ったわけではありません。もちろん、相手から権利を譲り受ける代わりに相応の代金を要求されたとしても、特に問題はありません。その要求が価値に見合わないと思うなら、払わなければいいのです。しかし、今回は要求されたわけではなくあなたから声をかけているので、あとからそれを問題視するのは筋が通らないと考えられます。

加えて、店側が納得をしていないとあなたにややこしい問題が発生します。法律的には車の所有権をもつ販売店が売却の権利ももっています。よって、あなたは販売店側が納得していない権利を譲り受けたたことになります。その行為がもとで販売店の信用が著しく傷つけられたなどの被害が出た場合には、損害賠償を請求されることもないとはいえないでしょう。

「店は車が売れて嬉しい」「譲ったほうは5万円が手に入って嬉しい」「あなたは欲しい車が手に入って嬉しい」といった三方よしが成立しているのならば、それ以上欲をかかないほうがいいのではないでしょうか。

また、商談中の車を譲ってほしいときには、トラブルを避けるためにも、必ず販売店を仲介して意思を伝えるようにしましょう。その際、あなたの足元をみて販売店が売値をつり上げるのは、自動車公正競争規約の「車購入の際に必要な価格や品質等の適正な情報を提供する」「新聞、チラシ、インターネット等の広告に販売価格を表示する場合は、店頭展示車と同様の事項を表示すること」に抵触するので規約違反(不当表示)になるでしょう。

第79回:販売店をとおさずに直接商談中のお客と交渉したら!?|渋滞ができる法律相談所
illustration/もりいくすお

■ワンポイント法律用語■

損害賠償(そんがいばいしょう)
損害賠償には1.契約違反に基づく損害賠償、2.不法行為に基づく損害賠償の2種類がある。損害賠償の範囲は、原則として通常生ずべき損害であるが、特別の損害であっても当事者が予見できる場合は損害賠償の対象になる。また、財産的損害のほか、精神的な損害(慰謝料)も賠償の対象となる