【フェルディナント・ヤマグチ×編集長 時事放談】オートモビルカウンシル オーガナイザーに聞く、イベントが目指す姿とは?(前編)
カテゴリー: トレンド
タグ: クール / 高級 / エモい / 時事放談 / オートモービルカウンシル / フェルディナント・ヤマグチ / 編集部 西村泰宏
2022/04/15
みなさまごきげんよう。 フェルディナント・ヤマグチでございます。
2022年4月15日(金)から17日(日)まで千葉県の幕張メッセで開催されるオートモビルカウンシル。
「CLASSIC MEETS MODERN」をテーマにしたモーターショーで、様々なヘリテージモデルを間近で見ることができる貴重な存在。さらに面白いのは、気に入ったヒストリックカーがあればその場で買うことができるのです。
今回はそんなオートモビルカウンシル実行委員会代表である関雅文さんに、このイベントをスタートさせたきっかけやイベントの意義などを伺ってみました。
博物館のようなイベントにはしたくない
今回はイベント開催直前のお忙しい中、関さんにお時間をいただきました。
関さん、本日はありがとうございます。
オートモビルカウンシルが初開催されたのはもう随分前だと思いますが、今年で何回目の開催になるのですか?
初開催が2016年ですから、今年が7回目になります。
まだオートモビルカウンシルを知らない人のために、どんな人が来場して、どんなクルマが展示されているかを関さんからご説明いただいてもいいでしょうか。
年齢層は40代から60代の方に多く足を運んでいただいています。平均すると50歳前後の方になりますかね。我々の気持ちとしては、クラシックカーを現在楽しんでいる世代に加えて、もっと若い人たちにも足を運んでもらいたいという思いがあります。というのも、我々はクラシックカーを渡せることが重要だと考えているからです。
確かに。文化を次の担い手に引き継ぐのは、クルマに限らずとても重要ですね。
ただ、年齢構成というのはどちらかというとマーケティング的な視点であって、私は年齢よりもテイストが重要だと思っています。若い世代でもクラシックカーが持つテイストをわかる人は大勢います。
カーセンサーもコロナ前はオートモビルカウンシルでブースを出していました。実際、若いお客さんも多いと感じますよ。オーナーズクラブでは年齢関係なく若い人と対等に話しているという話も聞きますし。
来場される若い方は、間違いなく私らのイベントのテイストが好きなのだと思います。なので、その方たちがさらに友達を連れてきてくれて、仲間が広がっていければ嬉しいですね。
オートモビルカウンシルといえば展示されているクルマにプライスタグがつけられていることが大きな目玉になっています。普通なら「どの年代のクルマが展示されていますか?」と質問するところですが、あえてどんな価格帯のクルマが展示されているかを教えてもらえますか?
300万円以下のものから1億円くらいものものまであります。だいたい毎年、30台前後のクルマが会場で売れています。
そんなに売れるのですか!
クラシックカーの諸先輩方からは「もっと高いクルマを集めたほうがいい」というアドバイスをいただくこともあります。
そのほうがクラシックカーイベントとしてはわかりやすくなりますね。
わかりやすいし、博物館のようになるのでそれを楽しいと感じる人もいると思います。でも私は300万円のクルマだってその人にとって価値があるものだったら、1億円のクルマと変わりません。私はその気持ちを大切にしたいのです。
素晴らしい! 確かに高額車には歴史的な価値がありますが、一方で自分が若かった頃に好きだった車に乗りたいという人も同じようにヘリテージカーのファンですからね。
しかもヘリテージカーが欲しいと思っても、一般の人だとどこで買ったらいいか、何を基準に選んだら良いのかがわからないと思います。その点、このイベントで出展している専門的な販売店の人に相談できるのは安心という思いもあると思います。
アフターサービスまでしっかり見てくれるようなしっかりした販売店がオートモビルカウンシルに出ています。新しく出展される販売店にもそのあたりは理解してもらったうえで参加していただいています。私らが大切にしているのは「あそこで買えば安心だ」という信頼感です。エントリーユーザーを切り捨てないようにするために、これはとても大切なことです。
無事にイベントを開催できるのか。毎日心臓がバクバクでした
導入から話が盛り上がり、なかなか口を挟めませんでした(笑)。せっかくなので、関さんのご経歴を伺ってもいいですか?
