スーパーフォーミュラ▲全日本スーパーフォーミュラ選手権は2013年から日本で行われている(2016年からは”全日本スーパーフォーミュラ選手権”として開催)

エンジンはSUPER GTと同じものを搭載

「全日本スーパーフォーミュラ選手権」(以下SF)は、国内の最高峰のフォーミュラカーレース。1973年に新設された全日本F2000選手権をルーツとし、その後は全日本F3000、そしてフォーミュラ・ニッポンと名称を変更し、2013年より現在のSFとなった。世界のトップフォーミュラである「F1」と異なる点は、F1がチームごとに開発したシャシーを使っているのに対して、SFはコストを抑制するためにワンメイクであること。

SFは、フォーミュラの世界で圧倒的なシェアを誇るイタリア・ダラーラ社のSF19シャシーを全チームが採用。エンジンは、トヨタとホンダの2社が供給。どちらもSUPER GT GT500クラス用と基本設計をともにする 2L直列4気筒ターボで、出力は550ps以上といわれている。そして、タイヤは横浜ゴムのワンメイクだ。

世界で活躍する人材を輩出しているカテゴリーとしてもSFは注目を浴びている。例えば、現在のF1で活躍するメルセデスAMGのリザーブドライバーであるストフェル・バンドーン、アルファタウリから参戦するピエール・ガスリー、2021年のインディカーシリーズのドライバーズタイトルを獲得したアレックス・パロウなどだ。

ちなみに、国内の下位カテゴリーであった全日本F3選手権は、2020年シーズンよりSFの名称を受け継ぎ「全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権」としてスタートしている。

ホンダ、トヨタといった自動車メーカーをはじめ、パワートレーン、シャシー、タイヤ、素材、燃料などのあらゆる面で、市販車両も含めたカーボンニュートラルの実験場にすることで、SFは将来に向けた技術開発につなげていくという。

特にSUPER GTと連携しながらe-FuelやバイオFuelといったカーボンニュートラルフューエル採用に取り組む。また、シャシーにはバイオコンポジットと呼ばれる植物由来の天然素材の導入に向け、2022年からテストを開始する。その他のアイテムについても順次開発、テストを重ね、次世代のフォーミュラカーの導入を目指すという。
 

スーパーフォーミュラ▲トヨタのRI4A型エンジンを搭載するマシン。SUPER GTではレクサス LC500やトヨタ スープラにも採用されている
スーパーフォーミュラ▲ホンダのHR-417E型エンジンを搭載するマシン。副燃焼室をシリンダー内部に備える”プレチャンバー機構”によって、より効率的にパワーを引き出せるエンジンとなっている
スーパーフォーミュラ▲一時的に燃料供給量を増やす「オーバーテイクシステム」が搭載されており、一度に100秒間エンジン出力を向上させることができる
スーパーフォーミュラ▲ダラーラ製SF19ボディには、F1でも採用されているHalo(頭部を保護するためのバー)を装備している

未来を見据え、新技術を次々導入予定

先日、国内のトップフォーミュラカーレースが2022年で50周年を迎えるにあたり、日本レースプロモーション(JRP)は、次の50年に向けたプロジェクト「SF NEXT 50(スーパーフォーミュラ・ネクストゴー)」を発表した。

いま、SDGsやカーボンニュートラルの実現が叫ばれる中で、自動車業界は大きな転換点を迎えている。そしてモータースポーツ業界もそれに適応し、これからの社会において必要とされるモータースポーツへと変化していくことが求められている。

また、レースのエンターテインメント性を高めるために、2022年からデジタルシフトも進めている。スマートフォンに最適化したSUPER FORMULAの新たなデジタルプラットフォームを立ち上げ、ファンが見たいコンテンツを、いつでもどこでも見られる環境を用意する。

これにより、レースのライブ中継だけでなく、すべてのドライバーのオンボード映像や、様々な車両データ(車速や位置情報、オーバーテイクシステムの残量など)、ドライバー無線の音声等を見聞きすることができるようになる。ファンは応援しているドライバーの映像を選択したり、車両状況を見比べながら分析するなど、これまでになかった観戦体験ができるようになる。

この「SF NEXT 50」では、ストラテジーパートナーとしてデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社が参画。同社のもつ様々な事業フィールドでのノウハウを生かし、ともにプロジェクトを推進していく。

F1でも2030年までに温室効果ガス排出量ゼロを目指し、その第1弾として2022年シーズンよりバイオエタノールをブレンドした燃料の使用を開始する。

また、ル・マン24時間を含むWEC(世界耐久選手権)でも2022年からワイン造りで発生する残留ワインを原料とした、バイオエタノールなどを用いた100%再生可能燃料を採用。

いま、トヨタがしきりに水素エンジンを喧伝しているのも、そうしたカーボンニュートラルに向けた取り組みの一環だ。

「レースは走る実験室」

この本田宗一郎氏の有名な言葉は、これからのモータースポーツ業界でも受け継がれていくことになるのだ。
 

文/藤野太一、写真/トヨタ、ホンダ