Q.“いざ”というときに開くのがエアバッグ
なのに、ボクの愛車のは開かなかった…


 先日、愛車で事故を起こしてしまいました。不幸中の幸いで大きなケガもしなかったのですが、納得できないことがあります。それはエアバッグが開かなかったこと。損害賠償を請求したいのですが、メーカー、車を購入した中古車販売店、いったい誰の責任になるのでしょうか?

A.ただの事故では開かない可能性もある
損害賠償請求は難しいと考えよう


 まず、エアバッグというものは必ず開く性質のものではないと言うことを認識しておいて下さい。もしかすると、事故の衝撃が軽度でエアバッグが開かなかったのかもしれません。取り扱い説明書には「エアバッグはあくまでシートベルトの補助拘束装置で、車がぶつかった角度、速度、ぶつかる物などによって、作動しないときがある」と明記してあります。ですから、ただ事故で開かなかったというだけではディーラーやメーカーに損害賠償を請求するのは難しいでしょう。

 もしも、明らかな故障(ネジが足りない、接続がされていないなど)が原因で開くべきときに開かず、それが販売店もしくはメーカーのミスによるものであることが立証できれば、損害賠償の請求は可能でしょう。しかし、購入からある程度期間が経過していると、その故障が使用者の使い方によるものか?それとも販売店の整備ミスかを割り出し、立証するのは容易なことではないと思われます。

 そもそも、万が一販売店の整備ミスだとしても、エアバッグは法律で装着が義務づけられている装備ではありません。エアバッグに不具合があったり壊れたりしていても、車検を通すことはできます。エアバッグが壊れていても、車検に通っている車なので、販売することには何ら問題はないと考えることもできなくはありません。こうなると水掛け論になりますが、購入者の分が悪いのは間違いないでしょう。

 ただし、店側がエアバッグの動作保証を明記して、また販売時にそれを売りにしており、購入者もエアバッグの装着を購入の決め手にした場合は話が変わります。重要事項であるエアバッグが作動しない=重要事項の告知義務違反となり、開かなかったことにより損害が生じていれば、その分の損害賠償請求は可能でしょう。この場合は販売店が壊れていることを知らなかったとしても、隠れた瑕疵(かし)になると思われます。

 エアバッグが正常に作動しているかどうかは、事故を起こしてみないとわかりません。購入時には、警告灯やエアバッグが設置してある場所にキズなどがないかの確認くらいしかできないでしょう。できればエアバッグを使うことがないような安全運転を心掛けましょう。また、エアバッグはシートベルトの補助装置だということを忘れずに。


illustration/もりいくすお


■ワンポイント法律用語■

車検(しゃけん)
正式名称は「継続検査」。自動車の性能などが保安基準に適合しているかどうかの検査で、道路運送車両法によって義務づけられている。その目的は自動車の安全性の確保と公害防止。道路運送車両法に定められた「保安基準」に適合しているかを検査する。新車の場合、最初の有効期間の満了日は3年後、以降、一般的に2回目以降は2年ごと。車検の有効期間は「車検証に記載されている有効期間が満了する日」までとなっている