“アバルト▲現在、新車で販売されるモデルは写真の595をベースに、装備やスポーツ性能を上げたツーリスモ、コンペティツィオーネの3グレードが用意されている。新車の車両本体価格は320万円~、コンペティツィオーネは404万~421万円となっている

車好きに覚醒させる希少なブランド

アバルトは非常に珍しいブランドです。スポーツカーのような絶対的な運動性能や速さがあるわけではないのに「走りが刺激的」だとたたえる人が多く、新車、中古車で常に安定した人気を誇っています。

一人の偉人が会社を立ち上げ、その後レースで知名度を上げていく。この流れは多くのスポーツカーメーカーと同じです。ブランド設立時から守り続けられている哲学がある点も同様です。

しかし、アバルトは車にさほど興味がない人を趣味へと引き込み、車好きはよりディープな世界へ誘うという、車好きを覚醒させる要素がとても強いブランドなのです。愛らしいルックスのどこに人を痺れさせる「毒」が隠れているのでしょうか。

今回の特集テーマはそのアバルトの「毒」を解明することです。

例えば現在、フィアット 500ベースの595が3グレード(カブリオを入れると4グレード)用意されていますが、その「毒」にはどんな違いがあるのでしょうか?

また、595や695という車名の由来は? そして過去モデルからは何を受け継いでいるのでしょうか?

アバルトをこよなく愛するオーナーたちは、どんな魅力を感じているのでしょうか?

このあたりをひもときながらアバルトがもつ「毒」の真相に迫っていきます。

もちろん、中古車としても魅力的な選択肢であるアバルト 500、595に加え、595と695に設定された人気の限定車、今は新車販売していないオープン2座モデルなどについても解説していきます。

創始者カルロ・アバルトが1949年に生み出した猛毒。今特集では解毒剤はご用意しておりませんので、お気をつけてその味を堪能してください。

“カルロ・アバルト”▲二輪の設計やレーサーとして活躍した後、1947年に四輪の世界に移り、1949年にアバルト&C.を設立したカルロ・アバルト氏。負けん気の強さやカッコ良さへのこだわりが人一倍強く、その気質が車好きを魅了する多くの名モデルを生み出した。写真後ろに並んだモデルはすべてカルロ氏が手がけた車たち
“アバルト131ラリー”▲アバルトの歴史に欠かせないモデルがフィアット 131をベースにしたアバルト 131ラリー。WRCで圧倒的な戦績をおさめ、1977年、1978年、1980年にマニファクチャラーズタイトルを獲得。また、ランチ アラリー037やデルタS4といった名ラリーマシンの開発もアバルト社が担当していた
“アバルト▲日本でアバルトの販売が再開されたのが2007年。その後2009年にアバルト 500が発売された。写真はエッセエッセキットというバージョンアップキットを装着したモデルで、アバルトは1960年代からこうしたキット化をビジネスとして成功させてきた。多くの人がアバルトの走りが楽しめるようにというカルロ氏の願いが込められている

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アバルト 595× 全国
“アバルト▲アバルト人気の一端を担う限定モデルの存在。595、695をベースにこれまで様々な限定車を登場させてきたが当然完売。中古車マーケットでも高い人気を誇っている。特に写真の695トリビュートフェラーリ(2009年発売)や2013年のマセラティエディションなどは依然高い人気を誇る

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アバルト 695トリビュートフェラーリ× 全国
“アバルト▲2007年、最初にアバルト&C.として復活したのがアバルト グランデプント(のちにプントEVO、プント)。アバルトらしくベースのポテンシャルを引き出し、ラテン系ホットハッチの典型ともいうべき乗り味に。特に最終仕様というべき限定車のスーパースポーツはより過激な「毒」が盛られている(取材協力=rac tokyo)

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アバルト グランデプント× 全国

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アバルト プント× 全国
“トゥルッコ”▲今回複数のアバルトオーナーが登場するが、そのトリを務めてもらったのは老舗フィアット系ショップ「トゥルッコ」の代表橋本氏。古くからアバルトと付き合ってきた橋本氏は「カルロ・アバルトが作ったアバルトらしさが、ちゃんと今のプロダクトに反映されている。そのあたりの上手さがアバルトの素晴らしい点」と語ってくれた(取材協力=トゥルッコ)


文/編集部、写真/小林岳夫、デレック槇島、岡村昌宏、イラスト/あべ あつし

カーセンサーEDGE 4月号
アバルトの毒は快感への入り口

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