ルノー ルーテシア

日本のヒップホップシーン最前線でフレッシュな名曲を作り続けているスチャダラパーのMCであるBoseが、カーセンサーで気になる中古車を探して実際に見に行く本企画。

今回は、Boseさんが幼少期に憧れたラリーマシンのイメージを現代によみがえらせた、超希少フレンチホットハッチをピックアップ!

前半はモデルについてじっくりと、後半は世界中のマニアックな人気モデルを扱うショップの成り立ちについてお話を伺いました。

Bose

スチャダラパー

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1990年にデビューし、1994年「今夜はブギー・バック」が話題となる。以来ヒップホップ最前線で、フレッシュな名曲を日夜作りつづけている。スチャダラパーが満を持してYouTubeチャンネルを開設! 詳しくは公式HPへ。愛車はフォルクスワーゲン ゴルフIIとフィアット ウーノターボ
 

こんなに思い切ったモデルは二度と出てこないだろうね!

Bose 僕は子供の頃に、雑誌でWRC(世界ラリー選手権)を見て興奮した世代で、当時好きだったのがルノー 5(サンク)ターボ。今回は、それを現代によみがえらせたモデル、ルノー ルーテシア(ルノースポールV6)を見に来たよ!
 

ルノー ルーテシア

クールマン代表 三浦崇二郎さん クリオR.S. V6自体はWRCに出ることはありませんでしたが、当時の強烈なイメージを思い出させてくれますよね。うちでは取り扱いが多い部類に入るモデルです。

ルノー ルーテシア▲このモデルは、いわゆる前期型のフェイズ1。2003年には、デザインが現代的になったフェイズ2へと進化しています

Bose 僕の中では、ゲームのグランツーリスモで扱いづらい車の上位に入るモデル(笑)。そのたびに思うんですよ。「これ、いったい誰が買うんだろう」って。1台目はもちろん、2台目で持つのだって大変だよ。5台くらい車を持っていて、ようやく「1台これがあってもいいか」ってなるんじゃないかな。

三浦 実際、そういう人が多いですね。お医者さまもいらっしゃいます。

Bose やっぱり医者か(笑)。僕が欲しいと思う車を実際に乗っているのは、なぜかお医者さんが多いんだ。本当にうらやましい!

三浦 元々フロントにエンジンがあったものを強引に後ろに載せているので、バランスがかなり片寄っています。雨の日にトンネルから出た瞬間、直線なのにスピンしたという話を聞いたこともあるぐらいです。フェイズ2になるとバランスはかなり改善されましたが。

ルノー ルーテシア▲ドア後方のエアインテークがミッドシップの証し。全幅はベース車のクリオから約200mmも拡大されています!

Bose 2000年前後って、ゴルフⅣのR32やアルファ 147GTAなど、小さなハッチバックに巨大なエンジンを強引に積んだホットハッチが結構注目されたよね。でも、“羊の皮をかぶった狼”という感じで見た目はあくまで普通。それを考えると、ルノーは思い切ったなぁ。

編集部 この車が出たときのこと、Boseさんは覚えていますか?

Bose もちろん覚えているよ。雑誌で見て「なんてばかげた車だ!」って思ったから(笑)。

編集部 (笑)。

Bose もちろん、いい意味でね。新しいトゥインゴがRRで出てきて、「もしかしたらトゥインゴR.S.が出るかも!?」なんて話があったけれど、それもうわさで終わった。今後、こういう車は出ないのかなぁ。

三浦 今はメガーヌR.S.やシビックタイプRのように、FFでニュル最速を競える時代ですからね。しかもフランスの友人は、「フランスではスポーツカーが悪者扱いだ。税金も高いし……」と嘆いていました。Boseさんが言うように、クリオR.S.みたいな車は、二度と出てこないと思いますね。

ルノー ルーテシア

Bose ちなみに、排気量はどのくらいですか?

三浦 3Lです。さっき名前が上がったゴルフⅣのR32やアルファ 147GTAは3.2Lですが、フランスでは3Lを超えると極端に税金が高くなるんですよ。だから、3L以上の車は作らないんです。

編集部 消費税が導入される以前は、日本でも2Lを超えるエンジンの税金が極端に高かったので、2Lターボで大排気量車に匹敵するパワーとトルクを稼いでいました。それと同じようなことでしょうね。

Bose せっかくなので、エンジンを見せてもらってもいいですか?

三浦 もちろん大丈夫です。今、エンジンルームを開けますね。

Bose おおお、デカい!

