ルノー ルーテシア▲ルノー・ジャポンが開催した「メディア対抗燃費チャレンジ」へ参加! ルーテシアE-TECHフルハイブリッドで、"日本のフランス"こと愛媛県松山市の萬翠荘まで行って来た

ルノー燃費チャレンジ優勝で、いざフランスへ!!

ある日、ルノー・ジャポンより編集部に一通のお知らせが届いた。

「ルノー・ジャポン メディア対抗燃費チャレンジのご案内」

昨年ルノーはアルカナ、キャプチャー、ルーテシアにE-TECHハイブリッドを導入。そんなこともあってか販売面も好調とのことで、「日本におけるフランスブランド輸入車販売台数No.1」を獲得したという。

それを記念して、ルノー ルーテシアE-TECHハイブリッドを使い、メディア対抗の燃費チャレンジを開催するというのだ。目的地は国の重要文化財で"日本のフランス"といわれている、愛媛県松山市にある萬翠荘。スタート地点の横浜からはおよそ800kmの道のりだ。

と、ここまではよくある内容なのだが、案内を最後まで読むと……。

優勝チームには、“本当の”フランス取材にご招待します。

え!? フランスに招待してくれるってこと!?!?

これは優勝するしかない!! がぜんやる気の出てきたカーセンサー編集部一同。

ということで今回は、優勝を目指しモータージャーナリストの石井昌道氏をドライバーに迎え、本企画に参加してきた。
 

石井昌道(いしいまさみち)

モータージャーナリスト

石井昌道

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、車の楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

ルーテシアE-TECHハイブリッドはどんな車?

ルノー ルーテシア▲昨年5月に日本に導入されたルノー ルーテシアE-TECHハイブリッド。現時点で輸入車No.1の低燃費を誇るモデルだ

初めに、今回ドライブするルーテシア E-TECHハイブリッドについておさらいしよう。

2022年5月発売のルノー アルカナに搭載されたE-TECHフルハイブリッドは、輸入車で唯一のフルハイブリッドとして注目を浴び、その後、キャプチャーとルーテシアにも同システムを追加。コンパクトで車両重量も軽いルーテシアE-TECHフルハイブリッドは、輸入車No.1の燃費性能(2023年3月28日現在)を誇っている。

ルノー ルーテシア▲モータースポーツの最高峰であるフォーミュラー1の現場で培った知見を生かして開発されたE-TECHフルハイブリッドシステム

日本では京都議定書が発効され、CO2排出量削減が叫ばれるようになった1997年に、トヨタから世界初の量産ハイブリッドカーであるプリウスが発売。それ以降、日本の自動車メーカーはフルハイブリッドが有望なソリューションとして広まっていったが、欧州ではクリーンディーゼルがもてはやされた。

両者を比べると、フルハイブリッドは街中など低速域での燃費改善が得意、クリーンディーゼルは高速域での燃費悪化が抑えられるというメリットがあり、それぞれの交通事情にマッチしていたと言える。

だが、ここにきてルノーがフルハイブリッドを新たに開発してきたのには理由がある。

クリーンディーゼルは年々排ガス規制が厳格化されており、それに対応するため浄化装置を強化する必要に迫られているが、ルノーがメインで販売しているBセグメントやCセグメントといったコンパクトカーにとってコストがかかりすぎるからだ。

ルノー・日産・三菱のアライアンスがあるから、日産のフルハイブリッドであるe-POWERをルノー車に搭載することも検討されたそうだが、低速域を得意とする日本のシステムでは欧州の交通事情にマッチせず、新たに高速域をも得意とするシステムを開発することになった。

こうして生まれてきたE-TECHフルハイブリッドはたしかに100~120km/h程度の高速域での燃費性能やフィーリングが良好で、日本生まれ日本育ちのシステムとは一線を画するものなのだ。

優勝目指して作戦会議を実施!

