▲「200番台プジョー」の1世代前、プジョー 207の時代がついにキタかもしれません! ▲「200番台プジョー」の1世代前、プジョー 207の時代がついにキタかもしれません!

車はその「賞味期限」を慎重に見極めたうえで買うべし

輸入中古車評論家を自称するわたしだが、自慢じゃないがカネはない。いや日々の食事に困窮するほど貧乏しているわけではないが、食料品を買う際は賞味期限が微妙に近い「ワケあり特売品」を上手にセコく選ぶなどしながら、ニッポンの中流ド真ん中を生きている。

賞味期限といえば、中古車評論家として常に「その車種の賞味期限」も強く意識しながら車探しを行っているわたくしだ。どういうことかといえば、新車として華々しくデビューした車種はしばらくの間「絶好の食べ頃」ということで高値をキープするが、そのうち「賞味期限」みたいなものが切れ、安値域へと(ある意味)転落していく。

「なるほど。じゃあその転落後に買えばいいのですね?」としばしば言われるが、それは違う。や、そういった形で安くなった車種を足車として活用するのも悪くないが、もしもあなたが趣味性を重視したいのであれば、時間的にもう一声待ってみるのが得策であるとわたしは考える。

なぜならば、ここでいう「賞味期限」が切れた直後の車というのはオーラ的に正直微妙だからだ。

新しくもなく、かといってクラシカルな味わいが出てきたわけでもない、中古車相場が安くなったことが取り柄といえば取り柄の車。……その存在を否定するつもりはないが、少なくともそれを積極的に買おうとは思えないわたくしである。どうせなら最新テクノロジーの素晴らしさを十分以上に享受できる最新世代のモデルか、もしくは逆にレトロな味わいを存分に楽しめる世代の車に乗りたいと思うのだ。

もしも賞味期限が切れて安値圏に落ちてきたモデルがあったなら、そこですぐに買うのではなく前述のとおり時間的にもう一声待ち、そして数年後にもう一度検討してみる。そこで「……単に古くなっただけだな」と思えばパスするし、「……なんか味わいが出てきたような気がする!」と感じられたなら、あらためて前向きに検討するというのがわたくしの中古車購入スタイルだ。

▲写真は筆者が数年前に乗っていた初代メルセデス・ベンツ SLK。中途半端な時期には買わず、ある意味古くなりきって、なんとなくレトロな味わいが感じられるようになったタイミングで購入した ▲写真は筆者が数年前に乗っていた初代メルセデス・ベンツ SLK。中途半端な時期には買わず、ある意味古くなりきって、なんとなくレトロな味わいが感じられるようになったタイミングで購入した

そんな「味わい」が出てきたプジョー 207

そして今思うのが、プジョー 207についてである。何やら最近、結構な「味わい」が出てきたような気がするのだ。

今さら説明するまでもないだろうがプジョー 207は、プジョー社の販売面での中核を担う「200番台のプジョー=Bセグメント」としては先代にあたるモデルで、日本での販売は07年3月から12年10月まで。もちろん悪い車ではなく、むしろかなりステキなフレンチ・ハッチバックだったが、デビュー当初は守旧派のフランス車愛好家から「なんかドイツ車っぽい硬質な感じになっちゃったね」「中途半端にモダンだよね」的な評価も受けたものだ。

そんな声をよそに賞味期限内(デビューから数年間)は存分に活躍し、存分に売れたプジョー 207だった。しかし、具体的に何年頃と指摘することはできないが、なんとなくニューカーとしての賞味期限が切れた感が出てきた頃からプジョー 207の中古車は、筆者が言うところの「新しくもなく、かといってクラシカルな味わいが出てきたわけでもない、中古車相場が安くなったことが取り柄といえば取り柄の車」になってしまった観がある。

もちろんこのあたりの感じ方は人それぞれなので、筆者の感覚を押し付けるつもりはないが、少なくとも筆者はそう思った。それゆえ、いかにプジョー 207の中古車相場がお手頃になろうとも、これまではスルーしていたのだ。

▲こちらはプジョー 207の、07年3月から09年9月までのいわゆる前期型 ▲こちらはプジョー 207の、07年3月から09年9月までのいわゆる前期型

ヤングタイマーに「なりかけ」の今が割と絶好のタイミング

しかし2016年春。……なんとなくだが、プジョー 207はやっとキタような気がする。

現役時は「若干ドイツ車っぽいかな~」と感じたプジョー 207のデザインだが、最新世代の本家ドイツ車が(良い意味で)アサッテの方向にぶっ飛んでいる2016年春の視点で見ると、プジョー 207はクラシカルとまでは言えないが、比較的正統派でシックなフレンチテイストに思える。

厳密に言えばあと5年もたつとさらにいい感じで「熟成発酵」すると思うが、この熟成しはじめの微妙なあんばいも、ある種の若い芽を見ているようでなかなかオツである。そしてもちろん、あと5年待つと「いい感じに発酵熟成したけど、市場にはもうボロい個体しか残ってません」という事態もあり得るため、プラグマティックな観点からも「今、207」というのは悪くない選択だ。

市場で流通しているプジョー 207のグレードやコンディション、そしてプライスはもちろん千差万別だが、イメージとしては「2010~2011年式で走行3万km台のやつを、支払総額90万円前後で買う」というのがモデルパターンとなるだろう。2009年式以前のいわゆる前期型でもOKなら、さらに安価な「支払総額80万円台」ぐらいのイメージで、走行2万km台の好条件な物件を探すこともできる。
最近流行りの呼び方をするのであれば「ヤングタイマー」に軽くなりかけの段階といえるプジョー 207。ぜひその「早生」を安価に手に入れ、そしてあなたならではのセンスでシブく乗っていただけたらと、いちフランス車愛好家として切に願うものである。

▲こちらは2009年10月以降の後期型。デザイン変更を含む細かなマイナーチェンジが行われた ▲こちらは2009年10月以降の後期型。デザイン変更を含む細かなマイナーチェンジが行われた
▲ベーシックなグレードのインテリアはおおむねこのようなニュアンス。上級グレードやスポーティグレードはメーターパネルのカラーやシートの形状など様々な部分のデザインが異なる ▲ベーシックなグレードのインテリアはおおむねこのようなニュアンス。上級グレードやスポーティグレードはメーターパネルのカラーやシートの形状など様々な部分のデザインが異なる
text/伊達軍曹
photo/プジョー・シトロエン、伊達軍曹