や、これは失礼しました。自己紹介をすっかり忘れて話し込んでしまいました(笑)。私は学校を卒業してから三菱自動車工業に就職しまして、48歳まで勤務していました。
関さんはエンジニアだったのですか?
いいえ。私は文系の人間で、入社後は3年ほどクルマのセールスを経験した後、購買本部で鉄鋼の購入を担当していました。
ほお、鉄ですか。
はい。だから鉄板には詳しいですよ。その後営業本部でディーラーとの事業損益のバランスを取ったり、事業戦略の立案などを担当しました。そして42歳でブランド戦略部の部長になり、国内と海外の宣伝部長をやっていました。
時代的にはパジェロやランエボがあって、三菱が元気だった頃ですね。
そうですね。私もパリ・ダカールラリーをやっていたラリーアートや三菱がサポートしていた浦和レッズの役員をやっていたこともあります。実はフェルさんには宣伝部時代に何度かお会いしているんですよ。
え、本当ですか!! いったいいつ……。
宣伝部時代にパーティーなどで何度かご挨拶させていただきました。
そうでしたか。これは大変失礼いたしました。
フェルさんがお会いした人をすぐ忘れちゃうのは、昔からだったんですね(笑)。
うるさい! 私の恥を膨らませないでくださいよ。ところで、関さんは三菱を退職された後は何をされたのですか?
半年ほどフラフラとしていたのですが、その後みなさんの仕事とも近い電通に再就職しました。49歳の誕生日に入社して11年間、バックヤードで自動車メーカーのマーケティングのアドバイザーのようなことを担当していましたね。
ではメーカーを辞められた後も自動車業界には関わっていたのですね。そこからどのようにオートモビルカウンシルへと向かっていくのでしょうか。
私は自動車業界に育ててもらったので、なにか恩返しがしたいという思いがありました。定年退職後、年金だけで食べていくのではなく、事業を起して「私もやればできる」ということを同世代の人に見せたいという思いもありました。それで起業してこのイベントを始めました。
でもゼロからのスタートでこれだけ大きなイベントを仕切るとなると、簡単にできることではないと思いますが。
大変ですよ(笑)。資金繰りをはじめ、すべて自分でやりましたから。動き出してから「なんでこんなことを始めちゃったんだろう」と何度も考えました(笑)。
そのうえ、2020年から世界的なパンデミックです。イベント業界は大打撃を受けました。
おっしゃるとおり、本当に大変でした。出展してくださるショップやメーカーの方々、そしてイベントを楽しみにしてくれている方々のために開催を決めたいのに、様々な事情でなかなか決められない。とくにメーカーは「開催するのね。じゃあ参加します」ということができません。
組織が大きいと様々な部署に承認を取る必要がありますから難しいですよね。ましてや出展して社員がコロナにかかったとなったら労災をはじめ様々な問題が発生します。
はい。ですから今年も心臓がバクバクでした。とにかく大変なことばかりですが、でも私は今さら誰かの部下になるのはまっぴらごめんです。それにすべてを自分で決めるというのはとてもストレスですが、私の性格的には最もストレスがない環境なのかなと感じています。
ストレスだけれど、ストレスがない。いい話ですね。
それに、オートモビルカウンシルを開催するにあたり、カーセンサーの西村さんをはじめ、陰ながら支えてくださる方もたくさんいます。日本の自動車産業のためになにかできないかと始めたことなので、次の世代の人たちにこれを渡してくっていうのが私の使命ですから。
そんなそんな、私たちも純粋に楽しく参加させていただいているだけです。
イベントを私の個人的な所有物にするつもりはありません。だからこそ今後も発展していってもらわないと。日本の自動車文化は何十年も東アジアで先頭を走っていました。電気自動車で中国や韓国に追いつかれたとしても、歴史は絶対に追いつかれることがない。そんな気概を持った人たちにこれを継承してもらいたいなというのが今の私の課題です。
すばらしい! よくわかりました。ありがとうございます。
みなさん、素敵なお話をありがとうございます。次回は今年のオートモビルカウンシルについてお伝えします。続きをお楽しみに!
コラムニスト
フェルディナント・ヤマグチ
カタギのリーマン稼業の傍ら、コラムニストとしてしめやかに執筆活動中。「日経ビジネス電子版」、「ベストカー」など連載多数。著書多数。車歴の9割がドイツ車。