オンライン会議の様子▲オンライン作戦会議の様子。エコドライブ・インストラクターの資格を持つ石井昌道氏(上)と、アクセル踏みすぎなことが多い編集部の神崎(中)、芝本(下)で、優勝に向けたプランを話し合った

本気で優勝を狙うため、我々カーセンサーチームは出発の数日前に作戦会議を行った。その中で確認したことは以下のとおり。

①一般的な燃費走行を徹底する
どんな車でも速度を落とさず、一定の速度で走るのが大セオリー。本来なら空気・路面抵抗などの理由で60km/hほどで巡航するのが理想だが、現実的には周りの交通状況を判断しながら80km/h程度(高速時)で左車線を走るのが良い。

また、0km/hからの発進において、当然急加速はよくないけど、実はゆっくり発進するほど良いというわけでもない。ハイブリッドはEV走行を使ってスピードを上げていくのが良いが、どのタイミングでエンジンが発電し始めるか見極めるのが重要。出発して早々に見極められるように努める。

②E-TECHハイブリッドの特性を理解して走る
ヨーロッパモデルらしく、120kmくらいで走るのが一番心地よいが、速度が上がると当然燃費は悪化傾向に。ただし、国産車より燃費が悪化し始める速度域が少し高めなので、うまく速度を使い分けるようにする。

なお、このE-TECHハイブリッドはトヨタなどのハイブリッドシステムとは異なるものの、基本的にはハイブリッド車で燃費を出すためのセオリーが通用するはず。

③交通状況を見極めて走行ルートや時間を決める
本来であれば速度域の低い一般道も織り交ぜて走りたいところだが、出発から48時間以内に到着というルールを考えると、基本的には高速道をメインに最短コースを行く。

また、出発が金曜日ということもあるため、夕方以降都市部に入るのは避けるべし。翌朝も混雑しない早朝に出発して、都市部の渋滞を避ける作戦。

作戦会議では、以上のことを確認。そして何よりも大切にするポリシーとして「エコ運転に集中するがあまり、周りに迷惑をかけるような走行は絶対にしない」ということを掲げた。

DAY1|燃費はぐんぐん伸びてカタログ値の1.3倍以上に!

ルノー ルーテシア▲出発は日産自動車本社のある神奈川県横浜市。ここから2日間、800km以上にわたるチャレンジが始まった!

いよいよ出発当日の朝を迎える。渋滞情報を確かめると、東名高速の厚木→海老名間がだいぶ混雑していた。

そのためこれを避けるべく、まずは逗子まで高速道で向かい、海沿いの一般道をしばらく走り、茅ヶ崎海岸から圏央道を経由して東名高速に入るルートを選択した。

フルハイブリッドは、低速域ではモーターを利用することで、エンジン車よりも燃費がいいのが特徴だが、長い時間・距離になるとバッテリーの電力が足りなくなり、低速なのに発電のためにエンジンがかかりっぱなしになって燃費は悪くなってしまう。つまり、低燃費を実現するには渋滞はなるべく避けたいのだ。

ルノー ルーテシア▲渋滞を回避して一般道を走ることもしばしば。一般道は景色が頻繁に移り変わるため楽しい

しかし、実際には湘南の海には卒業式帰りとおぼしき高校生や春休みの大学生などであふれており、想像よりも一般道の交通量が多く、渋滞にも巻き込まれてしまった。

だが、気分は明るくなった。ロングドライブでの精神的疲労を和らげるには、景色の変化など楽しい要素が必要だ。

御殿場から愛知県豊田市までは旧来の東名高速と新東名高速があり、事前の作戦会議では後者の方がアップダウンやカーブが少なく燃費にも有利ではないかと話していた。

ルノー ルーテシア▲当初の予定では高低差の少ない新東名を行くはずだったが、より走るのが楽しい東名を選択!

