Q.タダで廃車にしてもらうはずの愛車
それがなぜだか売られているっ!!


車を買い替えるときに、それまで乗っていた車を下取りしてもらおうと査定してもらいました。しかし、古い車だったのでまったく値段はつきませんでした。むしろ廃車にするためにお金がかかると言われました。店員さん曰く、「うちで車を買ってくれることだし、タダで引き取りますよ」とのこと。買い取り店で比較するのも面倒だったので、そのまま引き取ってもらいました。
 しかし、1ヵ月後にたまたまその販売店の前を通ったら、なんと引き取ってもらった車が売りに出ているではないですか。

これって詐欺なのではないですか?

A.売られているだけでは詐欺とはいえない
約束をした場合だけ損害賠償請求が可能


価値があるのを知っていながら、その事実を伝えず、その車には価値がないと思わせて搾取するのは詐欺にあたります。しかしこの相談内容だけで詐欺だとは言えないと思われます。売りに出したからといって、必ず売れるとも限りませんし、廃車の手間もあるので、ダメ元で売りに出しておこうという商売の方法もあるでしょう。明確に廃車の約束を交わしておらず、廃車のための費用も支払っていない場合、例えば「タダでいいなら引き取るよ」といった約束の場合は、車が売りに出されても文句は言えません

ただし「廃車にします」と約束をした場合は、そこに履行義務が生じるので、約束を誠実に実行しなくてはいけません。その約束を守らずに車を売った場合、得た利益は不当利得になるので、その代金の返還を請求できる可能性が高いでしょう。この際に、客側から入手した廃車手続きの委任状を、名義変更など別の目的に改変した場合には私文書変造罪に問われる可能性もあります。

結論でいうと、最初から販売店が売るつもりなのに、廃車にするといって車を入手したのなら、損害賠償請求や車の返却要求ができると思われます。もしもしっかりと廃車をしたいのであれば、後日、販売店から廃車証明書を貰うようにしましょう。また、価値がないと言われても、買い取り専門店など複数の店舗で見積もりをすることも忘れずに。


illustration/もりいくすお


■ワンポイント法律用語■

不当利得(ふとうりとく)
契約などのような法律上の原因がないにも関わらず利益を受けた者がいる場合、その利益が帰属すべき者に対して利益を返還させる制度。車に価値があるのに、ないと勘違いして販売店に処分をお願いした場合は、販売店は法律上正当な理由がないのに得をしている。逆に、客はその価値分の損失となる。この場合は、販売店は客に利益分を返却しなくてはならない

私文書変造罪(しぶんしょへんぞうざい)
文書には社会的信用性が認められ、これを保護することが社会生活上必要であると判断される。権限なく権利義務または事実証明に関する他人名義の文書を作成したり、成立した文書に変更を加えたり、内容虚偽の文書を作成したりすると罰せられる