Q.名義変更したいのに、販売店が倒産…
車を売りたくても売れない?


 数年前に購入した高級車のローンをようやく完済。これを機に新しい車に乗り換えようと思い、その車を買い取り店に持っていったのですが、問題が発生しました。
 書類を見ると、ローンを払い終わっているのに所有者が購入先の店舗のままになっていたんです。慌てて購入店に電話をしましたが、既に倒産しているのか連絡がつきません。
 売却代金を新車の頭金にしようと考えていたのですが…。いったいどうすればよいのでしょうか?

A.販売店倒産後の所有権解除は面倒
そうなる前に事前に手を打とう


 この場合、まずは倒産した会社の登記簿謄本を取得する必要があります。もしも、その会社の登記がまだ存在している場合には、破産管財人に対して所有権の解除を申請し、印鑑証明や譲渡証明などの書類を取得します。それによって、本人の名義へと変更する手続きをとることができます。もしも、話し合いで解決しない場合には、倒産したお店を相手に名義変更の裁判を起こして、判決に基づき名義変更させるという手続きが必要です。

 しかしながら、登記が登記簿謄本の住所にされておらず居場所がわからないケースもあるでしょう。その場合は、公示送達という制度を利用します。これは「裁判所に送達すべき書状を張り出して、所定の期間が経過すると送達が完了したと見なす」というもので、これに基づき倒産した会社のもつ所有権の解除が進められます

 ところが、会社自体が抹消になっていて代表者もわからないといった場合はかなり面倒でしょう。その場合には、近所への聞き込みに始まり、郵便物を車検証の所有車欄に記載されている住所に送っても、「宛先が存在しない」という形で戻ってきてしまうことなどを郵便局に確認するなど、調査を行う必要があります。

 その結果、倒産後に連絡がとれずに、実質的に夜逃げをしているといった調査報告書を作成し、登記簿謄本とあわせて裁判所に提出しなければなりません。この場合、裁判所が弁護士の中から会社の代表者の代わりになる人、いわゆる特別代理人を選任して、所有権解除を認める判決を出すといった形が取られます。

 いずれにしろ、販売店倒産後の所有権解除はかなり手間のかかる作業となることは間違いありません。そういった事態にならないためにも、ローンが完済したら、すぐに所有権を解除することをオススメします。


illustration/もりいくすお


■ワンポイント法律用語■

登記簿謄本(とうきぼとうほん)
今回のケースは、商人に関する一定の事項を商業登記簿に登記する「商業登記」にあたる。商法の規定によるもので、取引の相手がどのような人物なのかを調べることができるように、あらかじめ一定の情報を公示しておく機能をもっている。本店の所在地、正式名称、代表者氏名、役員の氏名住所などを確認することができる

所有権(しょゆうけん)
法令の制限内で、目的物を自由に使用・収益・処分できる権利。車をローンで購入した場合は、販売店に所有権が設定されることが多い。よって購入者=使用者、販売店=所有者といった形になる