Q.委任状を悪用されることはないのでしょうか?

車を購入するときの書類に「委任状」があることを知りました。でも、ドラマなんかで「白紙の委任状を取られて家の権利が…」なんて場面を目にします。簡単に委任状を渡してもよいものなのでしょうか?

A.内容が明記されている委任状ならば心配ありません

販売店に提出する委任状は、名義変更などの手続きを販売店に委任することを了承した旨を示すものです。委任状は販売店側が準備してくれますが、当然、そこには委任されるべき内容(この場合は名義変更の手続きを委任する旨)が記載されています。ですから、内容をよく読んで確認して署名をすれば問題はありません。どうしても不安な場合は、委任状自体は運輸局のホームページからダウンロードできるので、それを自分で準備して提出するとよいでしょう。

心配されているケースは、委任状が白紙だった場合でしょう。ドラマなどでは、悪徳金融業者などに白紙の委任に署名させられて、その後都合のいいように内容を書き加えられるなどのシーンがまま見られます。たしかに、理論上はあり得る話ですが、常識的にはあまり起こる出来事ではありません。一昔前は、白紙の委任状にその建物、土地を売却する件などと書かれて、家を売られてしまったという事件などもありました。ただ今では、本人に委任したことを確認するのが義務になっています。もし販売店が白紙の委任状で借金をするなどあなたに不都合なことをしようとしたら、本人確認があるはずですし、ない場合には裁判で販売店の不法行為を追及することができます。

ちなみに、白紙でなくても委任状の内容を書き換えられたらどうしようという相談もありますが、その場合は有印私文書変造にあたりますので心配は無用です。そもそも、規定のフォーマット以外の委任状を使う販売店の場合には注意をしたほうがいいかもしれません。

第55回:車を購入するときの委任状って簡単に渡してもいいの!?|渋滞ができる法律相談所
illustration/もりいくすお

■ワンポイント法律用語■

委任状(いにんじょう)
自分に代わり第三者になにかしらの行為を依頼するときに、その意思表明を書き記す文書。中古車購入の場合は主に購入者に代わり販売店が名義変更を行うときに使われる
有印私文書変造(ゆういんしぶんしょへんぞう)
他人の印鑑や署名を使用したり偽造したりして、権利、義務、事実証明に関する文書や図画を偽造すること。また、他人が押印したり署名した権利、義務、事実証明に関する文書や図画を変造した場合も当てはまる