▲若者は多少ボロい車に乗っていてもそれなりに様になる。しかし「おっさん」と呼ばれる年齢になると、車を含む「持ち物」のレベルにはそれなりに気を使う必要が……。写真は2008年式ボルボC30 T5 Rデザイン ▲若者は多少ボロい車に乗っていてもそれなりに様になる。しかし「おっさん」と呼ばれる年齢になると、車を含む「持ち物」のレベルにはそれなりに気を使う必要が……。写真は2008年式ボルボC30 T5 Rデザイン

小ぶりな輸入車を安価に買うのは意外と難しい

輸入中古車評論家を自称するわたしだが、自慢じゃないがカネはない。いや日々の食事に困窮するほど貧乏しているわけではないが、自宅で使う家具はすべて手頃なIKEA製と心に決め、それらをDIYで組み立てながらニッポンの中流ど真ん中を生きている。

そんなわけだからして、輸入車といっても普段乗っているのは小ぶりなモデルである場合が多い。なぜならば、アストンマーティン シグネットなどの例外はたまにあるが、小ぶりな輸入車というのは基本的には安くて買いやすいからだ。

しかし小ぶりな輸入車は、安価に買おうと思うと意外と選ぶのが難しい。

いや、お若い方や学生さんであれば、地味な古い欧州コンパクトに乗っていても様になる。その組み合わせには「さわやかな何か」があるからだ。だが不惑をとうに超えた筆者のようなおっさんが同じことをやると、途端に周囲から憐れみの目で見られたりする。仮に本人が好きでその車に乗っていたとしても、だ。

ここに、大人が「小ぶりな車」を選ぶ際の難しさがある。要するにおっさんがコンパクトカーに乗ろうと思う場合は、単純に新しい話題のモデルか(マツダの現行デミオとか)、高額なモデルか(前述のアストンマーティン シグネットとか)、あるいは何らかのクセが感じられるモデル(イタリア/フランス車とか)を選ばないと、「お金で苦労してる人」に見られてしまうリスクが極大化するのである。

▲トヨタ iQをベースに英国アストンマーティンが作り上げた「シグネット」。新車時価格はなんと475万円~490万円。良し悪しはさておき、こんな小型車であればおっさんが乗っても哀愁は漂わない? ▲トヨタ iQをベースに英国アストンマーティンが作り上げた「シグネット」。新車時価格はなんと475万円~490万円。良し悪しはさておき、こんな小型車であればおっさんが乗っても哀愁は漂わない?

現行マツダ デミオは大変ステキだが、宗教上の理由(?)でどうしても国産車を選ぶことはできず、そしてアストンのシグネットは予算的に論外となると、選ぶべきは必然的に「何らかのクセが感じられるコンパクトカー」になる。「貧乏だからコレに乗ってるんじゃないんだよ、好きだから、ステキだと思うから、あえて乗ってるんだよ!」ということが一目瞭然なコンパクトカーだ。

何らかのクセが感じられるコンパクトカーを選びたいのであれば、先に指摘したイタリア/フランス車を買っておけばまず間違いないだろう。アルファロメオでもシトロエンでも何でも、お好きなブランドのお好きなラテン系小型車を選べばいい。どれもおしゃれであり、また運転して楽しいはずだ。

しかし生理的にイタリア/フランス車は好まず、でも「お金で苦労してる人」には見られたくなく、だからといってそう大してカネを持っているわけでもない……という人が「何らかのクセが感じられるコンパクトカー」を選ぶ場合、はたして何を買うべきなのだろうか?

唯一ではないが、わたしが考える正解のひとつがボルボ C30だ。

▲2007年7月から2012年12月まで販売されたボルボのプレミアムコンパクト、C30。2010年2月に内外装を中心とする大掛かりなマイナーチェンジを実施。その後、現在販売中の現行V40へとバトンを渡した ▲2007年7月から2012年12月まで販売されたボルボのプレミアムコンパクト、C30。2010年2月に内外装を中心とする大掛かりなマイナーチェンジを実施。その後、現在販売中の現行V40へとバトンを渡した

国産コンパクトにも、そしてラテン系ハッチにも真似できない世界観

いわゆるヤングファミリー層と、逆に子離れした団塊世代のためのスペシャルティカー的コンパクトカーとして2007年に登場した、ボルボの3ドアハッチバックである。外観からは5人乗りに見えるが、リアシートは完全なセパレートタイプとなるため乗車定員は4名。そしてその背後は大きなガラス製のハッチゲートが覆っているという、ぜいたくでしゃれた作りのコンパクトカーだった。

何種類かラインナップされたエンジンは、面白味のようなものは若干欠けていると個人的には感じ、その点では前述のラテン系中古車の方が楽しめるのかもしれない。しかしC30のいかにもボルボらしい実直で落ち着いた走りも、これはこれで一種の快感だ。

そしてそれより何より、スカンジナビアンテイスト全開なインテリアに身体を包まれる感覚が本当に素晴らしい。ラテン系ホットハッチのようにギャンギャン飛ばすのではなく、そして国産ハッチバックのようにただ走るのでもなく、スペシャルティカーとしての上質な世界観を味わいながら比較的のんびり走りたい人にとってボルボ C30は、世界一かどうかは知らないが「世界有数の車」であることは間違いない。

▲いかにも北欧らしい明るい色使いや、ボルボならではのフリーフローティング・センタースタックなどが美しいC30の内装。本文中にあるとおりリアシートは左右セパレート式になっている ▲いかにも北欧らしい明るい色使いや、ボルボならではのフリーフローティング・センタースタックなどが美しいC30の内装。本文中にあるとおりリアシートは左右セパレート式になっている
▲ターボ付きのグレードであれば結構な「速さ」を楽しむこともできるが、基本的にはスポーティにガンガン走るというより「ゆったりめに余裕を持って走る」のを得意とする車で、またそれが似合う車でもある ▲ターボ付きのグレードであれば結構な「速さ」を楽しむこともできるが、基本的にはスポーティにガンガン走るというより「ゆったりめに余裕を持って走る」のを得意とする車で、またそれが似合う車でもある

だがそんな「世界有数の車」も今ひとつ人気薄なせいか、前期型であれば総額100万円以下。大幅なマイナーチェンジを受けて現代的デザインになった後期型でも、総額150万円以下で概ねイケるだろう。……コスパ的にも世界有数なのである。ラテン系の車は好まず、かといって国産コンパクトカーにも乗りたくないという「ある種の人」には、自信を持ってオススメしたい1台だ。


▲こちらが2010年2月以降の後期型。支払総額はまだ100万円以上である場合が多いが、それでも以前と比べると後期型C30もずいぶん安くなってきました ▲こちらが2010年2月以降の後期型。支払総額はまだ100万円以上である場合が多いが、それでも以前と比べると後期型C30もずいぶん安くなってきました
text/伊達軍曹