しかし、当日の判断でやはり東名高速にすることにした。ルーテシアを運転していると、自然と走っていて楽しい方へと進みたくなるのだ。

とはいえ、燃費走行も欠かせない。高速道路で良好な燃費を出すには、速度を控えめにすることに加え、速度変動を抑えるのが基本ではある。ただし、E-TECHのようなフルハイブリッドには必ずしもあてはまらない。

バッテリーに電力が十分にたまれば、エンジンを止めてモーター走行が使える。つまり、そこでは燃料消費がゼロになるからだ。電力をためるにはエンジン発電しなければならないが、そのサイクルが上手くはまれば良好な燃費が期待できる。

ただし、モーター走行ができるのはごく軽い負荷に限られているため、速度の低い街中では頻繁に使えるテクニックだが、高速域では使用できる頻度が大幅に少なくなる。

それでも、ルーテシアは80km/h程度でもモーター走行に移行することがあったため、それを狙いながら走るように心がけた。

パワーとしては圧倒的にエンジンの方が強く、モーターは高速域では非力なので、発電させるときには一定速か加速気味に、モーター走行するときには一定速か減速気味にすることで、高効率なサイクルに入るように仕向けた。速度変動は大きくなるが、フルハイブリッドの特性を利用するのだ。

アップダウンに合わせてエンジン発電するところ、モーター走行するところも考えながら走る。前走車にぴったりとくっついて空気抵抗を減らすスリップストリームは大変に有効ではあるものの、マナーの観点から基本は使わないことにした。

たまたまゆっくり走っているトラックの後方を走ることはあったが、あおり運転と勘違いされない距離は保った。

ルノー ルーテシア▲一定の速度を保ちつつ、周囲の交通状況を乱すことがないように心がけた

こうして愛知県を越え、三重県、滋賀県と進んでいくうちに燃費計が示す数値は2.9L/100kmと3.0L/100km(約34.5~33.3km/L)を行き来するようになった。

上り区間が続き標高が高くなってくると3.0L/100km、下り区間に入ると2.9L/100kmという具合だ。

そして1日目のゴールとなる大阪のホテルに到着したときには、燃費計は3.0L/100km(約33.3km/L)を表示。

ルーテシアE-TECHのカタログ記載のWLTCモード燃費が25.2km/Lで有ることを考えると、まずまずの記録ではないだろうか?

もう少し頑張れば、2.9L/100km(約34.5km/L)もいけそうな手応えではあった。
 

ルノー ルーテシア▲長い高速道路の走行を終え、ホテルへと向かう。一時的とはいえ燃費の差が出やすい一般道に入るため、ここでも油断は禁物だ
ルノー ルーテシア▲1日目の燃費は3.0L/100km。これは約32.3km/Lなので、カタログ値の25.2km/Lを大きく上回ることができた。明日はもう少し行ける気がする

1日目の走行ルート

DAY2|予想外の出来事に大苦戦!

2日目の朝は、作戦のとおり大阪~神戸付近の都市部の渋滞を避けるために、早朝4:30にスタート。

狙いどおり渋滞は避けられたが、ここにきて大きな問題に直面。

前日の天気予報で気にはなっていたのだが、バケツを引っくり返したような土砂降りの雨には参った。

雨の日の燃費は、路面が濡れる程度ならば抵抗が減って良くなることもあるが、水たまりができるような大雨だと、それが大きな抵抗になって悪化してしまうのだ。

ルノー ルーテシア▲まさにバケツを引っくり返したような土砂降り……

路面をにらみながら、なるべく水が少ないところを狙って走らせていったが、燃費計は厳しい現実を突きつけてきた。

雨の影響を受けにくい神戸淡路鳴門自動車道の舞子トンネルの長い下りでは、一時2.9L/100kmを記録したが、その後はなかなか伸びず3.0L/100km止まり。水の走行抵抗によってだいぶ燃費が悪い実感はあった。

ルノー ルーテシア▲明石海峡大橋を渡り、いよいよ四国へと入る。雨は気になるが、もう少し燃費を伸ばしたい!

