Q.販売店の車に乗ったら洋服が汚れてしまったんですが…

販売店で車をチェックしていました。鍵が開いていたのでシートに座ったところ、室内の清掃がしっかりされていなかったようで、洋服に汚れが付いてしまいました。クリーニング代を出してもらいたいのですが、店側は断りなく乗ったのだから自己責任と言っています。この場合、どうすればいいですか?

A.自由に乗れる状態であったなら、弁償かクリーニング代を出してもらえるでしょう

まず、店員に勧められて乗ってみて汚れが付いた場合は、もちろん損害賠償請求ができます。それでは相談のケースではどうでしょう。実は、店員に断らずに乗った場合でも、販売店の敷地内に車を展示して客に自由に乗ってもらい、チェックしてもらうことが展示の目的であったなら、販売店に対して損害賠償請求ができると思われます。ちなみに、この場合だと、クリーニングにかかる実費程度でしょう。

なぜ損害賠償を請求できるのかというと、販売店が客に対して「安全配慮義務」を負っているからです。簡単に言うと、客の安全には責任を持ちなさいということ。ですから、もしも、展示スペースではない場所、例えば整備スペースに置いてある車に勝手に乗って汚れた場合には、損害賠償請求はできません。また「車に乗る際には店員に声を掛けてください」などの注意書きがあった場合は、今回のケースでは勝手に乗り込んだということで過失相殺の対象となるでしょう。

今回のケースに限らず、気になる車があって乗ったり動かしたりしたい場合は、まずは店員に声をかけるようにしましょう。勝手に触って壊れたり、汚れたりすると無用のトラブルが発生します。店員に声をかければ、汚れているようならその場で清掃してくれるかもしれないし、扱い方にコツがあるならば、店員自ら操作をしてくれるかもしれません。もし何かあっても、店員の監督下にあれば、客側の責任ばかりを追及することはないでしょう。

ちなみに、展示車の清掃が行き届いているかどうかはいい販売店を見極める条件の一つ。洋服が汚れるほど手入れが悪い販売店は、あまりオススメできません

第73回:無断で展示車に乗って洋服が汚れてしまったら!?|渋滞ができる法律相談所
illustration/もりいくすお

■ワンポイント法律用語■

過失相殺(かしつそうさい)
損害賠償の額を決める場合、被害者側にも過失があったときには、公平を図るため、過失の度合に応じて損害賠償額を減額すること
損害賠償(そんがいばいしょう)
損害賠償には1.契約違反に基づく損害賠償と、2.不法行為に基づく損害賠償の2種類がある。損害賠償の範囲は、原則として通常生ずべき損害であるが、特別の損害であっても当事者が予見できる場合は対象になる。また、財産的損害のほか、精神的な損害(慰謝料)も賠償の対象となる