ルノー ルーテシア

Bose そして、予想以上にいろんなパーツを外すんですね。メンテナンス性が悪そう(笑)。

三浦 そうですね、お世辞にもいいとは言えないです(笑)。走っていると結構背中が温かくなります。あとはやはり、後ろの重さを感じますね。例えるなら、チョロQを運転しているようなイメージでしょうか。

Bose サンクターボが飛んでる写真を見てラジコンに夢中になったから、チョロQっぽさを体感してみたいな。それにしても、運転席に座ると後ろからダイレクトにエンジン音や振動が伝わってきますね!

ルノー ルーテシア▲エンジンをかけると、背中からドンドン伝わってきます!

Bose ただ、絶対に奥さんにも子供にも乗ってもらえなそう(笑)。やっぱり、1人になりたいときに、これで箱根とかを走ったりするんだろうな。

三浦 わざわざ箱根まで行かなくても、家の周りを30分くらい走るだけで異次元の体験ができますよ。だから、忙しい方にもピッタリの車だと思っているんです(笑)。

Bose 究極の時短生活だ(笑)。

ユニークな販売店・クールマンの成り立ち

Bose それにしても、このお店はラインナップがすごい! いろんな専門店が1カ所に集合したみたい。

三浦 元々はコアな車を専門店に卸売りする仕事をしていて、残ってしまったのをお店に並べていたんです。で、気づいたらこんな雑多なラインナップになっていて(笑)。私が得意なのは古いイギリス車です。

ルノー ルーテシア▲クールマン代表の三浦さん(写真右)

Bose 仕入れはどうしているんですか? いろいろなジャンルがあって、しかも流通量が極めて少ないものばかり。三浦さんは「残ってしまった」と謙遜するけれど、これだけのものを探すのはかなり大変だと思うのですが。

三浦 仕入れは、オークションや買い取り、整備工場に置きっぱなしのものなど、使える手段はなんでも使います。遺産相続で納屋の中から出てきたというのも珍しい話ではないんですよ。

Bose 話には聞いたことがあるけれど、本当にあるんだ!

三浦 そういうものはタイヤが朽ち果てていて、一般のレッカーサービス会社では動かせない状態になっていることが多いので、我々が直に行って頑張って引き上げます。そして、工場で徹底的にレストアして、商品にする感じですね。

Bose 古いイギリス車、フランスのホットハッチ、そしてアメリカンマッスルカーもある。ここまでラインナップが多岐にわたると、お客さんも多種多様ですよね。

ルノー ルーテシア▲お店は、工場をリノベーションしたガレージライフのような空間!

三浦 そうですね。私としては若い方にも車の楽しさを知ってもらいたくて、最近ではマツダ ロードスターを置いてみたりしています。でも、ロードスターのような車でも、40代のお客様が多くなりますね。

Bose 初代のNAロードスターもだけど、90年代の車の相場がここ数年で跳ね上がっていますよね。少し前まで「100万円くらいで遊べる車」と思っていたものが、気軽に買えない値段になっている。僕は高級車が欲しいわけじゃないのに、車の方が勝手に高級車になっている気分です(笑)。

三浦 僕が販売した車は、数年たってお客さまから買い取るときに、販売価格より高くなっていることがほとんどです。変な言い方ですが、僕とお客さん、どっちが車屋さんかわからなくなっています(笑)。

Bose 笑い事じゃなく、そんな感じですよね。ちなみに、こちらで扱っているモデルは、何かあったときのパーツ供給は大丈夫なんですか?

三浦 やっぱり厳しいですよ。どうにもならない場合はワンオフで作るしかありません。あとは、近い部品を改良して使うかですね。

Bose なるほど。

三浦 うちでレストアを依頼している職人さんは若いのに仕事が丁寧で、全幅の信頼を寄せています。彼は腕がいいだけでなく、ネットで世界中から部品を探すのが得意なんですよ。

Bose デジタルネイティブ世代ならではの検索力の高さですね。

三浦 何年も時間がかかるレストアというのは、もちろん作業が大変なのもありますが、パーツ探しに時間がかかるというのも大きな理由のひとつです。彼は部品探しが上手で、同じ部品が見つからないときもうまく使える部品を探し出して作業してくれるので、数ヵ月で作業を終えてしまうこともあります。すごく助かりますね。

Bose へぇ~、すごい! 時代が変わったって感じがしますね。

三浦 変な言い方ですが、年配のお客さまだとレストアに時間がかかったら、その分仕上がった車を楽しめる時間が短くなってしまいます。仕上げが早いというのは、私たちも助かるし、お客さまにも良いことだと考えています。

Bose 独自のネットワークを駆使して、おもしろい車をお客さんに提案しているわけですね。お店にはクリオ R.S. V6以外にも気になる車がたくさんあるので、次回はそっちを紹介しよう!

ルノー ルーテシア
文/高橋満(BRIDGE MAN)、写真/篠原晃一