▲写真左手前に展示されているのはレオナル・ド・ダビンチが残した図面から作成された“自走車”の模型。ゼンマイ動力で走る ▲写真左手前に展示されているのはレオナル・ド・ダビンチが残した図面から作成された“自走車”の模型。ゼンマイ動力で走る

鑑定士に「いい仕事してますねー」と言われそうなお宝が約4000点展示

人気テレビ番組『開運!なんでも鑑定団』で特番が2本は組めそうなお宝約4000点が展示されたトヨタ博物館の「文化館」。

1989年にオープンしたトヨタ博物館だが、2019年4月にリニューアルオープンし、約140台の実車を展示する「クルマ館」と、今回紹介する「文化館」に分かれて展示されることになった。

同館が開館する約30年前、その準備として世界中にスタッフが散らばって集めてきたミニカーやポスター、おもちゃなど自動車文化の関連資料は、書籍・雑誌・カタログだけで約20万点、その他にも約1万5000点もあるという。

ところが当初は実車をメインに展示していたため、これらの文化的資料は企画展や小さなコーナー展示などでしか日の目をみていなかったそうだ。

こうした車文化資料を、リニューアルによってようやく我々も見ることができるようになったというわけだ。では具体的にどんなものが展示されているのか? 早速写真で見ていこう。
 

イギリス貴族が旅のお守りとして付けたのがマスコットの始まり

車のボンネット・マスコットは、イギリスの貴族がブロンズ製の旅の守護聖人・聖クリストファーを自分の1899年製ダイムラーに付けたのが始まりとされている。

1920年頃になるとお守りやファッション、自己表現の一環としてマスコットを付けることがブームに。

メーカーが標準装備やオプションで用意したり、高級アクセサリーショップでも販売されるほどに。

▲ボンネット・マスコットで有名なのはロールスロイスの「スピリット・オブ・エクスタシー」。フライング・レディとも呼ばれている。イギリスのモンタギュー卿が愛車(ロールスロイス シルバーゴースト)のマスコットとして彫刻家に依頼。やがてロールスロイスの公式マスコットになった▲ボンネット・マスコットで有名なのはロールスロイスの「スピリット・オブ・エクスタシー」。フライング・レディとも呼ばれている。イギリスのモンタギュー卿が愛車(ロールスロイス シルバーゴースト)のマスコットとして彫刻家に依頼。やがてロールスロイスの公式マスコットになった
▲アメリカ車のボンネット・マスコットだけでこれだけある。その後の吸収合併などですでに消滅しているメーカーのマスコットもたくさん。フォードがジャガーっぽいマスコットを作っていたり、ヨーロッパのコーナーではプジョーのライオンも年代でカタチが変わっているから、ひとつひとつじっくりみたい▲アメリカ車のボンネット・マスコットだけでこれだけある。その後の吸収合併などですでに消滅しているメーカーのマスコットもたくさん。フォードがジャガーっぽいマスコットを作っていたり、ヨーロッパのコーナーではプジョーのライオンも年代でカタチが変わっているから、ひとつひとつじっくりみたい
▲ミシュランのビバンダムも発見! 同社のタイヤを履いた車に付けたのか? それとも同社の重役が乗る車か?▲ミシュランのビバンダムも発見! 同社のタイヤを履いた車に付けたのか? それとも同社の重役が乗る車か?
▲有名なガラス工芸家のルネ・ラリックが手がけたキツネのボンネット・マスコット。富裕層が作らせたのだろう。同館ではラリックのマスコットを29点展示▲有名なガラス工芸家のルネ・ラリックが手がけたキツネのボンネット・マスコット。富裕層が作らせたのだろう。同館ではラリックのマスコットを29点展示

空き缶から作られたおもちゃから最新ゲームまで約640点

日本で戦後に誕生した自動車玩具やゲームなどが約640点展示されている。

1950年代に欧米向けに輸出された日本製のブリキ製玩具なんて、『開運!なんでも鑑定団』の鑑定士でも有名な北原照久さんが見たら、いくらで鑑定するんだろう……。

世代によって「おー! これは!?」となる玩具やゲームが違うので、親子で楽しめる展示エリアだ。

▲物資のない戦後間もない頃は、空き缶を使って車のおもちゃが作られたそう。確かに無骨な作りだけれど、当時の人の器用さにも驚く▲物資のない戦後間もない頃は、空き缶を使って車のおもちゃが作られたそう。確かに無骨な作りだけれど、当時の人の器用さにも驚く
▲世界初のダイキャスト製ミニカーや世界初のラジコンカー、ミニ四駆、ゲームボーイやニンテンドーDSなどが、歴史順に並べられている。「あー作った!」「これで夜遅くまで遊んでた!」なんて感慨に浸れるコーナーだ▲世界初のダイキャスト製ミニカーや世界初のラジコンカー、ミニ四駆、ゲームボーイやニンテンドーDSなどが、歴史順に並べられている。「あー作った!」「これで夜遅くまで遊んでた!」なんて感慨に浸れるコーナーだ
▲スーパーカー世代のおっさんにはたまらない『サーキットの狼』のメンコや、ミニプラモデル……この一角はまさに「おっさんホイホイ」エリアだ▲スーパーカー世代のおっさんにはたまらない『サーキットの狼』のメンコや、ミニプラモデル……この一角はまさに「おっさんホイホイ」エリアだ
▲トランスフォーマーシリーズのコーナー。バイナルテックと呼ばれるシリーズにはRX-8やインプレッサ、ジープ・ラングラーから変身するが、アニメ化や映画化はされていない▲トランスフォーマーシリーズのコーナー。バイナルテックと呼ばれるシリーズにはRX-8やインプレッサ、ジープ・ラングラーから変身するが、アニメ化や映画化はされていない