それでも四国に入ってから長い上り区間に突入し、標高100mオーバーでも燃費はキープはできていた。ゴールの萬翠荘の標高は29.7mなので、まだまだ下り区間があることも踏まえて、2.9L/100kmに戻す望みはあると踏んでいたのだが……ここにきて再び状況が変わった。

スタート時には9時台だったカーナビの到着予想時刻が11時台になり、ルートも途中で一般道に降りて迂回するものになっていた。

調べると予定していたルートで事故が発生して通行止め。仕方なくカーナビの案内に従ったが、迂回の一般道では大渋滞に巻き込まれることになってしまった。

しかも、上りの狭い山道で大型トラックなども連なっており、しばらく停止しては10~20km/h程度でノロノロと進むということを繰り返す、燃費には最悪の状況だ。

ルノー ルーテシア▲迂回路には大型トラックなども流れ込んできており、ノロノロ運転が続く。燃費的には最悪な状況だ

あっという間にバッテリー残量計は下限に近づき、停止時にもエンジンが始動して発電するようになってしまった。峠の頂上に達する手前でついに燃費計は3.1L/100kmへ。

停止が長く続きそうな場面では、不意にエンジンがかからないようシステムをダウンさせ、せめて走行しながらエンジン発電するよう仕向けたり、最後まで諦めずにゴールを目指した。

2日目の走行ルート

ゴール|予想外のトラブルはあったものの、結果は3.1L/100km!

ルノー ルーテシア▲いよいよゴール! もう少し記録を伸ばしたかったというのが本音ではあるが、まずは無事目的地に到着することができて良かった

道中、予期せぬトラブルに巻き込まれたものの、無事にゴールを果たすことができた。

ゴール時点の燃費計は3.1L/100km(32.3km/L)。数値を追う燃費チャレンジとしては、「もう少し良かったはずなのに……」という悔しい思いはある。

しかし、ルーテシアE-TECHは驚異的な燃費性能をもっていると言えるだろう。周囲の交通の流れを乱さないように走り、大雨や大渋滞も経験しながらのリアルワールドで833.1kmを走破した結果なのだ。

ルノー ルーテシア▲ゴール時の燃費計は3.1L/100km。つまりこれが我々カーセンサーチームの記録となる

使用したガソリンは25.8Lでハイオクが174円として4489円。もしもディーゼルで同じ燃料コストをかけられるとしたら、軽油が142円として31.5L使えるので、26.4km/L相当の燃費となる。

これは、高速道路メインでスムーズに流れていれば不可能な数値ではないものの、渋滞時でも燃費悪化が抑えられるフルハイブリッドにはかなわないはず。さらに、今回と同じシチュエーションだったら達成するのはまず無理だろう。

ディーゼルに代わるソリューションのE-TECHフルハイブリッドだが、今回のチャレンジにおいては得られるベネフィットはディーゼル以上だったと言える。

悔しい気持ちはさておき、ルーテシアでのロングドライブは純粋に楽しく、疲労もほとんど感じなかった。

さすがはコンパクトカーを得意とするルノーだけあってシャシー性能が高く、どっしりとした乗り味で乗員が揺さぶられないからだ。

自分は尾てい骨の形が変わっているようで、シートの出来が悪いとすぐにお尻が痛くなってしまうたちなのだが、ルーテシアでは2日間、833.1kmにわたって快適に過ごすことができた。

秀逸な燃費性能も含めて、ここまでロングドライブ向きのコンパクトカーは他にないだろう。

なお、今回の結果は現時点では出ていないが、吉報を待つこととしたい。行けるか!? フランス!!
 

ルノー ルーテシア▲2日間にわたるルノー ルーテシアE-TECHフルハイブリッドのドライブは、とても快適なものであった。ぜひフランス取材の様子もお届けできたら嬉しいのだが……吉報を待とう!

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ルノー ルーテシア(5代目・現行型)×E-TECHフルハイブリッド×全国

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ルノー ルーテシア(5代目・現行型)/キャプチャー(2代目・現行型)/アルカナ(初代・現行型)×E-TECHフルハイブリッド×全国
文/石井昌道、編集部、写真/篠原晃一