切手に雑誌、マンガ、カーバッチ、ポスター……とまだまだタップリ

何しろ先述したように展示品が約4000点。

中には世界初の自動車の切手や世界初の自動車雑誌、世界初のモーターショーのポスター……と「世界初」がいくつも散見される。

またカーバッジのコーナーでは、すでに消滅して今では貴重なメーカーのカーバッジも飾られている。

▲車が関係するマンガや小説、音楽(CDやレコード)、映画(DVD)がずらり。おっさん的には、山口百恵の「プレイバックPart 2」があるのはわかるが、松田聖子の「Rock'n Rouge」や吉川晃司の「モニカ」まであったのはビックリ。そこまで収集してるんだ……▲車が関係するマンガや小説、音楽(CDやレコード)、映画(DVD)がずらり。おっさん的には、山口百恵の「プレイバックPart 2」があるのはわかるが、松田聖子の「Rock'n Rouge」や吉川晃司の「モニカ」まであったのはビックリ。そこまで収集してるんだ……
▲ボンネットの上やグリルなどにつけられるカーバッジが年代ごとに飾られている。1900~1909年のわずか約10年間で約3分の2が消滅しているのがわかったり(バッジの下に創業年と、消滅したメーカーは事業をたたんだ年も記載されている)、知らないメーカーがたくさんあったりと、カーバッジを見るだけで発見がいろいろある▲ボンネットの上やグリルなどにつけられるカーバッジが年代ごとに飾られている。1900~1909年のわずか約10年間で約3分の2が消滅しているのがわかったり(バッジの下に創業年と、消滅したメーカーは事業をたたんだ年も記載されている)、知らないメーカーがたくさんあったりと、カーバッジを見るだけで発見がいろいろある
▲プラモデルは日本製だけでなく、アメリカ製のものも多数展示されている。いずれもハコ付き! 鑑定士に依頼したら評価が高くなること間違いなし(笑)▲プラモデルは日本製だけでなく、アメリカ製のものも多数展示されている。いずれもハコ付き! 鑑定士に依頼したら評価が高くなること間違いなし(笑)
▲館内中央には、自動車の進化を示すように日米欧のミニカーが約800台、登場年に沿って展示されている。一台一台、登場年と車名が添えられているので勉強になる。今ではなかなか手に入らないお宝ミニカーもたくさんありそう▲館内中央には、自動車の進化を示すように日米欧のミニカーが約800台、登場年に沿って展示されている。1台1台、登場年と車名が添えられているので勉強になる。今ではなかなか手に入らないお宝ミニカーもたくさんありそう
▲年代順に並べられたミニカーのトップを飾るのは1769年のフランス製のミニカー。蒸気自動車が家の塀を壊して警察に事情を聞かれているジオラマだ。で、ラストはというと……ぜひ現地に行って確かめてみてほしい(ちょっとトンチが効いていて面白い)▲年代順に並べられたミニカーのトップを飾るのは1769年のフランス製のミニカー。蒸気自動車が家の塀を壊して警察に事情を聞かれているジオラマだ。で、ラストはというと……ぜひ現地に行って確かめてみてほしい(ちょっとトンチが効いていて面白い)

このようにたくさんの文化的資料が展示されている「文化館」だが、上記のとおり、同博物館が収集した点数は現在展示している数の約50倍もある。

そこでポスターは3ヵ月ごとになど、定期的に入れ替えたり、企画展を年2、3回開くことで、所蔵している資料を今後もできるだけ展示していくそうだ。

また館内には来場者アンケートで「こんなモノが見たい」など要望を書けるコーナーもあるので、みんなの意見次第で今後展示内容が変わる可能性もある。

それにしても総額でどれくらいのお宝なのか、どれが一番高値なのか。

一応聞いてみたが、いずれも非公開という回答だった。

個人的にはルネ・ラリックが製作したガラス製のボンネットマスコットあたりが怪しいと思ったが(ルネ・ラリックは『開運!なんでも鑑定団』で度々登場する有名なガラス工芸家)、みなさんはどうだろう?

このゴールデンウイークにぜひ一度訪れて確かめてみてほしい。

▲日米欧の代表的な車が約140台展示されている「クルマ館」と上記で紹介した「文化館」は建物が別れている。入場料(大人1000円/中高生600円/小学生400円)を払えばどちらも見学できる▲日米欧の代表的な車が約140台展示されている「クルマ館」と上記で紹介した「文化館」は建物が分かれている。入場料(大人1000円/中高生600円/小学生400円)を払えばどちらも見学できる

●トヨタ博物館
[住所]愛知県長久手市横道41-100
[電話]0561-63-5155 ※ご見学・お問い合わせ専用
[開館時間]9:30~17:00 (入館受付は16:30まで)
[休館日]月曜日(祝日の場合は翌日)年末年始 ※GW(4/27~5/6)は休まず開館
[入館料]大人1000円・中高生600円・小学生400円・未就学児無料


文/ぴえいる、写真/篠原晃一

ぴえいる

ライター

ぴえいる

『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はルノーのアヴァンタイムと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。